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2014.04.09

353  STAP細胞 騒動に一言

今年1月末,万能細胞である,ES細胞,IPS細胞に引き続いて,STAP細胞が発表され,世紀の発見として,世界の注目を浴びた.

その後,ネーチャー誌に掲載された論文に『事実と違う記載(画像)』があると内外の科学者から指摘され,『論文としては失格だ』,『論文は撤回すべきだ』,『科学者として失格だ』,等と厳しい指摘を受け,STAP細胞の信憑性の問題にまで議論が広がっているのである.

この指摘を受けて,理研は論文の精査を目的に調査委員会を組織し,次の判断を下した.(尚、STAP細胞の信憑性については調査委の対象外としている)

『論文にデータを加工したものが使われていたり,又,最重要な画像に,当実験で得た以外の画像が使われている事から,不正行為(改ざん、捏造)があった.』

これによって,理研としては,論文を撤回するのか,提出済みの国際特許も撤回するのか,,際特許申請時の厳しい審査はなんだったのか,責任問題はどうなるのか,STSAP細胞の信憑性についての精査はどうするのか、等,連鎖的に多くの問題が派生した事になったのである.

しかも,これらの対応が見えない為に,『論文が捏造された』と言う調査委の判断だけが,宙に浮いている感じになっているのである.

理研としては,多くの科学者の論文への批判に早急に答えないと,理研の信用にかかわる問題になるとして、あるいは、他の理由があっての事か知らないが,とりあえず,論文の評価 だけを急いで出した感じがするのである.

従って,世紀の大発見かどうかが問われている中で,理研の組織論理を優先した感じがするのである.その結果,理研の組織の在り方や責任論,あるいは、一般論としての科学者のモラルや論文の在り方に話が行ってしまい、肝心のSTAP細胞の信憑性について、理研はどう考えているのか、曖昧な状態になったのである.1月末発表の会見に対する所見を述べる義務があると思うのだが.

もう一つ気になることがある.一般に、『事実と違う記載』『過誤(過ち)』は次の理由で起こる.一つは悪意を持って記載する場合である.これを改ざん,捏造,偽装,と言う.もうひとつは,悪意のない場合である.これを,ミス,誤認などと言うのである.どちらか不明の場合は,『事実と違う記載』もしくは『過誤があった』と言うのである.

そして,悪意・故意があったか,なかったか(捏造かミスか)の判断は次のような状況を勘案して客観的に判断される事が多いのである.今回の事で言えば、次のようになる.

STAP細胞が作られている場合・・・・・・・・・・・・・・・・捏造する理由がなくなる.
STAP細胞が作られていない場合・・・・・・・・・・・・・・捏造と判断される.
STAP細胞が作られていると誤認していた場合・・・ 捏造する理由がなくなる.

理研調査委は,『STAP細胞の信憑性の精査』を棚上げにしているので,『捏造かミスか』の客観的要素で判断できないのである.『事実と違う記載』=『不正(改ざん,捏造)』 としていないか気になるのである.

私見によれば,まず、STAP細胞の確認と評価をした上で論文,特許の評価をすべきだったと思うのである.何よりも、世紀の発見か、どうかが問われているのだから、この面でも、精査の順番が違う感じがするのである.

科学者の中に、その論文に間違いがあれば、たとえ新たな発見があったとしても、認められない、と言う意見がある.その意見は、科学にとって、最も重要な発見があったかどうか、より、それを説明する論文の方が大事だ、と言っているように聞こえるのである.発見より『論文重視』の考え方である.勿論,論文より『発見重視』の考え方もある.過去の偉大な発見は当然,論文より『発見重視』であったのである.

理研調査委の発表を受けて,主執筆者の子保方氏は4月8日、『ミスはあったが,悪意を持って論文を仕上げたわけではない』と不服申し立てを行い、4月9日、記者会見を開いた.この中で小保方氏は,

『論文にミスがあったが、STAP細胞は存在しているのだから、捏造する理由がない』,『論文のミスは訂正している』,『論文を撤回すれば,国際的には,STAP細胞の存在を否定する事になり,撤回はしない』,と主張し,第三者による再調査を申し入れたのである.

主執筆者の主張としては筋の通った主張であったと思う.勿論,この主張を立証する為にはSTAP細胞の存在を早急に証明する必要がある.

しかし、理研は特許申請時に厳密な審議を行ったのだから、STAP細胞の存在を認めていたはずであり、だとすれば、論文を捏造する理由がなかったのである.それとも、理研は騙されたと言うのだろうか.ならば、『STAP細胞は存在していないから捏造だ』、と言うべきなのである.

どうも、理研の対応に筋が見えないのである.この際、原点に返って、次の様に進めるべきだと思うのである.

