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2016.11.27

452 対中貿易摩擦の激化

11月25日、日経新聞は対中貿易摩擦の激化を報じた. 報道の骨子はこうである.

中国は2001年のWTO(世界貿易機関)加盟に際し、15年後に非市場経済国から市場経済国になると言う条件を受け入れていた.その期限が12月11日に迫った.

中國はこの15年間を通じて、安い賃金、巨大な市場、を背景に、世界の企業を中国に誘致し、安い製品の輸出で経済成長を続ける一方、世界の経済を牽引して来た.

しかし、現在に至っても、国家資本主義主義と揶揄されるような、一党独裁政治と経済が一体となって、一帯一路(外交権益の拡大)政策を進めて来た事、具体的には、政府が為替相場や生産活動を統制している事に対し、世界各国の産業と雇用を奪っているとして,批判が高まっていると言うのである.

次期大統領のトランプ氏は過剰な設備による安値の鉄鋼輸出、中國企業による自国企業買収などに歯止めをかける狙いもあって、今後も、中國を市場経済国として認定しない方針を表明し、重要品目に高関税をかけて、国内企業や雇用を守ると主張したのである..欧州連合も同様で、日本も追随する公算が大である.

(ちなみに、WTOでは、市場経済国の場合、安値だからと言って、簡単に関税をかけて防御するわけにはいかないが、非市場経済国の場合は、不当廉売に対して、高関税で防御できる事になっているのである.)

中國としては,非市場経済国として、引き続き認定されると、中國が主導するRCEPの形成が困難になる.自由貿易圏の中に非市場経済国が存在し得ないからである.勿論、中国が目指す経済や金融の一帯一路の構想(中国権益の拡大)にも影響が出るのである.

(RCEPとは東アジア諸国連合加盟10か国に日本、中國、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランド、の6か国を含めた計16か国でFTA(自由貿易協定)を結ぶ構想

更に、中國が各国から高関税をかけられると,そもそもの中国経済の課題である内需拡大が不可欠になる.それが出来ないと、中國進出の外国企業(中国の輸出産業)が中国から撤退することになり、中國としては、厳しい経済運営を強いられる事になるのである.

この事から、中國はトランプ氏の表明に、警戒感を強めているのである.中国が持つ莫大な米国債を、米国交渉に持ち出す可能性もある.

又、前ブログでも発信しているが、トランプ氏の考えは中国対策にとどまらず、多国間貿易協定より二国間貿易協定の方が米国の国益を確保できるとして、TPP(環太平洋)、NAFTA(北米)、等の貿易協定からの離脱を表明しているのである.

中國のような非市場経済国に対する二国間貿易協定はあるとしても、市場経済国間の協定に対しても、二国間協定に切り替えると言う発想は全く理解できないのである.

トランプ氏は重要品目に関して、課税をかけて、国内産業や雇用を保護しようとの考えの様だが、それらを配慮して、多国間の貿易協定が出来上がっているのである.

歴史的に言っても、激しい貿易摩擦と二国間紛争をへて、その結果、多国間の貿易協定で、この紛争を解決しようとして、多国間の自由貿易協定が進められているのである.

トランプ氏の保護主義の考え方は、まさに歴史を逆流させるものであり、決して、米国にとっても有利に働かいと思うのである.経済は全体が発展しないと自国の経済も発展しない事を理解して欲しいものである.

米国の貿易ストラテジーは古来より、消費財や付加価値の低い製品は輸入し、輸出国の経済を牽引しながら、その国に米国の高付加価値のハイテク製品や畜産飼料を輸出すると言うものであった.米国の産業構造からすれば、今後も、この構造は変わらないと思うのである.

トランプ氏の発想はどう見ても、企業レベルの発想としか見えないのである.大国の大統領としては、「世界の経済発展のなくして米国の国益なし」と言う発想が必要だと思うのである.

国の復活は関税ではなく、差別製品の開発が重要だとなし思う.その意味で、米国主導の多国間貿易協定を率先して推進すべきだと思うのである.

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2016.11.11

451 次期米国大統領トランプ氏の主張とその影響

2016年11月8日、民主党ヒラリー・クリントン女史を破った共和党ドナルド・トランプ氏が第45代米国大統領に就任する事が決まった.

長期の選挙戦を通じて、どちらも、国民からの指示が低く,政策論争も少なく、相互の誹謗中傷だけが繰り広げられた選挙選であったとの印象を受けた.

