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2015.12.29

421 日韓慰安婦問題の政治決着への感想

12月28日、日韓関係のトゲであった慰安婦問題に対し,日韓両政府の合意が成立した.そこで、当ブログで発信していた歴史認識問題に関する提言と合わせて、感想を述べたい.

戦争と言うものは、いつの世でも、どこの国でも、戦争に勝つと言う大義の下で、自国、他国を問わずを,生命、財産,人権、尊厳、自由,平等,を奪うものである.しかし、皮肉な事に、これらを守る為に、人類は、この残酷な行為を繰り返してきたのである.

戦争の勝者、敗者、たがわず、兵の性処理、捕虜虐待、虐殺、無差別攻撃、空爆、原爆、等も、残虐な非人道的行為に違いないのである.

しかし、これらの残虐行為に関する歴史認識はナショナリズムが働きやすい事もあって、双方が一致する事は極めて少ないのである.その結果、対立や戦争の連鎖が起こるのである.

しかし、戦禍の絶えなかったヨーロッパや、先の戦後処理における日本は、この大きな壁を乗り越えて,今日の秩序を作ってきたのである.日本について言えば,ポツダム宣言受託や東京裁判、サンフランシスコ講和条約、その後の日韓基本条約やアジア諸国との条約によって、或は経済支援などで、今日の秩序を作ってきたのである.

一方、韓国は日本と基本条約締結後、反日運動の一貫として、慰安婦問題をかかげて外交を遮断したり、海外に慰安婦問題を吹聴したのである.

この韓国の振る舞いを問題視する安倍政権に対し日韓関係をさらに悪化させない為に,多くのマスコミ,有識者,政治家が『歴史認識を封印すべきだ』と主張していたのである.

この主張に対し,私は意味不明だと思ったのである.『封印して、どうしたいのか』がさっぱり見えなかったからである.見えたのは、日本特有の『沈黙は金』,『曖昧の合理性』,『おとなの対応』,『問題の先送り』,『穏便に』等の日本文化の匂いである.

もし、これまでの外交と同じように、封印(沈黙)を続ければ,間違った認識が、更に流布される危険性があると思うのである.そこで、『封印より人類の英知を主張すべきだ』と下記ブログで、当時の主張に反論したのである.

329 歴史認識の封印より人類の英知の主張を(13・07・31)

その主な内容は下記の通りである.

この『封印』の主張は、国内で通用しても,国際社会では通用しない、国家間の関係は『封印』ではなく、『国家間の歴史認識の差を政府はどう扱うか』が大事であって、その為に次の二つの同意を求めるべきだと提言したのである.

㋑歴史認識の差を政治利用しない.

歴史認識は国家間で一致する事は困難であり、その差を政治利用する事はナショナリズムに偏重した不毛の戦いになる.そこで、その差を政治利用しない事を約束する事が、対立を断ち切る為に必要だ、と提言したのである.

㋺ただし,民間の慰安婦問題に関する言論は自由である.


歴史認識の差を政治から切り離す事で、ナショナリズムに偏重した歴史認識の対立を是正し、言論や表現の自由を担保することで,相互の国民が歴史認識の間違いや差を冷静に知る事が出来ると主張したのである.この方が両国にとって健全だと考えたのである.

この提言を12月28日の慰安婦問題の政府間決着に当てはめて考えて見たい.

今回の政府間決着はおおよそ、次の通りである.

①日本軍の関与に対し謝罪する.(強制性に言及せず、何らかの関与とした)

②慰安婦の方に日韓共同で支援をする為に日本政府は10億円拠出する.
➂慰安婦問題を最終的、不可逆的に解決したとする.(蒸し返さない)
④在韓日本大使館前に設置された慰安婦像の移動は韓国政府が取り組む.

日韓とも国内世論の中に火種は残っているが,今後、日韓両政府は慰安婦問題を外交問題にしないと合意したのである.これは提言の㋑の部分の合意であり,大いに評価できるのである.

この合意にもとづく、いくつかの成果を挙げておきたい.

