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2014.07.24

363 個人情報・個人関連情報とプライバシーの課題

子供向け教育事業者のベネッセコーポレーションで2千万件に及ぶ個人情報が犯罪行為で漏えいし,実際,その情報が他の事業者のDMに使われたのである.そこで,個人情報,個人関連情報に関する課題を整理してみた.

・課題1・・・個人情報

個人情報とは個人を特定できて,しかも,個人の属性も分かる情報を指す.当然,その取扱いについては.本人の了解が必要になる.自分にとって有益なDMを得る為に自分の個人情報の流用を了解する人もいるが,多くの人は他に流用されることを禁じているのである.

その事を見込んで,事業者も目的外使用しない事をプライバシーポリシーで宣言している事が多いのである.勿論,この個人情報が漏えいすれば,いろんな企業からDMが来るだけでなく,詐欺や押し売りなどのターゲットにされてしまう危険性もある.

歴史的に見れば,米国の例で言えば,国土が広い事もあって,通販は昔から発展していた.特定少数顧客へのスペシャルカタログによる通販ビジネスでは,販売効率を上げる為に,ターゲット顧客名簿をリストブローカーから購入し、ダイレクトマーケテング(DM)が行われていた.

たとえば,肥満,ハンデキャップ,趣味,高収入,等の顧客名簿をリストブローカーに求めるのである.ブローカーは其のリストを自身の足で収集するか,他から購入し,通販業者に提供するのである.顧客からすると,自分に役立つ情報が得られると,歓迎する向きもあって、個人情報については,寛容なところがあったと思われる.但し、肌の色、目の色は個人情報としてとってはならないとの法律があったように記憶している.

この様に米国では顧客情報の流通に関しては自由であったが,今日では,個人の意思に反した個人情報の利用,漏えい,個人情報の悪用,については,厳しい監視制度と罰則が設けられているのである.

日本における通販ビジネス(無店舗販売)はテレビ通販、インターネット通販が出てくるまでは、大手小売業や限られた通販専門会社によって行われていたが、総小売高に占める割合は1%にも満たない状態であった.総じて通販に対する信頼感が低かった事が大きな要因だったと思う.

その時の顧客への遡及の仕方は新聞、チラシ、総合カタログ配布、スペシャルな商品は専門誌、で行っていた.したがって、米国のようにリストブローカーの存在は、はきわめて少なかったと思う.

今日においては米国も同じだと思うが,インターネットによるロングティールマーケテングによって、顧客から情報を求めることが可能になったり、囲い込み作戦で会員制などをとったり、或は、インターネット検索履歴やインターネッとによる買い物履歴を参考に個別のCMを画面に出したり,最近では消費者の居場所を察知したタイムリーなモバイル広告の配信等,で,リストブローカーを利用したダイレクトマーケテングは少なくなったと思われる.

一方,プライバシー保護の観点で,2003年,個人情報保護法が制定され,多くの個人情報保有事業者は漏えい防止に努め,同時にプライバシーマークの取得に走ったのだが、個人情報の流通については規制する方法が無かったのである.

そんな中,詐欺などの犯罪に個人情報が使われ始めたり、ベネッセ事件のように、子供情報が漏洩すると、にわかに国民は、個人情報の流通に恐怖を覚えることになったのである.

さて,ベネッセ,漏えい者,リストブローカー,リスト利用者,にどのような法的責任が及ぶのか,或いは,今後,及ぼすべきなのか,注目されているのである.いずれにせよ、個人情報の漏えい防止策の見直しや漏えいした時の為の情報のスクランブル化(暗号化)が議論されると思う.

・課題2・・・漏えいした個人情報の消去

保護する方法は技術面,法制度面,等で進歩すると思うが,万が一,漏えいしてしまうと,消去できなくなる大問題がある.個人情報の流通によって,自分の個人情報を誰が保有しているか,わからなくなるからである.まさに,ベネッセの個人情報がこの状態にある.

従って,自分の個人情報を知るはずもない所から,自分にDMやメールや電話があった時,公的機関を使って,情報の流れを追跡調査するしかないのである.気の遠くなる調査であり,しかも,これで,全て消えたかどうかも分からないのである.

又,法的責任を問わない前提で,高額で個人情報を買い取る方法も考えられるが,名乗り出てくれるかの問題,コピー情報は買い取りしてもきりがなくなる問題、等があり、妙案はない.

さらに言えば、インターネット検索サービス事業者が持つデーターベースにある情報を消去する方法が難しいことである.プライバシーにかかわる情報や誤情報がひとたびネットに乗ると、その元情報を発信者が消去しない限り、生き続けることになるのである.インターネット検索で古い情報が検索されることは誰しも経験することである.又、ブログやホームページを作りっぱなしで放置しておくと、データーベースはごみで満タンになり、検索精度が落ちて行く大問題があるのである.

・課題3・・・個人関連情報

本人をズバリ特定できないが,本人の行動履歴,購買履歴,或いは,ネット検索履歴,等を指す.成功報酬型のネット広告などでは,購買履歴や検索履歴で,本人の興味や好みを類推して,本人の検索画面に効果的なCMを出すのである.これで広告のクリック数が上がれば,それに応じた広告料金が得られる事になるのである.

個人情報の代わりに,ネットアドレスがダイレクトマーケテングのキーになっているのである.又,携帯電話の位置情報などを利用したタイムリーナモバイル広告,等,本人の了解なしに,自分の関連情報が使われる事の不気味さに,この新しいダイレクトマーケテング手法を問題視している人もいる.

もう一つ個人関連情報の使い方がある.ビッグデータとしての活用である.個人の車にセンサーを付けて,走行エリアやブレーキ場所・回数,或いは気候データを収集して交通量予測や気象予測を行う場合、駅などの自動改札の情報や携帯の位置情報を使った人の動線分析を行う場合、等である.

この『個人関連情報』は一見,プライバシーと無関係に思われるが,本人の了解なしに情報を収集される事の不気味さやネット使用履歴や行動履歴と個人情報が何らかの方法で関係付けられた時の不安が残る.

この個人関連情報がすでに,いろんなところで使われていたり、今後もニーズがあるだけに,この情報の取り扱いについて,早急に法制度を作るべきだと思うのである.

・課題4・・・個人情報,個人関連情報の国際ルール

個人情報や個人関連情報について,その扱いに難問が多いが,少なくとも,そのルールは国際的に共通にしておく必要がある.情報技術や情報ネットは,すでに,国境がないからである.

・課題5・・・国家安保障に基づく,個人情報,個人関連情報の収集

陽に議論出来ない課題であるが,国内外に渡って,政治家,テロリスト,思想家,スパイ,等のプライバシーがほぼ完全に捕捉されていると言う,噂さもある.現に米国の海外要人の盗聴事件が問題になった.法治国家と言えども,国家安全保障の為に,超法規的行為が許されるのか,と言う課題である.

以上、情報化社会とプライバシーの課題を述べたが、個人情報の漏洩防止策、漏洩後の流通防止策、個人関連情報の利用基準、など、改めて議論が起こりそうである.これに注目していきたいと思う.

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