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2015.09.03

407 経済成長・財政健全化に向けた予算制度改革

アベノミックスは『経済成長なくして財健全化なし』との考えで、金融政策によるデフレ脱却(物価・賃金の上昇)、需要拡大に向けた財政政策、特区による規制緩和、地域創生,先端技術等による経済成長戦略を展開し、長期的には、GDPの伸長、税収増による赤字国債発行の逓減(プライマリーバランスの維持)、借金価値の目減り、を図るものである.

これらの政策は勿論、実体経済、具体的には,各企業の創意・工夫がともわなければ、達成できるはずがないのだが、もう一つ大事な事は、国家としての経費の増大に,どう対応するかと言う問題がある.例え経済が成長しても、経費の増大に消えて尚、足らない事態も考えられるのである.そうなれば、財政健全化など夢のまた夢になるのである.

『経費』とは言うまでもなく、『経済的波及効果や投資効率、投資回収を求める投資』と違って、『国家運営の必要性によって支出される資金』であって、この経費支出は資金を回収する事が目的ではないのである.

具体的に経費となる事業は、社会保障、安全保障、防災事業、災害復旧、社会インフラの維持管理・修復、経済救済・給付、公務員の人件費、等である.これらは、経済的に見れば、公共需要を押し上げる事はあっても、それによって、経費が回収される程の税収増にはならないのである.従って、この経費支出が経済的波及効果や経済成長を牽引すると言う人がいるが、間違いである.

それどころか、その経費が借金で賄われていたら、借金は膨らむ一方である.この借金を自己破産で清算する事ができず、世代を超えて引き継がれるのである.例えて言えば、飯代を未来の国民が返済する事になるのである.まさに、未来の国民は、見返りのない借金返済に追われ、予算の自由度が奪われる事になるのである.言い換えると、借金は未来の国民の主権在民権を奪うのである.この事があって、財政法では借金(赤字国債発行等)を例外扱いとしているのだが、今や,借金なくして予算が組めない事態(税収50兆、借金50兆)になっているのである.

さて、このような認識に立てば、次のような事は許せるわけがないのである.

・選挙対策として、国会議員は地元への予算取りに奔走する.
・選挙対策として、国会議員は支持団体の既得権益を守ろうとする.
・経済政策(投資)と称して、実質は、救済・給付(経費支出)を続けている.
・投資効率を掲げて投資予算を取るが,誰も管理・評価していない.

これらの財源が年度の税収で賄うなら、自業自得だが、借金で賄うなら大問題である.

『財政は民主主義の鏡』と言われるように、国民,役人,政治家、の資質が、財政に表れるのである.ちなみに、今、この鏡に『借金して大国になった、あとは、しらない』と国民も、政治家も、役人も、口を拭っている姿が映っていると思うのである.

はたして今後、成熟社会における経費の巨大化、投資効率の逓減化、のなかで、経済成長だけで、日本の財政は賄いきれるのだろうか.公金を欲しがるだけの無責任さを反省し、びしっとした選択と集中の予算を作る事が急務だと思うのである.

そこで、すべての事業毎に、投資か経費かを区分し、その財源が税収か、資産売却資金が、事業収入か、借金か、を記載させるべきだと思うのである.予算が付くと,財源がなんであるかを気にしない現状を変える為である.

今や『交付金を増やせ』、『救済、給付を増やせ』が、『借金を増やせ』と同意語だと言う事を自覚すべきである.『予算要求と借金は別』の話ではないのである.昔、田中総理が,予算要求に対し、財源を示せと,牽制していた事を思い出すのである.

これによって、事業が経費か投資かを認識させ、投資なら投資回収の計画と実際を管理すべきなのである.勿論、一時的な景気対策は救済に近く、それなら、明らかに経費であり、景気対策としての投資ではないと、はっきり意識させるべきなのである.

少なくとも、予算取りの為に、詐欺のように大義をでっち上げる事は何としても排除したいのである.勿論、本当に救済・給付が必要なら、堂々と、経費として申請すれば良いのである.