・ナショナリズムに偏重した政治、言論,が是正される
・不毛の対立に終止符を打って,日韓関係を未来志向に向けられる
・軍の関与を認めるかわりに、➂④の約束を取り付けた
・軍の関与としたことで,売春を合法化して来た各国にも反省を促せる

・中韓の歴史認識共同作戦にくさびを打つ事ができる
・米国の要請にもある、日米韓の関
係が再構築される見通しがついた
・韓国にとっても、安全保障や経済で日米韓の連携が再構築される

以上の様に、自国の主張を通す為に、外交の門戸を閉ざすような外交は慰安婦問題のみならず,すべての外交問題に,あってはならないのである.

まさに阿倍総理がかねてから言っているように、いかなる対立があろうとも、『外交の門戸は何時も開いておくべきだ』が正しいと思うのである.

この合意に対し,封印を主張したマスコミ、識者、政治家、はどう論評するのだろうか.いつもの様に、だんまりを決め込むのだろうか.知識人の対案のない、無責任ぶりが、また露呈したのである.いつも感じるのだが、穏健で、優しそうな人に、論理や対案や責任感が無いのである.

一方、評価大としつつも、今後、懸念される事が三つある.

謝罪の理由を曖昧(玉虫色)にした問題

合意内容が文章になっていない事もあって、①の日本の謝罪が何に対してなのか、はっきりしていない為に、この合意に反対する人が出てくると思う.

韓国人の反応

韓国側としては、日本政府は『20万人の少女を日本国軍が強制的に慰安婦にした事を認めて謝罪した』と認識する人もいると思う.そこで、やっと日本が罪を認めた、従来の韓国の主張が正しかった、と改めて世界に日本の非道さを吹聴したり、慰安婦像がさらに世界に設置するかもしれないのである.

このように認識している韓国人は、日本の罪の深さに比して、日本の謝罪は曖昧だ、金で解決する事など許されない、慰安婦像は移動しない、と今回の合意に反対すると思う.

・日本人の反応

一方、多くの日本人は、軍が慰安所を衛生管理や性犯罪防止の為に作ったが、20万人の少女を強制的に慰安婦にした事実はない、と認識している.もし,そんな事があれば、その時点で、問題が発覚するはずである.しかし,そんな問題は起こっていないのである.又、強制した証拠もないのである.

したがって、今回の謝罪の意味は、軍の組織的強制連行があったとしての謝罪ではなく、存命の元慰安婦へのお見舞いと、兵隊の性行為が行われたのだから『軍の何らかの関与があった』として、この事への謝罪だと認識していると思う.

そして、この『軍の何らかの関与』は日本特有の問題ではなく、慰安所を軍が持っていた国も、売春宿を利用させていた国も、性犯罪を野放しにしていた国も、兵隊の性行為が行われていたのだから、どの国も,『軍の何らかの関与』があったと想像できるのである.

しかし、このような多くの日本人の認識が世界の認識として広がっていない.むしろ、日本悪玉論として、韓国の間違った認識が広がっている感じもするのである.したがって、これらを放置するような、さらに吹聴を許すような、今回の合意には反対だと言う日本人もいると思う.

・マスコミの反応

日本国内、韓国国内のマスコミの反応はおおよそ,今回の合意に賛成の様である.しかし、曖昧な表現だけに、今回の合意が,世界にどのように報道されているかも気になるところである.聞くところによると、アメリカなどには、韓国人の認識と同じように、『日本は,少女を奴隷にしたことをやっと認めた』と伝わっていると言う.もしそうであれば、政府は即刻、誤報だと指摘すべきである.

・両政府の考え

慰安婦問題に対する、日韓の認識の差がある中で,両政府は、このまま、日韓が対立し続ける事より、日韓関係を良くする事を優先した事で、大同小異の判断で合意したのである.

安全保障の面でも、経済の面でも、在日の人たちの為にも、日韓関係を良くする事を優先する一方、慰安婦問題を玉虫色にして決着をつけたのである.この合意に向けて、アメリカ政府の強い要請もあったと思う.

・今後の歴史認識の差の取り扱い

両政府が慰安婦問題を今後、口にしないと合意した以上、この謝罪の意味を改めて両政府が説明する事はないと思う.

慰安婦問題の認識の論議は今後、民間レベルに移る事になる.そこで徹底的に史実を議論し、ナシュナリズムで歪められた史実を訂正し、その上で、歴史認識の差を日韓のみならず,世界各国も、認識の差を知るべきだと思うのである.

