政治

2019.03.21

510 大阪都構想反対派の根底にある反対理由

今度の地方統一選挙で大阪府では知事選、市長選、府会議員、市会議員の選挙が行われる.この選挙は、大阪都構想を進めたい維新とそれを阻止したい反維新(自、公、他)の激しい戦いとなる.

今更、言う事ではないが、大阪都構想は、大阪府と大阪市の行政組織の改革である.具体的には巨大な大阪政令市をいくつかの基礎自治体(特別区)に分割し、住民への行政サービスを向上させる、同時に、社会インフラの強化や都市戦略の一元化を行い、
2重行政の廃止、都市間競争力の強化を目指す構想である.

大阪都構想は2015年の住民投票で僅差で否決された.その時、当ブログで、今後も、大阪の斜陽傾向は止まらないと嘆いた.その時の分析では、議員や公務員の既得権益保有者及び年配者の票がこの僅差を生んだと述べていた.

今回の都構想議論を通じて、改めて、強く感じた事がある.それは、大阪都構想を否定的に見ている人達の感情
である.その感情とは「大きい大阪市が誇りだ」「大阪府並の大阪市の権限を失いたくない」従って「現在の大阪市を分割したくない」「現状のままで良い」である.明確な理由があるわけがなく、「縄張り意識」と「大阪大好き」の感情だけで、言っているように感じるのである.

この感情が「273万人の大規模基礎自治体による住民サービスの問題」「巨大大阪市で役人天国を作って来た問題」「財政逼迫になった問題」「府と市の二重行政による無駄の問題」「大阪全体の機動力が発揮できない問題」等の深刻な問題を生む温床になって来たと思うのである.よく言われる「不幸せの温床」である.

「縄張り意識」と「大阪大好き」の感情の持ち主はこの感情が「不幸せ」の温床になって来たと気づく事もなく、従って、取り立てて問題意識もなく、この感情を今も持ち続けている様に見受けられるのである.

この「縄張り意識」「大阪大好き」の感情は「大阪の特質」と関係していると思う.独断と偏見で言えば、「大阪の特質」は関ケ原の戦い、大阪の陣で家康に負けて以来、商都の道を歩みながら培われてきた文化だと思う.その特質のいくつかを挙げてみたい.

①大阪は政治に無関心である.②これまで有力な政治家を輩出していない.③有力企業・人材が東京に流れて行く.④二枚目より三枚目が好まれる.⑤理論より感情が優先する.⑥義務教育の学力が低い.⑦犯罪が多い.⑧生活保護者が多い⑨ローカル放送が多い.⑩阪神タイガースや吉本興行一色である.⑪何かにつけ、東京が嫌いである. etc.

総じて言えば、「大阪の特質」は、負け組に見よく見られる防御本能による「縄張り意識」が働いて「大阪村社会」を無意識の内に培ってきた感じがするのである.したがって極めて保守的で、既存の秩序を変えたくない風潮が根底にあると思うのである.都構想という大改革に反対する感情も、これらの特質と関係していると思うのである.

近年、維新勢力の出現で、大阪では珍しく、政策論議がクローズアップされ、大阪府や大阪市の行財政改革が大きく進展してきたと思う.しかし、この都構想に関しては、「大きな大阪市のままが良い」と言う「大阪人の感情」を変えるところまで行っていないと思うのである.

そこで都構想の実現に向けては、「273万人の基礎自治体の問題点」と「大阪市の分割による特別区の姿」、「インフラや都市戦略の一元化の必要性」を改めて説得する必要がある.特に「大阪人の感情」を変えてもらう為に、「基礎自治体の分割理由」をしっかり、説得する必要がある.

橋下元市長が「巨大基礎自治体の問題」を実感を込めて、
熱く訴えていた事を思い出すのだが、これをもう一度、訴えるべきだと思う.「大きな大阪市が誇りだ」との感情を変えてもらうには、これしかないと思うのである.

又、大阪市の分割は行政コストが上がるから反対だと言う人がいるが、大阪市から分割された特別区より小さい基礎自治体は全国にいくらでもある.これは無駄だと言うなら別だが、それを言わず分割に反対する人は、どんな論理があるのだろうか.住民サービスに問題があっても、行政コストが低く抑えられるから、大きな大阪市のままで良い,とでも言うのだろうか.

以上の如く、大きな基礎自治体の分割で「きめの細かい行政サービスの実現」インフラ整備や都市戦略の一元化で「大阪府全体の発展」を訴え、合わせて「日本の活力向上への貢献」も正面から訴えて欲しいと思うのである.この事は「大阪大好き」の感情を高める事はあっても、失う事にはならないのである.

今回の選挙は、今更ながら、「改革派」対「守旧派」に決着をつける戦いである.「改革なくして大阪の未来なし」との旗を掲げて「大阪村社会からの脱却」「世界都市大阪に向けた大改革」が決断される選挙にしたいものである.

追伸(2019年4月8日)

4月7日行われた統一地方選挙で注目の大阪府知事、大阪府議、大阪市長、大阪市議が
決定した
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大阪府知事吉村氏(大阪維新・226万票)、小西氏(自公他・125満票)

大阪府議(88議席)
大阪維新51(+11)自民15(-9)、公明15、共産2、立憲1
無所属4


大阪市長:松井氏(大阪維新・66万票
)、柳本氏(自公他・47万票)

大坂市議(83議席)
大阪維新40(+7、自民17(-4)、公明18(-1)、共産4(-5)
無所属4


上記の様に大阪維新圧勝であった.これまでの大阪維新の業績と大阪都構想への賛同、及び人物評価の結果だったと思う.