そこで、アベノミックス推進の為にも、下記のような、『予算制度の改革』が不可欠だと思うのである.

①全事業毎に財源を明らかにさせる事
②全事業毎に、経費か、投資か、の区分を明示させる事
➂経費事業は税収で賄う事を原則にする事
④投資事業を経済原則、投資効率、の視点で査定する事
投資事業の投資回収の計画と実績の管理と評価を徹底させる事

多分これだけで、財政出動に緊張感が出て、いい加減な出費、いい加減な借金が抑制されると思うのである.何よりも、経済成長に向けた意味ある投資事業が実施されると思うのである.これを実施するにあたって、実務上困難な事があれば、一定規模以上の事業に限って実施しても良いと思うのである.

ところで、昨今、地域創生の話が蔓延しているが、どれだけ、経済原則に沿った、投資計画があるだろうか.その場限りのばら撒き(経費)が多い様に感じるのである.税金の切れ目が縁の切れ目になるか、税金がなくせない麻薬になるか、非常に懸念しているのである.

最近、話題の『ふるさと納税』で言えば、ふるさと納税額で、地元産物を買って、ふるさと納税者にお礼として配ったり、『プレミアム地域商品券』では、プレミアム分を交付金で負担しているのである.はたして、将来の地域創生に繋がるのだろうか、上記懸念が頭をよぎるのである.

これらの制度はどう見ても、地元企業への『給付』(一部は消費税で回収するが)である.給付がなくなれば地元産業は元の木阿弥である.それどころか、給付と言う麻薬から立ち直れない事態になりかねないのである.

又、税の使い方として、極めて不公平だと指摘する人も多いのである.プレミアム商品券を多くの代理人を通して大量に購入し、それを転売して利ザヤを稼ぐ人もいるようである.こんなことが横行すれば、税の使い方として大問題になるのである.

中には、地元経済活性化につながる、波及効果を目指した税の使い道を考えている地域もあるが、このような例は極めて少ないと思うのである.

これらの制度を、善意に解釈すれば、交付金の使い方とその効果を測定し、良い使い方には、更に交付金を出すが、そうではない地域には、交付金を減額する、と言う、地域間競争を促す事が目的かもしれないのである.それを地方は知っているのだろうか.

悪意に解釈すれば、税金を使ったアベノミックスの人気取り、前回の消費税増税のダメージを消して、消費マインドを上げる事が目的かも知れないのである.

そんなわけで、是非、善意の解釈として、地域間競争意識を盛り上げて、交付金の使い方、成果をきっちりと精査し、これまでの、公平な交付金の配布制度から、地域創生に繋がらない交付金は即刻削除すると言う制度に変えるべきなのである.

更に例を上げれば、東京オリンピックに係わるすべての事業は経費と見るか、投資と見るか、意見が分れるところだと思う.投資回収が計算できるものは投資、出来ないものは経費で区分すればよいと思うのだが、どう区分するかの議論が起こる事は極めて大事だと思うのである.それによって、計画の性格、予算の内容が研ぎ澄まされると思うのである.

東日本復興計画の大方は、経費支出だと思う.これを投資と言う人もあると思うが、投資回収が計算できなければ、無理に投資と言わない方が予算の信頼性を落とさないと思うのである.

過去の公共事業をみると、国民の声を聴くと言う建前で、実質は党利党略で、経費と投資の区別もなく、或は、投資と銘打って、公共事業をばら撒いてきたと思う.これは高い経済成長期の中で,政策推進、選挙対策、安定政権維持の必要悪として行われていたと思う.

しかし、今日では、それが通用しないどころか、そんな考えは、命とりになりかねないのである.最近、東日本復興、巨大な自然災害の予想もあって、財政出動の感覚が緩くなっている感じを受けるだけに,懸念するのである.

いずれにせよ、『経済成長なくして財政健全化なし』には、『投資と経費の選択と集中』が不可欠であり、かつ、『成長戦略は規制緩和、投資政策』である事をもう一度確認すべきだと思うのである.

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