« 436 世界大学評価ランキングに思う事 | トップページ | 438  参院選挙でまた始まった護憲運動 »

2016.06.26

437  英国のEU離脱:歴史的大決断が意味するもの

2016年6月23日英国の国民投票でEU離脱が決定したこの歴史的大決断をブログに記しておきたいと思い発信した.

欧州では戦争を繰り返してきた反省から、欧州のエネルギー資源を中心とした経済共同体(EC)が発足した.その後,ベルリンの壁崩壊、ソ連邦の崩壊を契機に、東欧諸国の加盟もあって、更に統合色の強い、欧州連合(EU)を発足させたのである.英国を除いて、土地も、河も、道路も、鉄道も、人も、国を超えて繋がっているヨーロッパの自然な姿かも知れない.

このEUの加盟国はそれぞれ主権国家であるが,その主権の一部をEU機構に譲るという,世界で類を見ない共同体である.現在28か国が加盟している.

EUは域内の労働者,商品,サービス,資本の移動は自由にし,関税も入国査証もない,5億人の単一市場を作り出したのである.そして,域内の経済政策、農業政策、通貨政策、財政政策、金融政策、安全保障政策、移民政策、或は知的財産権、等,EU内で統一の制度を設け、欧州連邦政府のような役割を強めて行ったのである.又,世界に対し、EUの発言力、影響力も強めたいとしたのである.

方、加盟国間で経済力の差が大きかったり、社会保障制度の格差があったり,賃金の格差があったり、,アングロサクソン、ゲルマン、ラテンと言った潜在的な民族対立や英、仏、独の歴史的対立が顔を出したり、EU内移民問題や中東からの難民問題、あ,るいは,ギリシャ等の財政破綻への支援策の問題もあって、紛糾する事が多いのである.理想とした共同体と言っても,その舵取りは極めて難しく、統合を強めないと決着できない性格を秘めているのである.

そんなEUではあるが、もし英国が離脱すれば,英国にとっても、世界経済にとっても、経済的ダメージが大きいとして、世界中が残留を願っていただけに、又、英国民は残留と言う常識的な判断をするだろうとの楽観もあっただけに、離脱の決定は世界に大きな衝撃を与えたのである.

さっそく、悪夢の始まりのように、ポンド、ドルの下落、世界的同時株安が起こり、日本では、円高(一時99円、終値102円)と株安(日経平均-1286円で14752早円)が起こったのである.

短期,中期.長期にわたって、EUや英国はどうなるのか、世界経済はどうなるのか、又、大きな課題が発生したのである.そこで、英国のEU離脱と言う歴史的出来事の意味するところを考えてみたい.

EU離脱の裏にある気になる要因

EU離脱の直接的理由は、東欧からの英国への移民の急増現象である.EUの取り決めではEU内の人の移動に対して、その国の国民と差をつけることなく、受け入れなければならない,としており、必然的に賃金が高く、社会福祉が充実している英国に移民が集まったのである.

英国民からすれば、移民の増加によって、雇用や住宅や病院や社会福祉や学校が奪われ、移民受け入れのコストも膨らむのである.英国人の,所得格差や就職難の問題がある事を考えれば,EUの移民制度は許されないと、なったのである.

そこで、離脱で予想される経済のダメージより、離脱による主権復活と移民問題解決を重視し、『経済より主権』、『連合より独立』を選択したのである.今回の『残留か離脱か』の二択には上記以外に、次のような意味もあったと思う.『政府信任か政府不信任か』、『グローバリズム重視かナショナリズム重視か』 の二択である.

この中で特に『グローバリズムかナショナリズムか』で言えば、大英帝国を築き、世界を制覇した事から、一見、グローバリズムが強い国のように思われるが、私は、独立心とプライドの強いナショナリズムが大英帝国を築いたと思うのである.第二次大戦でも、フランスを占領したナチスドイツを追い払い、大戦に勝利した事も、その精神によるところ大だったと思う.

んなたとえ話がある.沈没し始めているタイタニック号から脱出する為、救命ボートに乗れなかった男たちを海に飛び込ませる為に、ドイツ人には『これが規則です』、アメリカ人には『あなたは英雄です』、日本人には『どなた様もそうされています』、そして英国人には『貴殿は紳士です』と言って、了解を得たと言うのである.フランス人にはどう言って説得したのだろうか.たとえ話には出てこないが、我道を行く国民性から、『どうぞ、ご勝手に』と言ったら、誰も飛び込まなかったかもしれない.

英国人のアングロサクソン民族のメンタリティからすれば、いかに英国が凋落したとしても、欧州の共同体とか、連合体に加盟する事には,もともと、抵抗感があったと思う.今回のEU離脱も,このメンタリティが働いたと思うのである.

大戦の反省として,又、経済の発展にとって、現代の政治では『グローバリズム』が進められ、出来るだけ『ナショナリズム』を抑える方向にあると思う.例えば一国の露骨なナショナリズムが現れると、その対抗として.それぞれの国のナショナリズムが頭を持ち上げ、争いに繋がるからである.

勿論,グローバリズムはそれぞれの価値観や文化や制度と衝突し,或は、国内の利害などに、葛藤が起こるのだが、ナショナリズムの壁が低くなる事で、長期的には相互の理解を深めたり、経済が発展したり、すれば、国家間の争いが防げるとして、グローバリズムの進展は、必ずしも悪い事ばかりではないのである.