組長のダブル選挙圧勝のみならず、一人区が多い府議会では過半数を取った事、複数人区が多い大阪市議選挙で過半数近くまで議席を得た事も、その圧勝ぶりを表しているのである.

それにしても、今始まったわけではないが、自民党大阪支部の人材不足がはなはだしいと感じる.「自民、公明、共産、等、組織政党には、地方の人材や政策が育たない」と言う仮説が今後も続きそうである.

府民、市民に託された
松井氏、吉村氏のリーダーシップで大阪府、大阪市はさらに活力を増していくと思うが、大阪都構想については大阪市分割への抵抗は依然として存在し、じっくりと歩を進めながら、百年の計を成し遂げて欲しいと思うのである.

 

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2019.03.04

509 独立運動記念式典で露呈した韓国の民族史観

20219年3月1日、韓国で独立運動記念式典が100周年の節目を迎えて行われた.

当ブログ506の「日韓関係悪化問題」で、韓国の日本に対する民族史観が憲法、法律、政治、司法、行政、教育、等に浸透している事が問題だと述べた.

これを裏付ける様な記念式典が行われたのである.文在寅(ムンジェイン)大統領(反日、民族独立、左派、親北)の次の演説によく表れている.

「歴史の立て直しこそが重要であり、親日(日本統治に協力した人)の残滓(清算)が課題だ.親日であった人は反省し、独立運動は礼を尽くされるべきだと言う価値を正しく確立する事が親日清算だ」と指摘したのである.

一方、「隣国との外交で葛藤の要因を作ろうと言うのではない.親日清算も外交も未来志向的であらねばならない」とも訴えた.のである.

この演説の主旨は前半部にある.「民族独立運動と大韓民国臨時政府の正当化と建国理念の確立」の為に、「親日の残滓」が必要だと言うのである.

実は,この演説は反日派、民族独立派、左派、親北派の考え方や憲法・法律にそった内容なのである.憲法、法律では次のようになっているのである.

韓国憲法の前文では大韓民国臨時政府を正当化し,日本の植民地支配は歴史的に否定する事を定めているのである.

「悠久な歴史と伝統に輝く我々大韓国民は、3.1運動で建立された大韓民国臨時政府の法統と、不義に抗拒した4.19民主理念を継承し、祖国の民主改革と平和統一の使命に立脚して・・・」

更に上記憲法に基づき、反日、民族独立、左派、親北の廬武鉉(ノムヒョン)大統領(2003年~2008年)は「過去史基本法」「親日派の子孫を含めた排除と弾圧の特別法」を制定したのである.

この「過去史基本法」は日韓併合や日本統治時代の親日派(併合協力者)、朝鮮戦争時の韓国軍による民間人虐殺、軍事政権下の人権抑圧、等の真相究明、責任追及によって、歴史を清算しようとする法律である.

「親日派の排除、弾圧の特別法」は日帝独占下の反民族行為真相解明に関する特別法、及び親日反民族行為者財産の国家帰属に関する特別法である.

更に、廬武鉉(ノムヒョン)大統領は,外交では北に対して、太陽政策を取り,徹底した宥和路線で臨んだのである.又、米韓同盟を見直しつつ、対日関係では未来志向に向かう為に、日本の植民地支配への明確な謝罪と反省、賠償を要求したのである.

当時の小泉首相は廬武鉉大統領の国内向けの主張だとして取り合わなかっが,廬武鉉大統領は首脳会談を中止し亀裂は決定的となったのである.
 

この様に廬武鉉大統領は1965年の日韓基本条約の無視も甚だしいのだが、文在寅大統領の演説も民族独立派の思想、同士の廬武鉉(ノムヒョン)大統領の強硬政策、憲法および過去史基本法と同じ内容だったのである.文在寅大統領の演説は100%廬武鉉(ノムヒョン)大統領のコピーだったのである. 

以上のように韓国は、反日、民族独立、親北(左派)による民族史観を、韓国の憲法、法律、政治、司法、行政、教育,等に浸透させている民族史観国家(ナショナリズム国家)なのである.

506のブログでも述べているが、改めて、この「民族史観を露骨にした国家の危うさ」をいくつか指摘したい.

①民族史観の絶対視の危険性.

民族史観は、時として不正確であったり、感情的であったり、独善的であったり、思想的であったり、時代背景によって変わったり、国家間の争いの種になったり、する事から、これを法律にしたり、政治の中心に於けば当然、不安定な社会になるのである.

この様に民族史観を絶対視する国家は民族史観国家(或はナショナリズム国家、中世国家)であって、多様性を許容する自由な民主主義国家、あるいは法治国家とは言えないのである.

以下に,その具体的危険性を列記したい.

民族史観は国家間の対立を生む危険性.

民族史観はどの国でも存在する.しかし、民族史観は国内の強硬政治に有効であっても、国家間では対立の種になる.戦争に繋がる危険性もある.これを防ぐ為に、近代政治では民族史観を抑制しているのである.

