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2015.04.05

393  ふるさと納税制度への法的、政策的、疑念

『ふるさと納税』制度について、『役所のお礼に法的問題はないのか』、『他自治体への寄付がどうして居住自治体の税控除になるのか』『ふるさと納税がふるさと創生に繋がるのか』等の疑念を抱いている.今回は、これについて、私見を述べてみたい.

1.役所が出す『お礼』に法的な問題がないのか(法的疑念)

『ふるさと納税』の仕組みは、きわめて簡単に言うと、『ふるさと納税額』を所得税では『所得控除』(課税所得の減額、ふるさと納税額×所得税率の減額)され、住民税では『税額控除』(住民税からふるさと納税分を減額)される制度である.これでほぼ、『ふるさと納税額』が、そのまま、還付される事になるのである(自己負担分2000円は除く)

(下図はクリックで拡大) Photo

この『ふるさと納税』を『寄付』と呼んでいるが、実は、税額控除と言う特別な制度なのである.(通常の寄付は税額控除ではなく、所得控除である.企業は損金算入)

このように、ふるさと納税制度は、『ふるさと納税』をしても、しなくとも、住民の負担の総額は変わらない制度にしているのである.(住民税の一部を任意の自治体に配分する制度)

ところが、『ふるさと納税』に対する加熱気味の『お礼』を加味すると、見方によっては、『ふるさと納税者の負担額』は『お礼の分』だけ軽減(減税)される事になるのである.多額の納税者は、上限まで、あちこちに、『ふるさと納税』をして、多額のお礼を得て、実質、税負担を軽くする事が出来るのである.

その結果,ふるさと納税した人と、しない人とに、税負担の不公平が生じ、『税法違反』になるかも知れないのである.更に言えば、年間110万円以上の『お礼』は、『贈与』になり、お礼を受けた人に贈与税が発生するのである.これに該当する人(高額納税者)が贈与税を払っていなければ脱税になるのである.

『お礼』に対する、もう一つの見方だが、『お礼を出すから、住民税の一部を横流しして欲しい』と言っている様にとらえると,お礼は賄賂に見えるのである.収賄事件の『お礼を出すから発注して欲しい』と同じ構図である.

総務省から,最近,『お礼の過熱競争』に対して、自粛するように通達が出ているが、自治体は、最初から、おかしいと思わないのだろうか.ふるさと納税制度はあくまでも、税の一部を納税者が寄付と言う名目で、他自治体に、振り分ける制度だから、即刻、『賄賂』のような『お礼』は禁止すべきだと思うのである.

更に言えば、突き詰めれば、住民税の一部(住民税の税額控除分)で商品を買って、只で配るのだから、住民税の目的外使用になる恐れもある.

又、ふるさと納税額に上限(今年から住民税の2割)はあるものの、この制度が普及すれば、現住所の自治体の住民税の減収も、交付金との関係も出てくるのである.

この制度の延長に、ふるさとに投票したいと言う意見も出てくるはずである.この事も含め、『ふるさと納税』制度を再レビューすべきだと思うのである.

2.『ふるさと納税』が『ふるさと創生』に役立つのか(政策的疑念)

現在多くの自治体は『役所が他自治体住民から集めた税金(寄付)で地元商品を買って,お礼と称して、ふるさと納税者に無償で配り、これで、地元商品を宣伝し、実需につなげる』との思惑で動いているのだと思う.その結果がお礼の過当競争になっているのだが、本当に、『ふるさと創生』に役立つのだろうか.

はたして、ふるさと納税のお礼として、只で貰っていた商品を、今度は、お金を出して買うだろうか、と言う疑念である.この実需が増えなければ,単に自治体がふるさと納税金で地元商品を買い上げて、いるだけになるのである.

何よりも、『お礼』の自粛、もしくは廃止となれば、この思惑はすべて崩れるのである.そうなると、『お礼』以外の『ふるさと納税金の使い方』を考えなければ、『ふるさと創生』に繋がらないのである.

そんなわけで、どの自治体も、『お礼』に走った分、真の『ふるさと創生』に向けた『施策』が欠如しているように思えるのである.

これでは、『ふるさと納税』は、1988年の基礎自治体に一億円ばら撒いた『ふるさと創生事業』とか、わしづかみの税金(使途自由の交付金)を使って、商品券を配ったり、商品や宿泊料金を割り引いたり、お買い上げポイントで割り引いたり、した事と同じになるのである.

いづれも、一過性で終わり、その後の波及効果もなく、巨額の借金だけが積み重なったのである.今回の地方創生事業も、同じ轍を踏みそうである.すでに、同じような事が各自治体で競うように、始まっているのである.

自治体は、『ふるさと納税金』も、『わしづかみの交付金』も、国民の負担である事を忘れて、全く無責任な、一過性の、金の使い方で競い合っているように見えるのである.これなら形の残る公共事業の方がましである.

『国家の財政は民主主義の鏡』と言われているが、1000兆の政府の借金は日本の民主主義の最大の特徴なのである.したがって、日本は『自分さえよければ良い』と言う精神が1000兆の借金を積み上げた、と言われても返す言葉が無いのである.

小泉政権での『米百表の精神』ではないが、今日、明日のひもじさを我慢して,将来の為に金を使う、と言う事業はないのだろうか.この精神無くして、地方創生は出来ないのである.税金による値引き競争は即刻廃止し、将来の為の事業化競争を展開して欲しいのである.

地方創生を図る上でも、是非、全国のふるさと納税者が評価できる制度、わしづかみの交付金の使途や効果が分る制度、を作り、公表すべきだと思うのである.

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コメント

僕も同じ意見です!
ふるさと納税の元々の考え方は素晴らしいと思います。
しかし現状はお礼という賄賂を使った、税金の奪い合い。
それをおかしいとテレビで発言するコメンテーターを見たことがない。

ふるさと納税の問題について、調べてこのサイトを見付けました。

これからも頑張ってください。

投稿: | 2016.04.30 11:17

現在のようにお礼品が存在する『ふるさと納税』の制度では、『ふるさと納税』をしている住民としていない住民が同じ住民サービスを受けることに疑問を感じます。『ふるさと納税』をしている者は、ほぼ同じ住民税で2つの自治体から住民サービスを受けているようなものですね。

投稿: | 2017.04.11 10:28

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