『特許申請時に、理研がSTAP細胞があると認めている上に,小保方氏がSTAP細胞があると会見でも言っているのだから,理研は,その再確認を早急にやる、その上で,特許や論文の評価をする』

この事に理研は歯切れが悪い.小保方氏の作った,いい加減な細胞を再確認しても意味がないと,密かに思っているのだろうか.それなら、なおのこと、確認する必要があると思うのである.

今回の件を通じて、感じた事を、いくつか列記しておきたい.

①そもそも科学的研究において捏造は犯罪かと言う問題である.捏造は結局、論理性でつぶされるか、実現せず淘汰される.科学者にとって捏造は何のメリットもないし、罰する程の事ではないように思う.ただし,捏造で,一時的に、何らかの対価が得られる場合は,勿論,責任が問われる事になると思うのだが. 

②STAP細胞に係わらず、大発見に係わる研究は不確実な事も多いと思う.全てクリアーに説明できない事もあると思う.研究途上であっても、研究発表の先陣争いをする事もあると思う.それだけに、もっと大きな視点で、研究をホローして欲しいと思う.

③やっぱり、間違いだった、と言う論文や研究は多いと思う.そうなる事を研究者や研究機関が恐れていたら、挑戦ができなくなる.研究者全体がそうならない事を願いたい.

④最後に思う事は、『大発見があったのか、なかったのか』、と言う基本的な事に理研としての所見を述べないのはなぜだろうか、今回の問題を取り仕切る責任者は誰なのだろうか、よくわからない事である.

理研は,いろんな分野の研究者の集団であり、理研に所属している研究者は外部の研究者と共同で研究する事もある、しかも、理研の研究者は契約社員であり、理研のロイヤリティより、研究者の師弟関係が強い感じもするのである.

これらを思うと,理研とは研究に必要な資金と場所を与える機関であり,それゆえ,研究の所見や責任をただしても、所詮,無理なのかもしれないのである.トラブル発生時の対応に弱さを感じるのは,このせいかもしれないのである.

かと言って,研究機関が一般の会社のようなピラミッド組織がよいとも思えないし,さてどうあるべきなのだろうか,研究機関の在り方に、新たな問題点が見えた感じである.

以上、一言のつもりが、ついつい,素朴な疑問に話が広がってしまった.

追記(4月16日) 

小保方氏の不服申し入れに対して、理研の対応が、まだ決まっていない中で,研究の指導役である笹井氏の会見が4月15日行われた.冒頭、今回の一連の事に対し謝罪を述べたのち、次の五つの発言があった.

①理研の調査委が下した判断(捏造,不正論文)に同意している.
②従って,STAP論文は撤回すべきだと考えている.(特許は不明)
③STAP細胞論文は有望な仮説のレベルにあると認識している.

④他の細胞をSTAP細胞に偽装すれば簡単に見破られる.

ここにあるように,論文の評価について,理研調査委の判断と同じとしたが,言葉の端々で,捏造,不正と言わず『過誤』と言っているので,これが本心ではないかと思うし,その方が『有望な仮説』と矛盾しないのである.

これを受けて、質疑応答で,もっと突っ込んで欲しかった事がある.

①共同研究者は、どんな検証を持って論文投稿や国際特許申請をしたのか.
②論文の過誤に対し,悪意を持った捏造と判断した理由は何か.
③小保方氏は何をもって出来たと言っていると思うか.
④小保方氏以外が多機能性マーカーの発現を確認しているのか.
④理研は小保方氏が保存しているSTAP細胞をなぜ,すぐに検証しないのか.

さて、今後、どの方向が向うのだろうか.すべての可能性を挙げてみた.

1.STAP細胞の存在有無を未確認の場合,
①論文に捏造があるとして,STAP細胞,論文,特許を白紙に戻す.(根拠?)
②論文にミスがあるが,STAP細胞,論文,特許をそのままにする.

2.STAP細胞の存在有無は未確認だが,有効な仮設だと認識した場合.
①論文に捏造があるとして,STAP細胞,論文,特許を白紙に戻す.(根拠?)
②論文にミスがあるが,STAP細胞,論文,特許をそのままにする.