国際社会は各国の民族史観ではなく、「法による秩序」、「国家間の約束」を重視しているのである.
 

③民族史観で過去の政治家や現在の政敵を弾圧、排除してしまう危険性.

現に韓国では法律で親日派を弾圧・排除・賠償要求をしているのである.これでは人権も、言論も、守れない社会と言う事になる.又、違反行為が民族史観に合致していれば無罪(愛国無罪)、民族史観に反していれば有罪になると言う恐怖政治に陥るのである.

④民族史観で「過去の国家間の約束」や「法の不遡及の原則」を破る危険性.

現に韓国は1965年の日韓基本条約を無視したり、日本併合の謝罪、賠償を求めたりしているように、「国家間の約束」や「法の不遡及の原則」を無視して、民族史観を優先しているのである.

こんなことを各国がやれば、国際社会の秩序は崩壊するのである.韓国が露骨な民族史観国家から脱却しない限り、韓国リスクが常に存在する事になり、孤立して行くと思うのである.

⑤民族史観が陥りやすい危険性.

民族史観の正当性を固辞する為に、歴史を歪曲したり、不都合な歴史を隠蔽したり、フェイク情報を積極的に流布させたり、国民を洗脳する行動になりやすいのである.過去の歴史で明らかなように、この民族史観を政治の中心に置くことは最も危険な事だと認識すべきだと思う.

以上が民族史観の危うさであるが、どの国にもあり得る事だが、韓国は何故、民族史観を政治の中心においているのか、私見を述べてみたい.

もう一度、この図を見たい.Photo_4

韓国が民族史観国家になった理由は左派の「1919年建国」の制定願望に見る事が出来る.

一般的に建国年は国の領土、主権があって、国際社会に承認されるのだが、それによれば、1948年の南北分裂国家の誕生が建国年になる. 

1948年の建国を主張する右派勢力は,あくまでも「正統で完結した国家」との認識である.共産主義を掲げ、ソ連の支援を受けた北朝鮮と戦火を交えながらも、経済は成熟し世界に名をとどろかせる企業を輩出するまでに成功し、北朝鮮より優越した国家になったと自負しているのである.「1919年建国」はこの韓国史を崩す事になりかねないと思っているのである. 

一方、「1919年建国」を主張する左派勢力は1948年は建国どころか分断を招いた年だとの認識である.北との統一を願う左派勢力にとっては現在の韓国は「不完全な分断国家」であり、統一国家を目指す立場からすれば、上海で臨時政府を立ち上げた「1919年を建国年」にする事で、保守政権の言う韓国史を否定出来ると考えているようである.

しかし、国も主権もないのに、ましてや、統一国家など出来ていないのに、1919年南北統一国家を建国した年と言うのだから、無理がある.敢えて言えば「独立運動記念日」が妥当だと思う.

どうやら、「1919年建国」と言う左派は次の事を無視している様である.

・米ソ統治から独立して南北分断国家を作った事
・北の侵略で起こった朝鮮戦争の事
・日韓国交正常化交渉(日韓基本条約)の事
・長期にわたる南北対立の事
・韓国の歴代大統領の右派・左派の変遷の事
・北朝鮮の核開発の事

これらを無視して、100年前の民族統一運動を「韓国の建国年」としたい為に、日本の韓国併合時代をやり玉に挙げて,当時の「反日の民族史観」を政治、教育、司法に浸透させ、今日に至っている感じがするのである.

て、反日民族史観による「親日の残滓」「反日政策」を叫んでいるのだが、これでは南北統一に近ずくのだろうか.「1919年建国」になるのだろうか.南北民族統一問題は反日からは生まれないのである.

南北民族統一のチャンスは1948年の米・ソ統治からの独立の時にあったと思うが、そのチャンスを逃したのは南北朝鮮の意思だったのではないか、そこに統一出来ない根本問題があったと思うし、それを解決しなければ統一は実現できないと思うのである.
反日精神では解決しない事は明らかである.

今後、左派勢力あるいは文在寅大統領が南北の民族統一を目指すなら、次の問題に答えを出さなければならないと思うのである.

・政治思想、体制が違う両国の民族統一の理念、統一形態の問題
・米・中・ロの狭間の中での南北民族統一の問題(半島の歴史的地政学問題)
・朝鮮戦争の歴史認識と清算の問題
・北朝鮮の核武装の問題

今のところ、これらに対する左派勢力の考えは聞こえて来ない中で、文在寅大統領は北朝鮮の核廃止に向けた国際的な経済制裁の中で、北に核廃止を強く求める事もせず、経済制裁緩和と南北の宥和政策を主張し続けているのである.

そして、第2回米朝首脳会談が決裂した現在、文在寅大統領は宙ぶらりんの状態になってしまったのである.
 

以上の事から、韓国左派が「日本の韓国併合からの独立」「日本の謝罪と賠償要求」に思考が停止し、反日感情を政治に利用しているだけでは、今後の韓国の姿は描けないのである.

韓国国民は民族史観の間違いや危険性に気づき、.正しい歴史を取り戻し、「激しい恨精神」と「民族史観国家」から脱却しない限り、未来志向の国家には向かない思うのである.