歴史認識と言うものは、方や英雄、方や侵略者になるように、一致させる事は不可能に近い.したがって、双方の認識の違いを知り合う事が最低限、必要な事だと思う.

ところで、島国日本の『気遣いや謝罪をする文化』に対して、韓国人には、日本人と真逆の『謝罪をしない文化』、『謝罪を迫る文化』が根強くある.これまでの韓国の動きを見ていると、そのことを実感するのである.

この韓国の文化は過去の長い歴史で培われてきたと思われるが、その文化の下で、自己の正当性を主張するあまり、『嘘・捏造・告口・過大解釈、誹謗中傷、愛国無罪、怨念の石碑建立』等が見受けられるのである.

世界のどこにでもあるコリアンタウンやスポーツで,このナショナリズムのメンタリティの異常さを感じるのである.一方、現代政治、あるいは、ボーダレス社会では出来るだけナショナリズムを排除しようとするのだが、これに逆行している感じがするのである.

韓国の慰安婦問題への認識も同じだが、今後、韓国の文化を露骨に推し進めるようでは、世界から孤立して行くと思うのである.この文化,習性は急に変われないとしても、どのように、成熟して行くか,今後の韓国の反日勢力,世論,マスコミ、等の動きと,次の韓国大統領選が注目されるのである.

最終的、不可逆的に解決したとする意味.

慰安婦問題を双方の政治問題にしない、国際政治の場で蒸し返えさない、と言う意味だと思うが,これまでの、韓国の歴史認識や歴史教科書、歴史教育、慰安婦像(韓国,米国の),あるいは慰安所制度批判、などはどうなるのだろうか.

蒸し返さないと言う事を盾に、従来通りで、何も変わらないかもしれない、あるいは、蒸し返さない為に、新たに歴史認識や教科書や教育、あるいは、慰安婦像の撤去や文言を変えるのだろうか.

もし、政府が関与する教科書や教育が従来のままだとすると、蒸し返した事になるのだろうか、蒸し返さない事になるのだろうか.
どうもはっきりしないのである.

あり得る姿としては、蒸し返さないと言う理由で、政治カードにしないが、韓国の従来の歴史認識や慰安婦像、資料館、或は、反日感情などは、をそのままにするかもしれないのである.

政府間合意と世論の関係

政府間合意と世論が一致すれば問題は無いが、世論の中に、異論、反論が存在する事は避けられないと思う.かといって、言論の自由の下で、異論、反論を禁止するわけにもいかないのである.両政府としては、合意の精神から、相手国の誹謗中傷を自粛するよう要請出来ても、禁止する事は出来ないのである.

従って、韓国の民間団体が慰安婦像を韓国内、或は海外に展開する事は特別な法的条件を付けない限り、禁止出来ないのである.
したがって、言論の自由の下で、間違った歴史認識や慰安婦像の文言が存在し続けるかもしれないし、慰安婦像が撤去どころか、更に展開されるかも知れないのである.

しかし、大事な事は、言論には言論で対応する事である.政治がその言論にかかわらないのだから、むしろ、ナショナリズム偏重による国対国の対立を断ち切り、冷静で自由な言論を相互にすれば良いと思う.それによって、相互の違いが分かるようになる事を期待したし、歴史の修正主義等と言論を弾圧する事もなくなると思うのである.これはブログで提言した事と同じ考え方である.

しかし,その自由な言論の結果、世論が新政権を作って、『軍の関与』や『合意内容の意味の差』を切り取って、又、反日政治を繰り返すかもしれないのである.ナショナリズムの強い民主主義政治なら,あり得るのである.只,韓国は国家間の約束を反故にするリスクを覚悟しなければならないのである.

以上、今回の合意について、若干の感想、懸念を述べたが、この慰安婦問題の合意が、今後、どのように具体的な行動に表れてくるのか,大いに注力して行きたいと思う.

又、日韓では竹島問題、元徴用工問題、等、相互の主張が異なっている問題がある.この問題で韓国が又、外交の門戸を閉ざせば、慰安婦問題で開いた扉も、意味がなくなるのである.そこで、『いかなる対立があろうとも、外交の門戸は開いている』事を、今回の慰安婦問題の合意を契機に両政府は確認すべきだと思うのである.

 

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