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2016.04.26

430 チェコ 経済学者の『成長至上主義と決別を』への反論

4月25日、日本経済新聞のグローバルオピニオン欄に『成長至上主義と決別を』と言う論文が掲載された.

著者はチェコ経済学者、トーマス・セドラチェク氏(39歳)である.チェコ共和国の初代大統領の経済アドバイザーを24歳の時、務めたと言う.著書『善と悪の経済学』は15か国に翻訳されていると言うのだから著名人の様である.

セドラチェク氏の論旨の要約.

・昨今の主流の経済学者は不況退治や経済成長の薬として金融・財政政策を主張してきた.しかし,それは一時的な特効薬でしかなく、ブレーキをかける手段がない政策は止めるべきだ.

・日本経済は過去30年間に渡って,成長志向で,この薬を飲んできた.又、消費税率も低く抑えて来た.その結果が,GDPの200%を超える政府債務である.日本は、この薬の投与と、低い消費税率はやめるべきである.それによって、経済も財政も安定化に向かう.

・現在の日本は最も豊かに見える国である.更に経済成長しなければならない理由は見当たらない.もう、貰えるものはないと考えるべきだ.これからは、社会の富を分け合えば良い.日本の少子高齢化に悲観的になる必要はない.

・今後、政治のパフォーマンスを経済成長で評価するのではなく、財政を安定させたかどうかで評価すべきだ.成長に魅入られた昨今の主流経済学者には、この発想は出てこない.

私の感想 

セドラチェク氏は、誰に対して『成長至上主義と決別を』と言っているのか定かではないので、議論を分けて感想を述べてみたい..

①政府、国民に対し『成長至上主義と決別を』と言っているとすると、

もっと、ゆっくりした社会にせよ,と言っている様に聞こえる.あくせく働かず,成熟したヨーロッパの様にスローライフを楽しむ国になれ、と言っている様である.

成長には限界があるのだから,すでに上限の豊かな国になっている日本は今後は,経済成長から距離を置いて,『与えられたパイを分け合って生きればよい』その結果、『少子高齢化も悲観する必要がない』『日本人の好む安定と平等にも合致する』との主張である.

しかし、残念ながら日本は、セドラチェク氏が言うような優雅な国ではない.日本は厳しい自然や地形の中で、災害も多く、天然資源は少なく、狭い土地に人口が密集し,災害復興や防災、社会資本整備等に膨大な費用がかかる,高コストな国なのである.ヨーロッパとは大きく立地環境が違うのである.

日本はこれらと対峙しつつ,戦後の復興、貧困からの脱出に向けて,官民挙げて、これに取り組んできたのである.その結果、経済大国になったのだが,反面、日本的社会主義経済だと揶揄されるくらい,大きな国家予算と大きな借金で『大きな政府』になっているのである.

そんな日本は巨額な債務の健全化の為にも,山積みの課題解決の為にも,今後も、科学技術や経済の発展でパイを大きくして行かなければならないのである.これが出来なければ、たちどころに,財政が破たんし,貧しい社会主義国に陥ってしまうのである.

そして日本の政府も国民も、世界の経済成長と共に,成長に向けて努力して行かねばならないのが現実なのである.当然、政府の成長戦略が借金だけ増やすような政策であってはならないし、民間も、技術・製品開発、市場開拓に必死で取り組む必要がある.

『成長至上主義と決別を』は一見、やさしい、厳しさから解放されるような提言に聞こえるが,日本にとっては『衰退しろ』と言われているに等しいのである.成長志向や成長目標は日本の言動力であり、これと決別する事は出来ないのである.

②政府に対し『成長至上主義と決別を』と言っているとすると、

セドラチェック氏が成長至上主義は民間に任せ、政府は効果のない,借金だけ増やすような成成長政策(金融財政政策)を止めるべきだ、と言っている様に聞こえる.

成長の為の金融・財政政策は効果があっても,一時的であり、しかも、その政策にはブレーキを掛ける手段がない.そんな危うい金融・財政政策はやめるべきだ、と言うのである.

具体的には、日銀が通貨量を増やして、国債を買い取る前提で、政府が成長の為に、国債を発行して、民間から資金を集め、その資金をばら撒くような金融政策、財政政策はダメだと言っているのだと思う.簡単に言えば,通貨を印刷して,ばら撒くような政策は危険だと言うのである.そんな事なら当然、ダメである.

金融政策は主に物価の安定化、雇用の安定化の為であり、通貨量の供給・引締めで、過度なデフレやインフレの抑制を図ろうとする政策である.勿論、そうする事が経済の活性化、成長と関連するのである.

財政政策は国の財政支出、財源確保(増税、借金、資産売却)、債権債務管理の政策である.財政支出は災害復興、防災、社会資本整備、安全保障、社会保障、技術開発、産業医振興、等々、救済的支出、経費的支出、投資的支出、があるが、どれをとっても、経済の活性化、成長と関連するのである.

したがって、金融政策も財政政策も、成長の為の支出だけ切り出して止める事は実務的に困難であり,政策的にも、①にある様に、巨額の債務の健全化,山積みの課題解決の為に,政府は成長至上主義と決別は出来ないのである.又、政府が成長の目標を掲げる事は公金を使う立場としても、税収見通しを計画する為にも,必要なのである.

③成長の為の借金は止めて、かつ,消費税率を上げるべきだ.

政府の債務はGDPの2倍にあたる約1000兆円程度だが、政府単独のB/Sで言うと(資産を引くと),約500兆円程度(GDPと同等)であり,政府と日銀の連結B・Sで言うと純債務は200兆程度である.しかも債権者は国民と言う事で、国債の金利も上がらず,信用もある、と言うのが通説である.

だからと言って,債務を増やしても良いわけではない.常に,借金が出来る余地を持っている事は財政の安全性から必要であり、国力のバロメーターである.したがって,プライマリーバランスを維持,もしくは黒字化にする為に,『成長と増税』を両立させる事が政治には不可欠なのである.

セドラチェック氏は成長の為の金融緩和政策と財政支出による借金を止めて,消費増税を行えば経済も財政も安定するとの事だが、②の様に,デフレ脱却に取り組まず、緊縮財政と消費税増税を行えば,経済と財政が安定するどころか、経済は衰退し,総税収は減少し,財政は危機に陥るのである.

以上、①②③ともに,セドラチェク氏の、『成長至上主義と決別を』『消費税増税を』は日本国民にとっても、政府にとっても、絵空事だと言うのが,私の感想である.

最後に、セドラチェク氏の主張に対する日経編集委員の論評に触れておきたい.

日経編集委員は『経済成長を目標にするな』、『国の財政を安定させ、金利を適正水準に引き上げよ』、とのセドラチェク氏の主張に賛同しながら、経済成長を前提に組み立てられた現代社会は極めて特異な世界だと自覚する人も増えていると言うのである.

本当だろうか、いい加減な事を言うなと言う感想である.本当に成長を前提にしない政策で日本は成り立つのかその理由を聞いてみたいと思う.せめて、成長至上主義を認めた上で.成長を大義としたルーズな金融政策、財政政策はダメだと言うべきではないのか.

それとも、記事を載せた立場から、有益な話だと言わざるを得ないので、こんなヨイショの論評を書いたのだろうか.いずれにせよ、軽薄な、無責任な論評だと思う.日経らしからぬ論評だと思う.

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コメント

あんた頭固いんちゃう?

投稿: あ | 2017.04.02 09:32

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