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2018.09.17

497 自民党総裁選での自衛隊をめぐる論争

今、安倍氏と石破氏の自民党総裁戦が行われている.この中で、自衛隊をめぐる論争が行われているのだが、9月14日の産経新聞の配信によると、日本記者クラブ主催の討論会で、安倍氏と石破氏の違いが浮き彫りになったと言うのである.

その要約は次の通りである.

安倍氏は9条二項(戦力の不保持)を残して、自衛隊を憲法に明記したい.そして「この自衛隊は戦力(軍隊)ではなく、実力組織と言う考え方をとりつつ、国際法的には戦力(軍隊)であると言う立場を取っている」と説明.

これは現状と変わらないし、自衛隊を憲法に明記する事で自衛隊違憲論をなくしたい,との持論を述べたと思う.従来の自民党の’国防軍の保持’から一歩後退した安倍案である. このハードルが低い改正案を任期中に実現したいと言うのが安倍氏の考えである.

これに対し、石破氏は自衛隊の位置付けに対し、自衛隊は必要最小限だから戦力ではないとか、国内に於いては戦力(軍隊)ではないが、国外に於いては戦力(軍隊)だ、とする考え方は国際的に全く通用しないと従来の自民党の解釈を批判したのである.

石破氏の考えは、第二項を削除して自衛の為の戦力(軍隊)を持つとの考えのようだが、それは公言せず、まず、二項の削除について時間をかけてコンセンサスを得たいと主張したのである.

これに対し、安倍氏は石破氏が総理になったら、石破氏の言うような憲法に改定されるまで、現在の自衛隊の位置付けをどうするのか、と迫ったのである.

石破氏に対し、現在の自衛隊は戦力だから憲法違反に当たると言うのか、国外に対しても、憲法に従って、戦力(軍隊)としての自衛隊は持たないと言うのか、ハーグ条約、ウイーン条約、或はジュネーブ条約などから外れると言うのか、イージス艦を数隻、所有し、5兆円も防衛費を使っているが、これも廃止すると言うのか、と迫ったのである.

これに対し、石破氏は名称は自衛隊のままで構わない、きちんと議論をしながら、日本国の独立と平和を守る為に、どうすべきなのか、と言う話しこそ必要だと述べたのである.

この論争について、私見を述べてみたい.

まず自衛隊の位置付けであるが、安倍案は、現在の自衛隊の位置付けと同じく’自衛隊は軍隊ではなく実力組織だ’として、警察組織と同じレベルに位置付け、この自衛隊の位置付けのまま憲法に明記したいと言うのである.

戦力(軍隊)ではない自衛隊には、軍隊に必須の一般法を超えた行為(交戦行為)の法的根拠(軍事規律)も、軍事法廷も、ないことから、確かに軍隊ではないが、実力行使が出来るのかと言う大問題がある.まさに、軍隊ではない自衛隊は「張り子のトラ」に見えるのである.

もし、これまでの自民党の考えのように、他国への侵略や国際紛争の為の戦力や交戦権は放棄するが、定義された自衛の為の戦力や交戦権は持つ、として軍隊である自衛隊を憲法に明記したいとするなら、この考えで国民を説得し、憲法改正を主張すべきなのである.

これなら、今までの解釈から一歩踏み出した内容になり、張り子のトラ問題も自衛隊違憲論も解消し、憲法改正の意味が極めて明確になるのである.勿論、この実現に向けて、必死の国民への説明が不可欠になる.

しかし、国民からの賛同が得られないと判断して、安倍氏の案で、まず、自衛隊違憲論を排除したい、と考えたと思うのだが、張り子のトラの問題は解消しないし、軍隊保持諭がさらに遠ざかると思うのである.

一方、石破氏は、国防軍を持つべきと考えていると思うが、これを公言せず、これまでの自衛隊の位置付けはおかしいと、自民党の解釈を批判したのである.これでは’おかしいから直す’
との発想になってしまい、すかさず、安倍氏から厳しい指摘を受けてしまったのである.

石破氏の言い方としては、’今後の在り方として、国防軍を持つべきだ、その為に、二項の削除について時間をかけて議論したい’とポジテブに言うべきだったと思うのである.

今回の論争もそうだが、従来から、’日本の安全保障の在り方(国連の平和維持活動、集団自衛体制、自衛活動の範囲、等)’が国民の前で討議されたことはない.憲法条文を議論する前にまず、この議論が不可欠だと思う.国民は憲法条文ではなく、今後の安全保障の在り方を判断したいからである.

そこで、まず各政党は党の分裂を恐れず、安全保障のあるべき姿を表明し、政党間で討論する必要がある.この議論を踏まえて、あるべき姿に応じた条文を作り、国民に、その主張をさらすべきだと思う.是非これを安全保障委員会で実行して欲しいのである.その上で、国会発議はこの委員会の結論を踏まえて行えば良いのである.