こんな大統領選の中で、トランプ氏の乱暴な主張もあって、米国内外の有識者、マスコミ、はクリントン女史有利の予想を出し続けたのである.

しかし,蓋を開けてみると、出だしは、クリントン女史の票が順調に伸び始めたのだが、第4コーナーを回る頃より、予想に反して、トランプ氏がクリントン女史を捉え、一機にゴールを駆け抜けたのである.

予想を外した有識者、マスコミの多くは、その理由を,『白人の隠れトランプ支持者』を読めなかったからだと言う.あからさまに言えない事を、トランプ氏が言ってくれた事に、内心、共鳴した白人が多かったと言う事か.

更に,,マスコミのトランプ氏へのバッシング一辺倒への反感、主張が見えないクリントン女史への不満、エリート気取りのクリントン女史への嫌悪感、8年間のオバマ政権の反動、等も加わって、トランプに軍配が上がったのだと思う.

同時に,上・下院の議員選挙も行われたのだが、ともに共和党が過半数を占め、大統領と議会のねじれは解消されたのである.

本来なら民主党から共和党への久々の政権移譲となる所だが、トランプ氏と共和党が一枚岩でないだけに、外交、内政の方向が全く見えていないのである.トランプ氏が政治家でなかった事が原因だと思うが、前代未聞の出来事である.

さて,『白人の隠れトランプ支持者』が生んだ,トランプ氏の主張を、あらためて、いくつか挙げておきたい.

トランプ氏の基本的考え方

共和党の持つ、小さな政府、ホワイトプライド,キリスト教文化、同性愛同性婚の否定、の価値観に加えて、強いアメリカの再構築、その為のアメリカンファースト(国益優先、保護主義)を掲げ、次のような、政策を掲げたのである.

トランプ氏のアメリカンファーストの施策

①米国の治安、白人失業率を改善する為のメキシコ人の不法入国、不法移民の排除
②TPP等の自由貿易協定を離脱し,二国間貿易協定による米国益の確保
③テロの未然防止の為のイスラム教信者の入国阻止
④安全保障に対する各国の役割、費用負担の増大(米国の役割、負担の軽)
⑤温暖化対策(パリ協定)からの離脱
⑥インフラ投資、法人税・所得税の減税

リアリストであるトランプ氏の考え方は、国家間の友好関係,信頼関係、同盟関係、を築く事より、自国の利益の為に、自国産業や雇用の保護政策を展開する事の様である.

勿論、これまでのアメリカの経済、安全保障のグローバル戦略とは真逆の考え方であり、世界の国々からのブーイングは多い.歓迎しているのは中国、ロシアくらいだと思う.

又、トランプ氏のキリスト教文化や白人至上主義(ホワイトプライド)への傾斜が感じられる事から、宗教差別、人種差別だとのブーイングも、早速、始まっているのである.

しかし、トランプ氏が勝利した事は、自由,平等人,権,民主主義を標榜する米国が,表向きには言えない本音を述べたトランプ氏に、内心、共鳴した白人が多かったのだと思う.

さて、トランプ大統領の政策が具体的にどうなって行くのか、世界は、かたずをのむ事になる.もし、米国が内向きな保護主義に走れば、各国は経済、防衛ともに、自国政策を見直さざるを得ない事になるのである.特に日本の対応を考えて見たい.

今、トランプ氏の言動に、EC、イラン、イラク、シリア、アフガニスタン、IS、日本,中国、韓国、東アジア、メキシコ、中南米、等、かたずをのんでいるのである.

①安保保障体制の対応

日米安保に関して、米国は対等な役割を持つ事(本来の集団的自衛関係)を前提として、費用負担問題を取り上げてくる可能性がある.勿論、現日本は、憲法を変えなければ、対等な役割を持つ事が出来ないのだから、その分の費用負担を要求して来る可能性がある.

トランプ氏の考えの中に、他国の安全保障の請け負いは、ビジネスとして捉えているのかもしれない.米国は、海外の戦闘活動を民間の軍事会社に委託する国である.十分あり得る話である.ひょとすると、米国の最強の軍事力を期待して、有償で安全保障を依頼する国が多く出てくる可能性もある.そうなれば、トランプ氏はビッグビジネスを確保できて大喜びするかもしれない.

日本も独自の自衛力を持ちつつ、及ばないところを米国に有償で依頼する方法も一つの案になる.一方、米国がこれを受けなかった場合、日本は憲法を変えて、自衛活動も、集団的自衛活動も、国連や有志国の安全保障活動も、出来る国にならざるを得なくなるのである.

