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2015.04.05

394 改めて一票の格差問題を整理する

当ブログのNO321(2013年3月)で『一票の格差問題を考える』で問題点や各国の考え方を整理してみた.

あれ以来、政党間で格差対策の議論をするも、決着が見られず、現在、第三者委員会に取りまとめが依頼され、検討が始まっているのである.しかし、衆・参含めて、選挙制度の方向が見い出せていないのである.

そこで、格差是正と新選挙制度の検討における問題点を改めて整理してみた.

①格差の判断を司法の裁量権に任せている問題

最高裁は憲法の番人であり、合憲・違憲の判断をする事になるのだが、格差の合・否の判断基準が法的に明文化されていない事から、『司法の裁量』で判断する事になるのである.

しかし、『司法の裁量』に任せて良いのか、国会(民意)の判断に任せるべきではないのか、と言う根本な問題が存在しているのである.

当ブログNO362司法裁量権の乱用による民主主義の空洞化 (2014・07・19)でも指摘.

又、選挙における『法の下の平等』とは、『参政権の保障』を言っているのであって、格差問題は立法府の裁量に任せられていると言う意見もある.この事もはっきりさせる必要があると思うのである.

このように、判断基準法的に明文化されていない憲法や法律の下での判決は『司法の裁量』によって判断されるわけだが、『平等』、以外にも、『人権』、『自由』、『自衛権』、等でも同じである.ここにも、民意ではない、『司法の裁量権』に任せて良いのか、と言う問題存在しているのである.これらの問題は『民主政治における司法の在り方』の問題なのである.

現在のままだと、司法の裁量権は、世の中の価値観や仕組みの多様化,複雑化で、ますます大きくなっていくと思う.この大きな裁量権を期待して,政治問題を国会ではなく、司法に持ち込む、司法を政治活動の手段として利用する事が増える事も予想されるのである(既に始まっていると思うが).

特に,政治運動家や少数政党に、この動きが強まると思う.本来なら議会で議論すべき問題を,違憲訴訟や行政差し止め訴訟を起こす事によって、政治に影響を与える事が出来るかもしれないからである.民意ではなく裁判官がその鍵を握ることになるのである.それだけではなく、司法闘争が選挙運動にもなりかねないのである.

このように、司法の裁量権の拡大とその政治利用によって、確実に,民主政治の空洞化が進むのである.将来、国権の最高機関が国会ではなく、裁判所になるかもしれないのである.これはまさに、かつての『お代官様政治』に戻る事を示唆しているのである.

いくら司法の独立と言っても、国会で決めたものを、司法独自の解釈で、『ちゃぶ台返し』をしてはならないと思うし,法治国家とは、,司法の裁量が大きくなる事ではなく、司法の裁量が小さくなる事を言うのだと思うのである.

『一票の格差』の問題に戻すと、司法(裁判官)の裁量で合・否を判断するのではなく、民主主義政治の基本になる選挙制度なのだから、少なくとも、立法と司法が同意する『法的な判断基準』を作るべきだと思うのである.

これまでに、多くの選挙無効訴訟が発生し、裁判所の判断も足並みが揃っていないのだが、総じて、『違憲状態だが、選挙は無効ではない』として、格差是正を立法府に要請している状態になっているのである.司法の裁量権はここまでだと思うのである.

国政の大混乱を起こす選挙無効判決を裁量権で行う事にでもなれば、民主主義から見て『司法の裁量権の乱用』になると思うのである.

どうやら日本は、憲法、法律と現実との間にギャップが広がって、素朴な問題が出るたびに、そもそも論の議論になったり、解釈の話になったり、司法の裁量権が大きくなったり、するのである.解釈や裁量が入らない、しっかりした法整備が必要だと思うのである.これこそ法治国家だと思うのである.

②『一票の格差』の定義の問題

裁判所の裁量権で違憲状態というのだから、司法独自に『一票の格差』の定義をしていると思う.しかし、『一票の格差』の定義が法律で定められているわけではないのである.

『機会の平等』と言う考え方で言えば、常識的には、『一票の格差』とは『有権者数を議員定数で割った値が選挙区によって開きがある事』を言うのだと思う.しかし、有権者数ではなく、人口を議員定数で割る、と言う考え方もあるかもしれないのである.

『結果の平等』と言う考え方に立てば、投票率(投票数)や無効票によっては、当選者の得票数が選挙区によって大きく差が出る事もある.これも、『一票の格差』問題である.もちろん、低い投票率なら、当該選挙区は再選挙にするような法律があれば、若干、格差は減少すると思うが.

更に言えば、選挙区が大きく、住民と議員の距離が遠くなれなれば、投票率が落ちる可能性もある.理屈の上で格差が是正されても、投票率が低ければ、民主主義は機能しない事になるのである.