一方では、冷戦終焉後、民族対立の勃発や、国の統治の手段として,又、グローバリズムの反動として,或は、モンロー主義の様な孤立主義の思想で、ナショナリズムの顔が強く表れ始めた感じもするのである.

英国の選択も、まさに、英国のナショナリズムの復活であり、米国大統領候補のトランプ氏も『米国第一』を掲げて、安全保障問題、移民問題、貿易自由化問題に、自国優先を打ち出し,米国人のナショナリズムに訴えているのである.英国のEU離脱と同じ発想である.

このように、ナショナリズムが前面に出すぎると、世界に対立が増え、不安定になるだけに、この動きを心配するのである.世界各国が、経済、安全保障、自然保護、等々、いろんな切り口で集団を形成し,社会の不安定要素を減らして行くべきだと思うのである.その意味で、英国の国民投票の結果が英国や欧州のナショナリズムの高揚に繋がらない様に政治は留意する必要があると思う.

②国民投票の功罪

国民投票は究極の直接民主主義と言われているが,代議士(人)選ぶ民主主語とは全く違う.国民投票は一政策のYES/NOが決定される事に対し、代議士の選択は人と政策全体を選ぶのだが、個々の政策の決定には、議論が伴うし、政治家の任期がくれば、政治家は国民の信を受ける事になるのである.

したがって、法的拘束力のある国民投票は限られている.日本国憲法改定とか、実際,実施された、大阪都構想の住民投票くらいである.勿論、この実施には十分な期間を取った国民への説明が必要である.

当たり前のことだが、どんな人であっても、一票は一票だと言う覚悟が必要である.又、間違った選択になる危険性がある事も同じである.ナチスドイツはナショナリズムを掻き立てて、国民投票を多用し、戦争に突入した事も忘れてはならない.

その意味で代議制民主主義の権化である英国の国民投票は適格であったのか検証が必要である.又、世界の各国が、難問決着に向けて、あるいは、打倒政権を目指して、軽々しく国民投票を実施する傾向があるとすれば、心配である.複雑な社会になる程、基本は代議制民主主義だと思うからである.

③今後のEUや英国の対応

英国の離脱で面倒な英国がいなくなって、EUの結束を強まるのか、反対に、連鎖して、EUからの離脱国が出るのか、見通しは立たないが、少なくとも、加盟国の中にある離脱派の勢力が大きくなて行くと思う.EUは理想と現実の狭間で、あるべき姿も見直す時期に来ていると思う.

一方、英国はEUとの協議にもよるが、欧州経済圏を失うかもしれない.同時に欧州市場の拠点機能を失い、その機能が欧州内に移る可能性もある.世界経済も、これによって大きな変更を余儀なくされるのである.この事一つとっても、英国や世界の経済的ダメージは大きいと思う.

同時に、残留派の多かったスコットランドの独立運動が再炎するかも知れない.又、英国の離脱によって、G7や安全保障の枠組みが不安定になる可能性もある.EUの存在感も落ちるかもしれない.一方、英国が抜けた後のEUとロシア・中国との関係も、気になるのである.

そんなわけで、英国離脱後の世界の秩序、経済がどのような枠組みになるか、しばらく、目が離せないのである.

④日本政府の対応

英国のEU離脱で、日本の経済が悪くなると想定され事から、当然、アベノミックスにとってはあらたな対応が求められる事になる.

消費税延期がすでに決断されたが、きせずして、正解となった.又、伊勢志摩サミットで安倍総理が懸念した世界経済の不安を警告し、金融財政政策の国際協調を決議した事も、期せずして、正解となった.が、更なるアベノミックスの展開が必要になった事は確かである.

英国のEU離脱に対し、民進党の岡田代は『アベノミックスの宴は終わった』と、わが意を得たりとばかりに安倍政権の批判を強めているが、アベノミックスに変わる、説得力ある対案は聞こえて来ない.

⑤日本の将来の課題

戦争を起こさない為に、世界が豊かになる為に、グローバリゼーション、ボーダーレスが世界の潮流だと思うが、移民の受け入れを日本がどうするか、日本では大きな課題である.今回の英国の離脱の引き金になった移民問題は僅差の投票結果が示すように、極めて悩ましい問題である.

英国のEU離脱に反対と、当然の事のように言う日本人は日本が移民の受け入れを自由にする事に賛成するのだろうか.

多分、金、物、サービス、の移動を自由にしても、人の移動は自由に出来ないと言うのではないだろうか.EUが英国に言っているように『良いところ取りはだめだ』、と言う反論もあると思うが、これに、どう答えるかも課題である.

多分、私なら、日本はTPPで関税のない自由貿易経済圏を形成したい、EUは理想を追いかけすぎて、移民までも自由化した事は間違いだった、と言うと思う.英国の離脱で、こんなことを思いはせたのである.


.

 

 

 

 

|

« 436 世界大学評価ランキングに思う事 | トップページ | 438  参院選挙でまた始まった護憲運動 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/134518/63823769

この記事へのトラックバック一覧です: 437  英国のEU離脱:歴史的大決断が意味するもの:

« 436 世界大学評価ランキングに思う事 | トップページ | 438  参院選挙でまた始まった護憲運動 »