近代政治は国家間の歴史認識の違いを認めながらも、ナショナリズムを抑制し、価値観の共有や法の秩序に向かっているのだが、韓国もそうあって欲しいと思うのである.

追記(2019年3月9日)


同日の日本経済新聞の真相・深層コラムに、3.1独立運動記念式典で演説した文在寅大統領の民族史観について論評していた.当ブログの論調を更に掘り下げた内容であり、ここに、追記しておきたい.

①コラムのタイトル

’「親日残滓の清算」国民に呼びかけ'
’文氏、保守潰しに日本利用’
’関係改善への積極性乏しく'

②コラムの要旨

日本の耳に不穏に響く「親日残滓の清算」の言葉に、文氏の統治や対日政策の底流にある歴史観が凝縮している.

韓国では「親日」とは過去に植民地統治に協力した人や組織,慣行を指す.現在でも追放されず、権力を持ち続けた保守政党や情報機関、検察等はその悪しき生き残りで、こうした勢力は独立運動家を思想犯に仕立てる為に「パルゲイン」と言う呼称をつけたと文氏は主張する.

文氏は共産主義者だけではなく、民族主義者やアナキストまで全ての独立運動家にパルゲインの烙印を押し弾圧した、独立後もこの呼称を民主化運動などに使われ、今も、革新勢力を攻撃する手段になっていると、保守勢力を批判した.

国を挙げての民族解放を祝う日にパルゲインの呼称で弾圧した勢力を「一日も早く清算しなければならない」と訴えたのはなぜか.

韓国では現在、一時期90%の支持をした若者を中心に急速な「文離れ」が進んでいる.来春の総選挙では保守勢力が巻き返すとの観測もある.そんな中で、「親日の残滓の清算」発言は軍事政権の流れをくむ保守政党をけん制し、革新勢力の再結集と人権に敏感な若者の取り組みを図ったと見る.

この様に「親日の残滓の清算」の本質は、韓国内の政争の産物にほかならない.

又、文氏の演説は日韓関係をこれ以上、悪化させない様な配慮をした言い回しをしていたが、「歴史を教訓に、力を合せて被害者の苦痛を癒す時、本当に友人になる」として日韓協力関係の必要性を説きつつ、知恵を出すのは加害者の日本だと言う歴史観は変わっていない.のである.

日本との経済連携や安全協力、人的交流など2国間関係の視点が語られないのも文演説の特徴である.朝鮮半島を全ての中心に据える世界観もまた、日韓間の懸案を進んで解決する意思を持ちにくくしている.

独立運動100年に先立つ2月26日の閣議で文氏は尊敬する金九(キム・グ)(独立運動家、第二次世界大戦後は南北統一運動を展開)の記念館を開いた.

韓国内には、戦後、朝鮮半島が南北に分断されたのは日本の植民地支配のせいだとする考え方がある.したがって「南北が統一されるまで反日は終わらない」と話すベテランジャーナリスもいる.

「未来志向の外交」を叫ぶ文氏は必ずしも反日ではないと、外交関係者や専門家の間で語られて来た.にもかかわらず、文氏が「過去」を国内の保守潰しの軸に利用する限り、日本が巻き込まれる構図から抜け出せない.

③私の感想

文在寅大統領が宣言した「親日残滓の清算」という言葉は支持率回復の為もあったと思うが、親日残滓の清算(暗に日本残滓の清算)を宣言して「北朝鮮への接近、宥和」を表明したかったのではないかと思う. 更に根底に、当ブログでも書いた、独立運動の理念を正統化(1919年建国)する為の清算宣言であったかも知れないのである.

この演説は米朝首脳会談の直前であり、自ら主張していた北への規制緩和が実現しそうな雰囲気もあり、つい先走って演説をしてしまった感じもする.

しかし、首脳会談の決裂で、文在寅大統領の前のめりの北朝鮮宥和政策が宙に浮いた格好になったのだが、この演説で、文在寅大統領が廬武鉉大統領と同じ、反日の民族史観と反日強硬政策をとっている事が公式の場で明らかになったのである.

その上で、コラムが指摘した「親日の残滓の清算」は「国内保守勢力潰しの軸」に利用しているとの主張に納得するのである.

「反日民族史観」による「民族史観国家」「日本の謝罪と賠償要求」「韓国内反対勢力潰し」「左派政治勢力の結集」、「北朝鮮との民族統一」を思い描くことは自由だが、思想家にありがちな,経過無視、現実無視、時代錯誤には、当事国の国民として、黙っていられないのである.日本の、これまでの温厚な付き合いも、むなしくなるのである.

ブログでも触れているが、反日運動で韓国国内を統治したり、「日本の謝罪と賠償」なくして未来志向は出来ないと言う様な、他国次第の発想ではなく、韓国自身がどの様な政治路線を歩むのか、北朝鮮との民族統一はどのように進めるのかを、是非、韓国自身の未来志向で議論して欲しいと思うのである.もし、「恨の精神」から、日本を非難し、謝罪を求める優越感に浸り続ける国になりたいと言うのであれば、それもしっかり議論したらどうだろうか.

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2019.01.18

506 日韓基本条約をめぐる日韓関係悪化問題を考察

戦後、日韓は国交正常化を目指して14年間に及ぶ激しい協議を行い,1965年,日韓基本条約が調印された.Photo_3
その後、この条約によって、韓国併合時代における対日請求権は完全に消滅したとする日本側と、個人の対日請求権があるとする韓国側の主張が衝突し、日韓関係は悪化の一途をたどっているのである.

