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2014.12.11

382 日銀の大胆な金融緩和に賛同する論説の紹介

かねてから,日本の円は実力以上に円高だと思うっていた.その結果,海外の物(特に中国産)が安く国内に蔓延し、国内産業を駆逐して行ったり、海外にモノやサービスが売れなくなって、企業が海外に流出して行ったり、したのである.円高による産業の空洞化である.資源のない我が国経済は加工貿易を旨としていたのだが、それが崩れてしまったのである.

自国通貨が高くても問題にならない国は米国くらいである.米国は農業はじめ世界を席巻する産業が多く,ドル高でも、輸出に影響が出ないのである.一方、消費財は高いドルで海外から調達するのである.米国産の消費財は,ほとんどない事でもそのことがわかる.

米国としては、付加価値の低い消費財を輸入して、輸出国の経済を成長させ,付加価値の高い先進技術製品を買ってもらう,と言う図式を昔から描いて実行してきたのである.したがってドル高は特に問題にならないのである.

一方、日本は古来より、円安による国内産業の育成が主流であり、加工貿易国家だったのである.中国,韓国はじめ、多くの国も、日本と同じ方法で経済を成長させてきたのである.

この加工貿易の体質を変えないまま、日本は円高に突入し,後発国に席巻されて産業が疲弊したり,長期のデフレスパイラルに落ち込んで行ったのである.

そして、2年前、第2次安倍政権が発足するや、アベノミックスと言う経済政策の一環として、日銀はデフレからの脱却に向けた金融緩和政策を実行したのである.そして、円安、株高が進み、経済に成長の兆しが見え始めてきたのである.

しかし、円安は多くの輸入製品の価格を引き上げ、国民やドメステックな中小企業を苦しめている、産業は空洞化しており,輸出も伸びていない、等と非難が多くあがっている.中には、政府を非難する為の非難も少なくないのである.同時に,今回の金融緩和策に賛成する論評はあまり聞こえて来ないのである.

一般的に、有識者にとって『批判』は,対案が無くても、インテリ風に見えるし,自己顕示欲を満足させられるし、批判してもリスクがない、事から『批判』を言いたがる傾向がある.事実,そんな人を多く見て来た.

逆に,『賛同』は迎合しているように見えて,インテリ風に見られないし,当事者と同じリスクを背負う事から,積極的に『賛同』を表明したがらないのも事実である.結構,この隠れ賛同者は批判者より多いのではないかと思うのである.

そんな中で,12月10日の日経新聞の経済教室で『日銀の異次元の金融緩和』は正しいと言う論説が掲載された.そこで,この勇気ある執筆者に敬意を表して、自分の勉強も兼ねて,当ブログで紹介したい.

執筆者は嶋中雄二氏(三菱UFJモルガンスタンレー証券景気循環研究所長)、その論説の概要は次の通りである.

論説のポイントは次の3つ.

・異次元緩和は円安や需要刺激になる.
・マネー供給は1年半後に名目成長に寄与する.
・中身のない奇策ではなく理論的に裏付がある.

この日銀による昨年4月以降の大胆な金融緩和はノーベル賞経済学者、故,ミルトン・フリードマンのマネタリズムによって説明できる.このマネタリズムとは名目国内総生産(GDP)決定理論である.その内容はマネーの増加が一定のタイムラグ(6~9か月)を置き、名目経済成長率の変動をもたらす,と言う理論である.

中央銀行がマネーの供給を増やすと現金残高が過剰になって,人々は中銀の最初に予想収益率が高まる債権から順に株式,住宅,並びに他の物的資本へと予想収益率の変化に応じて資産構成を変えつつ,保有現金残高を調整しようとする.

この過程で利子率が低下し,諸々の資産価格が上昇して,設備投資や個人消費を拡大させ,景気を押し上げるのである.

異次元緩和の波及経路をフリードマン流に説明するとこうなる.日銀が長期国債、コマーシャルペーパー,社債,株式指数連動型上場投資信託、不動産投資信託,を購入して行けば,その分だけ日銀の当座預金が増え、景気状況に応じて、変化する日銀券と合計したマネタリーベース(資金供給量)が増加するのである.

一方,日銀の買いオペによって長期金利が低下すれば、特に米国の金利が一定の下では円安、ドル高が発生するのである.外貨を含むトル資産の予想収益率も日本国内で高まる.

円安は輸出メーカーの採算を改善し,輸出量を増やして生産活動を活発化させる.この期待から株価を大きく上昇させた.外人観光客も激増し、内需にも貢献した.海外現地生産から国内へのシフトも促している.債券価格の上昇はCPや社債に波及し,やがて株式や不動産投資信託、不動産の予想収益率を上昇させ、資産価格全体を押し上げる.この資産効果や長期金利低下による資金調達の有利性の下で、住宅投資や耐久財消費、企業の生産活動が刺激されるのである.

これは,先行きへの革新を強めた企業の設備投資につながり,雇用や賃金にも影響が及び,最終的には消費者物価が上昇するのである.

名目成長率をインフレやデフレの行き過ぎない安定的な成長率の近傍に保つためには,政策手段としてのマネーをどのくらいの伸び率で供給すれなよいか.この課題を解決する金融政策上の基準が米カーネギーメロン大学のベネット・マッカラム教授が考案した『マッカラムルール』である.伸び率で表示した貨幣数量方程式に名目成長率目標と現実の名目成長率とのギャップを加味したものである.

著者らが試算した2015年1月~3月期に名目3%成長を達成する為の資金供給量の平残は250兆円であった.昨年4月の異次元緩和で東井署想定された2年で2倍と称された14年末の残高270兆円とほぼ同額である.緩和後の名目成長率は13年度は1.8%になった.当研究所の予想は14年度下期には前年同期比で2.6%,15年度上期では同3.3%に達する見込みであり,2年で名目3%と言う当初目標はほぼ達成されつつある.

勿論,名目3%を達成しても、14年度内は消費税増税で吸収されてしまう.又、日銀が掲げる消費者物価指数(生鮮食品除く)でみた2%の上昇目標の達成は不確実で,4月の消費税を除くと前年比1.5%まで上昇したが,夏以降の原油価格の急落で鈍化傾向が明確になったのである.

こうした事態に対応した10月末の追加緩和はタイミングだけでなく,その規模においても適切であったと考えている.

以上のようにアベノミックスの第一の矢である異次元緩和は巷で言われるようなサプライズだけを狙った中身のない奇策ではなかったのである.むしろ、マネタリズムの政策思想の流れを汲み,マッカラム・ルールに沿って説明できる理論的・実証的な根拠を十分に持った金融政策運用であり、かつ,すでに確実に結果を出しつつあると思うのである.

以上が論評の概要である.この金融政策で名目成長が押し上げられ、需要を刺戟し,実体経済が回り始めるとの論であり、断片的な現象に対する評価ではなく、経済全体の動きを巻き込んだ理論になっていると感じたのである.

勿論この理論だけで経済が活性化するわけではない.この金融政策が刺激になって,全国民、全企業が,世界を視野に、新技術の開発、新商品の開発、需要の開拓、に取り組まなければならないと思うのである.政府にいつ賃金が上がるのかと問うような根性では経済の活性化は望めないのである.

総選挙も終盤になった.日増しに、『パイの分配合戦』になっている事に大きな危機感、失望感を感じているのである.『分配を増やせば国は亡び、パイを増やせば国が栄える』『パイの拡大なくしてパイの分配はなし』を声高に叫びたい感じがするのである.

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