又、世界の紛争に対する米国の対応がどうなるのか、全く見えないが、トランプ氏の発想なら、平和の為、民主主義の為、より、国益を考えて、非介入、介入を決めるかもしれない.

②自由貿易協定から,二国間貿易協定へのシフトへの対応

どうやら、トランプ氏の発想は、国益を確保できる貿易協定は多国間貿易協定より、二国間の貿易協定の方が良いと考えているようである.

中国を非市場経済国(為替や生産の政治介入国)として、米国が二国間交渉を始める事は問題はないと思うが、市場経済国同士の貿易交渉を多国間ではなく二国間にすることは問題だと思う.

そもそも、歴史的に見れば、過去の貿易摩擦と国家間の対立(経済戦争)が繰り返された経験から、多国間の貿易協定で、この問題を解決し、自由な貿易で経済や貿易の発展をはかるようになったのである.

トランプ氏の発想はこれに逆行するのである.二国間協定で、又、二国間のバトルを始めようと言うのだろうか.これで、世界の経済発展が可能になるのだろうか.極めて疑問を抱くのである.

日本としては、米国主導で5年間、TPP合意に向けて、各国同士の激しい協議を経て、やっと、各国の批准にたどり着いたのだが、手のひらを返すような、トランプ氏の離脱表明はこれまでの取り組みを無視するものであり、このまま、黙って、TPPを白紙にしてはならないと思うのである.日本としては、今後とも、自由貿易圏作りに取り組んでいくべきだと思うのである.勿論、日本の技術力、開発力、の強化は何よりも重要になるのである.

③グローバル化から反グローバル化へのシフトへの対応

ECでは国のボーダーが限りなく低い為、EC内格差の拡大、EC内移民の増加、中近東からの難民増加、国益の低下、等の問題があり,英国のECからの離脱が決まったのである.

米国では世界の警察機能からの離脱、メキシコからの不法入国、不法移民による治安や失業率の悪化対策、更には、白人至上主義、価値観の多様化の排除,等、次期米国大統領のトランプ氏は自由貿易協定以外の分野でも、反グローバリズム、保護主義の発言をしているのである.

経済の発展や人の交流で、経済,文化,文明がグローバル化する事は、半ば自然な社会現象だと思う.どの国も、古来の文化が衰退したり、逆に、価値観が多様化して行く事は確かな傾向である.しかし、人為的にグローバル化やその影響を制御(排除)する事は社会に歪を作ったり、自由を束縛する事になりかねないのである.

この認識の上で、経済活動については、人為的にルールを共通化し、経済活動をやりやすくする事(経済のグローバル化)は良い事だと思うのである.勿論、経済のグローバル化で市場がドメステックからグローバルに広がる一方、競争や企業淘汰が激しくなる.その事で、経済の新人代謝が起こり、経済全体が活性化する事に繋がるのである.

一方、経済のグローバル化の影響で,各国古来の文化や価値観は.長い年月の葛藤を通じて変わって行くと思うが、それが法律に係わる場合は、理念、感情、含めて、常に、民意の判断が問われる事になると思う.

このように、グローバル化は多くの葛藤が伴うものであるが、自然な社会現象だとも思うのである.一方、反グ゙ローバル化(保護主義)は,この社会現象に逆行するものであり、特に内政問題が深刻になると、かつての愛国主義、排他主義,と結び付く危険性が懸念されるのである.

残念ながらナショナリズムを政治に利用する国が、いまだに多く存在しているが,加えて、経済も安全保障も、反グローバル化(保護主義化)を言い出している次期米国大統領のトタンプ氏の考えにも、大きな疑問を抱くのである.

現在および将来に至って、政治家の役割はナショナリズムを煽る事ではなく、抑制する事だと思うのである.その為にも、グローバル化は必要だと思うのである.

日本においては、古来から現在の至って,日本固有の文明・文化と他国の文明・文化が衝突しつつも、良いところを吸収し、日本の近代かを進めてきた歴史がある.今後も、島国日本の生きる道は、多くの葛藤が伴うと思うが,経済のグローバル化(自由貿易)を避けてはならないと思うのである.

以上の如く、トランプ氏の当選によって、その主張の実現性に問題が多いが、世界各国が安全保障、経済、移民の問題を、改めて考える機会になった事だけは確かである.

 

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