そこで、改めて、韓国併合に至る経緯、朝鮮半島分裂から朝鮮戦争に至る経緯、日韓基本条約の内容、調印後の動き(慰安婦・徴用工問題)、そして、自分なりの感想・疑問、を整理したくなったのである.(主にウキペデアの内容をまとめた)

1.韓国併合に至る経緯と評価

①併合に至る経緯

1392年から1910年にかけて朝鮮半島に存在した李王朝は1894年の日清戦争後、清王朝の支配から離れ、近代国家に向けて,李王朝は1897年に国号を大韓帝国とし,君主の号を皇帝と改めた.

1899年,大韓帝国国制を制定し,皇帝による絶対主義君主支配を明確にした.しかし,市民的改革路線の排除、改革派の排除・弾圧等で近代化は進まなかった.

1904年の日露戦争により,帝国主義列強の相互牽制による独立維持という大韓帝国の外交方針が崩れ、1905年、第二次日韓協約で日本の保護国となり、1907年,第三次日韓協約で内政権を移管した.

そして、韓国皇族の大半の賛成を受けて1910年、日韓併合条約が調印され、朝鮮民族の国家は消滅したのである.韓国の皇族は日本の皇族に準じる王公族に,併合に貢献した朝鮮人は朝鮮貴族とされた.

この併合に対し、英、米、清、露、伊、仏、独の主要国は朝鮮半島の混乱を避ける為に賛成したのである

②韓国併合時の韓国一進会の声明

「日本は日清戦争で多数の人命を費やし、韓国を独立させてくれた.日露戦争では日本は多くの損害を出しながらも、韓国がロシアの肉になる事を防ぎ、東洋全体の平和を維持した.韓国があちらこちらの国にすがり、外交権が奪われ、保護国に至ったのは我々が招いたのである.我が国の皇帝陛下と大日本帝国天皇陛下に懇願し、朝鮮人も日本人と同じ一等国の待遇を享受して政府と社会を発展させたい.」

③声明への日本の反応

一進会は日本と対等の立場で,新たに一つの政府を作り、一つの大帝国を作りたい、.一進会は大韓国の防衛を堅持する事より、地位の向上を求めている、として、一進会の考えを拒絶、政治を混乱させない為に、解散させらる事になる.

④大韓国民の反応

現在の韓国の教科書に,下級市民の併合反対が記述されているが、国民の大部分が政治参加の権利はなく、事実上、皇族のみが主権者であった為、大多数の国民の賛成、反対の統計は存在していない.ちなみに、国民に市民権を与えたのは併合後である.

⑤併合期間(36年間)で行われた事

・身分制度解放
新たに戸籍制度を導入、賊民の身分を削除し、性を名のらせ、子供は学校に入学させた

・土地政策
土地を測量し所有者を確定.申告されなかった土地は国有地とし、農民への払い下げも行った.但し、土地の権利の確定において、境界問題も多く発生した

・教育文化政策
日本内地に準じた学校教育制度の整備、4200校の小学校を開校、1000校以上の師範学校・高等学校の整備、ハングル語を必須科目とし、識字率を6%から22%に上昇、日本が言葉を奪ったとの批判は当たらない.

・併合で大きく変わった事
人口2倍、平均寿命24歳から30歳以上になった、
人口の30%の賊民が解放された、
幼児虐待が禁止された、
朝鮮女性に名前が付けられるようになった、
度量衡が統一された、
ハングル文字が整備され標準朝鮮語になった、
師範学校や高等学校合わせて1000校以上、小学校で4200校が作られた、
239万人が就学して識字率が4%から61%に上昇した、
大学や病院が作られた、
上下水道、電気が整備された、
貨幣経済に転換した、
道路、河川、港がの整備された、
耕作地の2倍化、1反当りの収穫量が3倍化、が実現した

⑥日本内地への影響

日本内地に多くの朝鮮人が流入したことで、内地の失業率が上昇、治安も悪化、これにより内地への移住は制限、朝鮮半島のインフラ整備の影響で東北地方のインフラ整備が遅れたり、廉価の米の流入で米価が下がり内地の農家は困窮

⑦現在の韓国の評価

現在の韓国では併合を否定的に見る方が多数である.肯定する言論は徹底的に弾圧され社会的に容認されないとして、逮捕・投獄に至るケースもある.

韓国の歴史学者は併合を正当化する日本側を「植民地史観」と呼び、否定的な韓国側は「民族史観」として区別し、植民地史観論者を親日派として糾弾.これに対し,言論弾圧国家との指摘もある.

⑧外国人の評価

外国人の評価は訪問者の手記によれば、政府が再編され、裁判所が確立し、法が見直され、景気が良くなり、交易が増え、農業が奨励され、内陸から海岸線まで鉄道が敷かれ、港や灯台が整備され、韓国への日本の支出は1200万ドルに挙がっているいる、驚くべき発展だと記している

2.朝鮮半島分裂から朝鮮戦争に至る経緯

第二次世界大戦中の1943年、連合国はカイロ宣言において、1910年より日本領となっていた朝鮮半島一帯を大戦終結後、自由独立の国とすることを発表.1945年2月、ヤルタ会談の極東秘密協定で米英中ソによる朝鮮の信託統治が合意された.

