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2014.07.26

364 退職者のメール削除と証拠保全義務との関係?

7月25日付日経に武田製薬工業が米国で販売した糖尿病治療薬を巡る製造物責任訴訟の攻防が報じられていた.この裁判で地裁の陪審は懲罰として武田に6200億円の賠償評決を下したと言うのである.米国の訴訟ビジネスの怖さを,又,感じさせられたのである.

正式な判決は先だが,この訴訟で,考えさせられた事がある.それを考察してみた.

自明な事だが,米国の損害賠償訴訟(民事訴訟)は成功報酬を狙った訴訟ビジネス化している.従って,原告としては真実の解明よりも,示談も含めて、賠償金を多くとる事が目的になる.その為に、相手企業への陪審員の印象を最初から悪くし、裁判を有利に進める事が原告側の常套手段になるのである.

今回の武田製薬訴訟で,原告側は,元会長や研究者等の関係者の電子メールが退職に合わせて削除されている事に着目して,これらのメール削除は『副作用のリスクを把握していたと言う重要な証拠を意図的に破棄している可能性があり、それが多くの退職者で行われているのだから企業ぐるみの証拠隠蔽体質があると言わざるを得ない』と糾弾したと言うのである.

原告は冒頭から陪審員に,武田製薬と言う会社は、そんな悪い事をする会社だと印象付けたのである.どこかの国の反日運動と同じ手法である.

想像していなかった原告側の攻撃に,武田製薬側は,『メール削除は提訴前で問題はない』,『武田製薬としては科学的データで訴訟を戦いたい』との姿勢をとったのだが、原告が洗脳した陪審員の印象を覆すことができず,上記の陪審員の評決に繋がったと思われるのである.これも、どこかの国の攻めの反日運動と受け身の日本の対応に似ている.

一般にどの会社でも、退職する時.社員や取引先、或は、知人のメールアドレを確保する事はあっても、残っているメールはすべて削除すると思う.その理由は、

・『飛ぶ鳥跡を濁さず』の美学が働いている.
・他の人に見られたくない心理が働いている.

・本人がいなくなるのだから、メールを
残す意味がない.

だと思う.決して、起こるかどうかわからない訴訟を意識して、証拠隠滅の為に削除しているわけではないのだが,隠蔽の疑念を晴らすことは極めて難しいのである.そのことを承知の上で,原告側は痛いところを突いているのである.

さて,日本で、同じような損害賠償訴訟が起こり得るのだが、その時、証拠隠滅等と言いがかりをつけられない為に,どうすべきなのだろうか.

全ての管理職のメール(或は、議事録、資料も)を『会社の公文書』として長期に保存すべきなのだろうか.だとしたら、公文書と私文書の区分けをどうすべきか、等と議論が広がるのである.

根本的には、製造物責任訴訟が起こされない為には、不具合が発生した時、速やかな公表が必要である.公表なき事故発生は、公表しなかった事が事故の発生につながったとして,企業に大きな賠償責任が発生するのである.当然、訴訟では、意図的に隠蔽していたかどうかが過去のメールや資料で調べられるのである.

そんなわけで、企業ガバナンスにおいては、透明性が担保されている事が組織運営上,不可欠であり、それを実現する為に、秘密情報、不具合情報、の厳しい管理も、経営に求められるのである.

それでも、訴訟が起これば、退職者のメールや資料を削除する行為は、その内容を示さない限り、証拠隠蔽の疑いを,かけられる可能性は残る.残念ながら,この疑念を晴らす方法はない.退職者に、『一気に、大量に、メールや資料を削除するな』、『日頃から、用が済んだら削除しておけ』、と、陽に言うのも、何かおかしいな感じはする.

この問題、企業はどうするのだろうか.

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