そのほか、いろんな考え方があると思うが、それも含めて、『格差の定義』を立法,司法で合意しておかないと、次の『合法とする格差』も、適正な『選挙制度』も作れないのである.

③『合法とする格差』の定義の問題

どれほどの格差をもって違憲とするのか、と言う判断基準は法的に定まっていない.現在は、選挙の後で、選挙無効の訴訟がある都度、司法の裁量で判断されているのである.

しかも、有権者が少ない選挙区を違憲とするのか、有権者数が多い選挙区を違憲とするのか、両方とも違憲とするのか、等もはっきりしないのである.

本来なら、司法の裁量に任せるのではなく、司法も認めた法的な判断基準を決める事が必要なのである.選挙前に、それに応じた選挙区と議員定数を調整し、機会の平等を担保した上で選挙を行うべきなのである.

ちなみに、米国の上院は格差を無視して、州の代表を選び、下院は格差が起こらないように、州の定数調整を行うのである.ドイツは格差2倍以内、フランスは1.5倍以内を合法としているのである.英国は格差なしを前提にしつつ、島等の格差発生の特例を設けて、議員を選出しているのである.

日本でも、司法の同意も含めて、『合法とする格差の程度』を定めて、それに基づく、『選挙制度』を決定すべきだと思うのである.

④選挙制度改革(選挙区,選挙区定数、議員数)の問題

結局、『格差の定義』や『合法になる格差の程度』、及び、『その判断を誰がするのか』、と言う問題が、はっきりしないと、結局、『適正な選挙制度』は作れないのである.

『格差なし』を平等の判断基準にするなら、全国区(大選挙区)、或は、自治体を超えた、大きな選挙区(大選挙区)にするしかないのである.当然、小選挙区制は出来ない事になる.その結果、小政党の乱立が起こるかも知れないのである.

現在は自治体を基準に、かつ、県に一人別枠を設けて、自治体毎に、国会議員を選出すると言う考え方を採用しており、格差発生の原因になっているのだが、この選挙区設定の良さを認めて、格差を特例的に認めるか、小さな選挙区に合わせて、大きな選挙区を分割し、議員数を大幅に増やして、合法とする格差を小さくするか、の判断が必要になる.

『身を切る改革』と称して、『議員数の削減』を主張している政党があるが、どんな選挙区にするのだろうか.県を超えた大きな選挙区を作るしか、格差問題や議員削減問題は解決しないのだが、どうするのだろうか.

このように考えると、『合法的な一票の格差の程度』にもよるが、それを守ろうとすると、考え方として、次の3択になる.

・自治体単位の考え方で、人口の少ない県は特例として格差問題から外すか
・自治体単位の考え方で、大きい選挙区を細分化して、議員数を増やすか
・自治体を超えた選挙区を作って、有権者数を横並びにするか

ところで『国民が増税に苦しむのだから、議員も身を切って、議員数削減や歳費の削減をしよう』等と言う政治家がいるが,説明が要らないくらいの非論理的な話である.

まず、『議員数削減』を『身を切る』と言うのは、根本的に間違っている.

もし、議員の数を減らすと,議員になれなくなる、と言う意味で『身を切る』と言っているのだとすれば、議員失格である.『議員数削減』は民意の反映や選挙制度の議論によって、出てくる話であり、決して、議員が身を切る話ではないのである.

又、『議員歳費削減』に関しても『身を切る』と言うのは間違っている.


自腹を切ると言うのであれば、『歳費の返却』、多すぎると言うのであれば、『歳費の減額』,無駄な支出をやめると言うのであれば、『無駄の削減』と言うべきである.『身を切る』と言う意味が全く意味不明なのである.

どうも、議員が『身を切る』とよく口にするのは、次の理由からだと思う.

・議員数や歳費の削減は議員の『既得権を手放す事』だと思っている、
・身を切る,と言うと、いかにも、『かっこいい』と思っている、

これに議員の良識を疑うどころか、国民をだます魂胆さえ感じるのである.

横道にそれたが、格差問題は民主主義政治、選挙制度、の根本的な問題であり、数合わせでは解決しないのである.以上の問題認識を踏まえて、今後、衆・参それぞれで、次の事を議論して欲しいのである.

イ. 格差の定義をどうするか
ロ. 合法とする格差の程度をどうするか
ハ. 自治体と選挙区の関係をどうするか

ニ.
選挙制度(小・中・比例)をどうするか
ホ. 以上の結果,選挙区、定数、及び、議員数をどうするか
ヘ. これらへの『
司法の裁量権排除』をどうするか

今の状態では、これらを考える基本的な方向が出されていない事から、第三者委員会と言えども、答申の出しようがないと思うのである.それとも、これらのすべてを、第三者委員会が答申すると言う事なのだろうか.

いづれにせよ、決着まで相当時間がかかって、総理の解散権や任期による選挙に影響が出るかもしれないのである.

 

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