更に現憲法には安全保障問題以外にも、欠陥や新規要件の問題が多くある.70年間の垢を取り除くためにも、各政党は、これらの問題を踏まえた、新憲法案を作成し、安全保障問題と同じように、専門委員会で議論すべきだと思うのである. 委員会では、テーマが多岐に渡る為、複数の新憲法案をノミネートしても良いと思う.国会発議はこれを踏まえて国会決議を行う事になる.

特にこだわりたいのは、現憲法全文を精査し、欠陥条項が残らない様に、新憲法案を作る事である.70年間の垢を一掃し、一機に新しい憲法に切り替えたいのである.その為に各政党は優先度の低い、或は、欠陥を放置しない様にして欲しいのである.最新版の憲法を考えて欲しいのである.

ただ、一機に憲法を切り替えるとしても、国民は、100条に及ぶ条文毎に賛否を判断した上で、結論として、新憲法案に対しyes、noの決断をする事になる.勿論、条文毎に賛否の意思表示をする方法もあると思うが現実的ではない感じもする.また、新憲法と既法律との整合性のチェックと大きな法律改定作業が発生する事も覚悟しなければならない.

いずれにしても、始めて国民投票でイニシャルセットするのだから、何としても、最新版の新憲法を制定したいのである.これによって、70年間放置置して来たツケを払い、憲法改正の思考停止状態や非民主主義状態から一刻も早く、脱出したいのである.是非、国家事業として精力的に新憲法の制定に取り組み数年程度で実現したいと思うのである.

これまでの憲法改正論議を見ると、国民投票法が制定されていなかった第一次安倍政権までは、無責任な、現実味のない主張も含めて、自由な議論があったと思う.しかし、国民投票法が制定されると、憲法改正が現実味を帯びた事から、議論がすっかり下火になったと感じるのである.結局、70年間の放置状態が続いているのである.

依然として、議論をすると収拾がつかなくなる、選挙に影響する、急いで議論しなくても良い、と言った逃げが働いているのである.ひょっとすると、日本は自ら憲法を作る事が出来ない国なのかもしれない.

そんな空気を一掃する為に、「新憲法の制定」を述べたのだが、つくずく、国の未来を預かる政治家の保身、怠慢を強く感じるのである.

追伸(2018・09・24)

安倍首相の3選が決まった,これを受けて、日経新聞の世論調査が行われ、その結果が公表され.主な内容は次の通りである

首相に期待する政策について(複数回答)

社会保険の充実49%、景気回復45%、教育の充実31%、外交・安全保障30%、財政再建29%、政治行政改革15%、憲法改正13%

自民党改憲案の秋の臨時国会提出について(3択)

・提出すべきだ24% ・急ぐべきではない68% ・どちらとも言えない、わからない8%

総じて、安全保障に関する憲法改正は’急ぐ必要がない’である.70年間と同じである.多分、安全保障の今後のあるべき姿が全く論じられず、国民の認識も薄いからだと思う.

これは持論だが、’安全保障の今後のあるべき姿’について下記の内容で世論及び国会議員の調査をしてはどうだろうか.国民や国会議員がどう考えているのか見えないからである.これなくして、憲法条文の議論は出来ないのである.

1.軍隊ではない自衛隊と軍隊である自衛隊の違いについて(3択)


・理解している ・おおよそ理解している ・分からない

2.日本の自衛体制について(5択)

・非武装中立が良い(自衛隊、日米安保の破棄)
・軍隊ではない自衛隊と日米安保条約による個別的自衛体制が良い
・軍隊の自衛隊と日米安保条約による個別的自衛体制が良い
・軍隊の自衛隊と日米安保条約による集団的自衛体制が良い
・判断できない

3.軍隊の自衛隊とした時の軍事的活動範囲について(複数回答)

①日米安保条約以外に集団的自衛体制をつくる( 賛成,反対,判断できない)
②国連の国際貢献への参加( 賛成,反対,判断できない)
③有志連合への参加( 賛成,反対,判断できない )

この調査で安全保障に関する意識や方向性が見えてくると思うのである.さらに、憲法改正について次の調査も必要だと思う.

憲法改正について(3択)

①全文見直し、新憲法案を作って発議すべきだ
②改正内容をしぼって発議すべきだ
③判断できない

今頃、こんな調査が必要な国はないと思うが,遅まきながら、このような選択肢を考える事で、自分の考えを整理し、憲法改正の方向性や必要性が見えてくると思うのである.勿論、このような調査は何回か繰り返し行い意識変化を見る事も必要である.

繰り返すが、国会の条文の議論の前に、これらの基本的な方向性を議論すべきだと思うのである.これなくして憲法は作れないからである.

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