8月6日の米国の広島原爆投下、8月9日の長崎原爆投下、瀕死の日本に対し、ソ連は8月9日、日露不可侵条約の破棄と日本への宣戦布告を行ったのである.

既に満州国に侵攻していたソ連軍の動きに、朝鮮半島全体を共産国が占領する事を恐れたトルーマンは朝鮮半島の南北分割占領を提案し,ソ連との合意が成立.

8月15日、日本がポツダム宣言の受託を宣言し、日本は米国の統治下におかれた.同時に米ソの合意にしたがって、朝鮮半島は北緯38度線を挟んで、北をソ連軍、南を米国軍が占領したのである.

ソ連は満州に侵攻し、日本人(50万人~)をシベリアに連行し極寒の中で強制労働を課し(1956年国交回復まで続く)、4~5万人の死者を出したのである.又、ソ連は8月16日には日本領南樺太、千島列島、北方4島に侵攻し占領したのである.わずか、一週間の出来事である.

南北に分断された朝鮮半島はその後、信託統治について米ソの協議が行われたが決裂.米ソの対立を背景に、1948年8月、李承晩が大韓民国政府樹立を宣言し、北緯38度線以南のみの独立国家が誕生したのである.その一か月後の9月、大韓民国の実効支配が及ばない半島北部は金日成の下で、朝鮮民主主義人民共和国として独立したのである.

南北の軍事バランスはソ連及び1949年建国の中華人民共和国の支援を受けた北側が優勢だったのである.

互いに朝鮮半島全土を領土であると主張する分断国家はそれぞれが朝鮮統一を掲げて対立した.そして1950年、武力統一支配(赤化統一)を目指す金日成率いる北朝鮮軍は毛沢東とスターリンの同意と支援を得て、国境の38度線を超えて南下を開始し、朝鮮戦争が勃発したのである.

侵略を受けた韓国側には進駐していた米軍を中心に、イギリス、フィリピン、オーストラリア、カナダ、ベルギー,タイなどの国連加盟国による国連軍が参戦.一方、北朝鮮側には中国人民解放軍が、ソ連は武器調達や訓練などを支援したのである.

当時、弱体であった韓国軍は敗戦を重ね、釜山周辺にまで詰めよられたが、国連軍と共に反抗に転じた.北朝鮮は中国の義勇軍の支援を受け再びソウルを占領した.その後、両軍は膠着状態になり、1953年休戦協定を締結し、戦争は停止した.

これによって、朝鮮半島の分断が確定的となり、統一問題は南北の重要課題として残ったのである.

この戦争によって、朝鮮半島全土が戦場となり、荒廃したのである.韓国併合時代に作られたインフラや社会設備も個人の財産も、文化財も、失しなったのである.特に人的被害は甚大であり、国連軍及び双方の軍人、両国の一般市民、あるいは、大量処刑・虐殺された人達も含めて犠牲者は400万人~500万人とも言われている.(両国からの公表値はない)

この戦争で中国やソ連への攻撃を主張していたマッカーサーに対し、第三次世界大戦に発展することを恐れたトルーマンは1951年4月、マッカーサーを解任、羽田空港から帰国し、軍暦に終止符を打ったのである

3.日韓基本条約に至る経緯と主な内容

①日韓基本条約に至る経緯

1948年、初代大統領に就任した李承晩(1948年~1960年)は日本から戦争賠償金を獲得する為に、対日戦勝国としての地位認定を国際社会に要求した.しかし、連合国から拒否され、1951年、日本国との平和条約を締結する事が出来なくなった.

その為、李承晩は李承晩ラインの設置や竹島の選挙によって、一方的に武力で日本の主権を奪う政策に出たのである.朝鮮戦争後、李承晩は政敵の排除や反政府運動に対する厳しい弾圧と共に権威主義体制を固めて行った.しかし、経済政策の失敗で韓国は貧困国の一員に留まっており、支持率は低迷して行った.

その為に不正な憲法改正や選挙法改正で権力を維持しようとしたが、1960年、学生デモを契機に政権は崩壊.李承晩はハワイに亡命したのである.

李承晩失脚後、張勉内閣の下、政治的自由が急速に進展したが、学生を中心に北への合流を目指す南北統一運動が盛り上がり、これに危機感を覚えた朴正煕(パクチョンヒ)をはじめとする軍部が1961年、クーデターを決行し権力を掌握した.

朴正煕時代(1963年~1979年)、強権政治の下で、朝鮮戦争以来低迷していた経済の債権を重視し、ベトナム戦争への参加を通じて、アメリカから特需を獲得.又、日韓関係の正常化を進めて1965年に日韓基本条約を締結し、日本から援助を引き出し、産業インフラの投資を進めて経済の急成長を実現したのである.

この日韓基本条約は1952年、第一次会談で請求権、日韓併合条約、文化財返還、が議論された、以後、1965年の第七次会談まで続き調印に至った.

一方、朴正煕大統領は野党勢力の伸長により、政権の合法的延長が難しくなり、非常厳戒令を発して憲法を改正し、自らの永久政権化を目指し、反対派に対する激しい弾圧を強めたが1979年、暗殺された.