3.STAP細胞が出来ていないと認定した場合.
①論文に捏造があるとして,STAP細胞,論文,特許を白紙に戻す.(悪意あり)
③論文にミスがあるとして,STAP細胞,論文,特許を白紙に戻す.(悪意なし)


4.STAP細胞が出来ていると間違って認識していた場合.
①論文に捏造があるとして,STAP細胞,論文,特許を白紙に戻す(捏造の根拠?)
③論文にミスがあるとして,STAP細胞,論文,特許を白紙に戻す.(悪意なし)

5.STAP細胞は不完全だが出来ていると認定した場合,
①論文に捏造があり,STAP細胞,論文,特許は白紙に戻す.(論文重視)
④論文に捏造があるが,STAP細胞,論文,特許はそのままにする.(発見重視)
③論文にミスがあるとして,STAP細胞,論文,特許を白紙に戻す.(論文超重視)
②論文にミスがあるが,STAP細胞,論文,特許はそのままにする.(発見重視

6.STAP細胞が出来ていると認定した場合.
①論文に捏造があるとして,STAP細胞,論文,特許を白紙に戻す.(論文重視)

②論文にミスがあるが,STAP細胞,論文,特許はそのままにする.(発見重視)

この様に,方向としては①②③④の四つである.ミスは白紙化に当たらないとすれば③はなくなり,実質,三つである.

さて,どれだろうか.どうも理研調査委の判断もそうだが、多くの科学者も,1.の①だと思っている節がある.だから,検証に熱が入らないのかもれ知れない. 国民としては勿論2.の②,もしくは,5.の②,6.の②を期待したいのである.(赤字部)

従って、理研調査委の判断を『ミスがあった』に戻して、既存メンバーも含めて、改めてSTAP細胞の可能性に結論を見出して欲しいのである.これまでの研究へのマナーだと思う.論文,特許,あるいは,責任論などの取り扱いはこの後でよいと思うのである.

理研は、それぐらいの大局観をもって対応すべきだと思う.目先の事で揉めているうちに、研究が海外に行ってしまうかもしれないのである.

追記(5月9日)

5月8日理研および理研調査委は小保方氏の不服申し立てと再調査の依頼に対し,これを却下し,当初通りの最終判断を発表した.これによると,

『STAP論文にミス画像にかわる本来の画像が提示されていない事から故意(悪意)による改ざん,捏造があったとして,不正論文と断定した.従って,論文の撤回を要求する』

これで小保方氏の『悪意のない間違いで、不正ではない』との主張は理研内部の判断ではあるが,退けられた事になったのである.

この判断を受けて理研では内部規定に基づいて,関係者を含めた懲戒問題に視点が移る事になる.又,この判断を受けて,ネイチャー誌の動きも注目される.

一方,小保方氏側は『結論ありきの判断で納得できない』,『論文は撤回しない』 としているが,『懲罰の内容がどうなるのか』,『小保方氏の今後の研究活動をどうなるのか』に焦点が移る事になる.これ如何によっては,名誉棄損,懲戒無効の法廷論争に発展する可能性もある.

結局、両者の対立は、小保方氏はSTAS細胞を確認しているのだから悪意をする必要がない,と言う.理研は,STAP細胞の有無とは無関係に,本来の画像が提示されていない事から故意(悪意)の改ざん、捏造があったと言うのである.

私見で言えば、『本来の画像がないから故意(悪意)があった』とする理研の論理は短絡的だと感じる.『アリバイがないから犯人だ』と言っているようなものである.加えて,何の為に故意を働いたのか,と言う客観的な事実に基づく動機を言わない所にも短絡的な面を感じるのである.

社会通念では、理研が『STAP細胞は存在していない事を隠す為に改ざん,捏造した』と言うならはっきりするのだが,『STAP細胞の存在有無はわからないが,故意による改ざん,捏造が行われたと判断した』では,動機が見えない分,説得力が欠けるのである.

科学者の,しかも論文重視の研究者方すれば動機など、どうでもよい事なのだろうか.裁きの世界では客観的な事実で動機を判断する事は罪状や情状酌量を考える上で極めて重要なのである.

従って,当初から述べているが,STAP細胞の存在有無を検証せずして,不正論文だと断定する事は早急すぎると思うのである.

もう一つ、違和感がある.これもすでに疑問視していた事だが、不正論文と断定したなら、その論文が国際特許申請も含めて、組織的にどのようなプロセスやチェックで作られてきたのかを解明することも必要であるが、これは『調査委の仕事ではない』と言うのだろうか.理研の調査委は芥川賞や直木賞の審査をしている風景に見えるのである.

研究の世界では緻密な論理が求められているはずが、人間の行動に対する善悪の判断になると、社会や裁判所より相当アバウトになる感じである.理研は裁判所ではないとは言うものの,実質,人を裁く事をやっているのであり、その重要性からすれば、せめて、第三者や司法に判断をゆだねるくらいの対応が必要だと思うのである.企業ならそうするのだが.

理研と言う、特権階級のプライドが、知らず知らずに社会から隔離された存在になっているとすれば、世界の潮流に逆行している事になる.理研が利権に変貌する温床にもなる.これもすでに指摘していることだが『理研』に代表される『独立の研究機関の在り方』につて、見直す必要があると思うのである.

さて,この論争はすんなり,『理研の幕引き』で終わるのだろうか.

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