②日韓基本条約・協約の概要

・日韓併合条約及びそれ以前の条約は、「もはや無効」であることを確認した
(韓国は調印した事が無効、日本はこの基本条約を締結した時点で無効、双方相いれないまま、玉虫色の文章にした)
・大韓民国政府が朝鮮にある唯一の合法的な政府であると確認した
・この条約で国交正常化した結果、日本は韓国に対し約11憶ドルの経済援助を行う.ODAもその一環である.

付帯協約

・日韓請求権並びに経済協力協定

(日本及び日本人個人の資本、資産、財産の放棄、約11憶ドルの経済援助で韓国は対日請求権を放棄)

・在日韓国人の法的地位協定
・日韓業業協定
・文化財および文化協力に関する協定
・日韓の間の紛争解決に関する交換公文

(交渉の中で、対日債権は資料によって個別に行うとしていたが、韓国政府は一括で21億ドル支払って欲しいと要求.これに対し、日本は一括支払いは承知したが金額に関しては拒否、協議の結果、下記の金額になった.)

③日本からの資金供与・融資

・3億ドル相当の生産物、及び役務、無償(1965年)(当時1ドル360円)
・2億ドル円有償金(1965年)
・3億ドル以上民間借款(1965年)

(当時の韓国の国家予算は3.5億ドル、日本の外貨準備額は18億ドル程度であった.朴正煕大統領はこの資金で朝鮮戦争の復興資金や産業振興に使い、個人請求に使ったかどうかは定かではない.この基本条約が国民に知らされていなかったり、個人請求問題が後年、起こった事をみると、支払われていないのではないかと推測されている.)


4.歴代韓国大統領と日韓関係の推移

朴正煕大統領の次に、全斗煥(チョンドウファン、1980年~1988年)、盧泰愚(ノテウ、1988年~1993年)と軍政が続き、民主化運動への厳しい弾圧が続いた時代であった.

一方、朴正煕時代から引き継いだ高度な経済成長とソウルオリンピックの成功、中國、ソ連との国交樹立、国際連合への南北同時加盟などを実現し、韓国の国際的認知度を高めた.

その後、文民政権時代となり、金泳三(キムヨンサム、1993年~1998年)、金大中(キムデジュン、1998年~2003年),盧 武鉉(ノムヒョン、2003年~2008年),李明博(イミョンパク、2008年~2013年朴槿恵(パククネ、2013年~2017年)、現在の文在寅(ムンジェイン)と続いたのである.

金泳三大統領は軍政政権下の不正追及、金大中大統領は北朝鮮に対する太陽政策、日本文化の開放、日韓ワールドカップの共有を頂点に日韓の友好ムードが上昇、金大中の後継として2003年に廬武鉉大統領が就任した.

文民政権が誕生して以来、現代史の見直しや清算を進めてきたが、廬武鉉大統領はこれを一歩進めて日韓併合や日本統治時代の親日派、朝鮮戦争時の韓国軍による民間人虐殺、軍事政権下の人権抑圧、等の真相究明を進めた.

更に、過去清算に関する立法を進め、日本統治時代から軍事政権時代に至るすべての事案に適用して真相究明や責任の追、被害者の補填をする為の過去史基本法を成立、2006年、盧泰愚ら170人の叙勲を取り消した

外交では太陽政策を継承し、徹底した宥和路線で臨んだ.又、独自路線を押し進め、米韓同盟を見直しつつ、日本とは一定の距離を置いた.一方「過去の足かせにとらわれない」として小泉首相とのシャトル首脳会談に合意したが、未来志向と言いつつ、歴史の清算に拘り続けた.

2005年、廬武鉉大統領は日本の植民地支配への明確な謝罪と反省、賠償を要求.対日強硬政策に舵を大きく切り直した.小泉首相が靖国参拝を続け、国連の常任理事国入りを目指している時期に当たる.

当時の小泉首相は廬武鉉大統領の国内向けの主張だとして取り合わなかっが,廬武鉉大統領は首脳会談を中止し亀裂は決定的となった.

又、2005年、日本の国連常任理事国入りに反対を表明し、ドイツ訪問時、ドイツの常任国入りに賛成するとした上で、日本をナチスドイツと同じように批判と賠償を求める共同宣言を持ちかけた.しかし、「現在の重要な問題を優先する」としてドイツ政府からも猛批判、猛反発を受けた.

ドイツ在住のユダヤ人からも、日本の統治をユダヤ人虐殺と同一視する事に猛批判を浴び、ドイツメデアからも、訪問や発言を無視されたのである.

廬武鉉大統領は日本統治時代の親日派財産を取り戻す法、親日派の子孫を排斥弾圧する法を施行した.しかし、これらの法は不遡及の原則に反し、憲法違反だとして厳しい批判を受けた.

更に2006年竹島周辺の双方の海洋調査で、双方とも露骨な対立姿勢が現れ、日韓関係はさらに悪化した.廬武鉉大統領の軍事攻撃も辞せずとの姿勢に国際的な非難と信用失墜、経済悪化、を懸念して大統領の独断振りに憂慮の声が強く上がった.

安倍首相と11か月振りに日韓首脳会談が行われたが、北朝鮮の地下核実験の問題があるにもかかわらず、大半が歴史認識問題になり、両国の溝は埋まらず、共同声明に至らなかった.

2007年就任の李明博(イミョンパク)大統領、2012年就任の朴槿恵(パククネ)大統領により、慶尚道系保守勢力に戻ったが、民主的政治体(文民体制)は続いた.

両大統領とも韓国国内の反日勢力の圧力から、歴史認識問題、竹島、慰安婦問題、を取り上げナショナリズムを煽り、反日攻勢をかけ、日韓関係に亀裂が走った.

その後、朴槿恵大統領のスキャンダルが国民の不満に火をつけ退任に追い込まれた.

5.対日請求権に関する経緯

韓国政府や韓国メデアは日韓請求権協定による賠償請求権の解決について1965年当時から、韓国国民に積極的に周知を行う事はなく、民間レベルでは日本政府への新たな補償を求める訴えや抗議活動を行い続けた.

賠償請求の完全解決は韓国側議事録でも確認されており、日本政府も請求権問題が解決したとしている.

2005年、反日色の強い廬武鉉大統領率いる韓国政府は慰安婦、サハリン残留韓国人、韓国人原爆被害者、の問題は対象外だったと主張し始めた.

時を同じくして、韓国の与党議員27名が日韓基本条約が屈辱的であるとして、破棄し同時に日本統治下に被害を受けた個人へ賠償などを義務付ける内容の新しい条約の締結と両政府が条約競技段階の過程を外交文書で明らかにした上で、日本政府が謝罪するよう要求した.

2009年、ソウル行政裁判所による情報公開によって、日韓請求権交渉には「完全かつ最終的に解決した」「1945年以前に生じた、いかなる請求権も主張もする事が出来ないものとする」の文言が明記されている事からようやく韓国国内で広く知られるようになった.

韓国人への個別補償は日本政府ではなく韓国政府に求めなければならない事が明かになったのである.


李明博大統領の時、日本への徴用被害者の未払い賃金請求は困難であるとして韓国政府が正式に表明するに至った.いわゆる慰安婦等への今後の補償や賠償請求は韓国政府への要求となる事を韓国政府は国際社会に対し示した.

一方、2012年、韓国大法院は、いくつかの損害賠償訴訟の上告審で、日韓併合時の日本企業による徴用者への賠償請求を認め、差し戻しをしていた.

「1965年の日韓賠償請求協定は日本の植民地支配の賠償を請求するための交渉ではない為、日帝が侵した反人道的不法行為に対する個人の損害賠償請求権は依然として有効」

「消滅時効が過ぎて賠償責任はないと言う被告の主張は信義誠実の原則に反して認められない」

元徴用工が日本で起こした同種の訴訟で敗訴判決が出た事に対し、「日本の裁判所の判決は植民地支配が合法的だとする認識を前提としたもので強制動員自体を不法とみなす大韓民国憲法の核心的価値と正面から衝突するため、その効力を承認する事は出来ない」と主張.

以来、元徴用工、及びその遺族による相次ぐ訴訟が起こり、日本企業の賠償判決が出た.これに対し、日本政府は解決済であり受け入れられないと表明.そして、大法院で日本企業の敗訴が確定した時、日韓基本条約に基づき協議を求める方針を伝えた.

約5年、韓国大法院は徴用工訴訟について判決を出していなかったが、2018年,日本企業敗訴の最終判決を出したのである.同時に、最終判決を先延ばししていた法院行政所の元幹部、最高裁判事らを起訴したのである.


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506 (続き)日韓関係悪化問題の考察

6.2018年の徴用工に関する大法院の最終判決概要

文在寅大統領が就任後、大法院の判事を変更し,5年間、大法院が最終判断をしてこなかった徴用工賠償訴訟に対し、2018年、日本企業敗訴の最終判決を出したのである.その概要は次の通りである.

・日本の判決の効力を認定できない(日本での賠償裁判で韓国側敗訴)
・損害賠償請求権は被告にも行使できる
・時効成立と言う被告の主張は容認できない

多数意見(7人)は日本の植民地支配及び侵略戦争の遂行に直結した日本企業の反人道的な不法行為を前提とする強制動員被害者の日本企業に対しする「慰謝料請求権」は請求権協定の適用対象に含まれないと判断した

別意見(3人)は請求権協定は韓国の外交的保護権が放棄されたにすぎず、個人の請求権は消滅していない.

反対意見(2人)は韓国の外交保護権のみが放棄されたのではなく原告の権利行使が制限されるとの見解.、又、協定が無効でないとするなら個人請求権は行使できず、国家が補償しなければならない、と言う意見もあった.

盧 武鉉(ノムヒョン)大統領の同士として、反日、親北の路線を継承し、この政策を拡大しようとしている文在寅(ムンジェイン)現大統領は盧 武鉉大統領時代、対日請求権は消滅している事を承知の上で、

「三権分立でどうしようもない」
「日本の歴史に起因しているのだから日本は謙虚になれ」

と切り捨てたのである.どうやら文在寅大統領はさすがに、対日請求権があるとは言えず、大法院の判事を変更して、司法に自分の本音を言わせた感じがするのである.

現在、徴用工訴訟が70件を超えていると言う.どこまで増えるかわからない状況である.解決済みとしてきた日本政府は日韓基本条約に基づいて、協議を申し入れている.

7.慰安婦問題の経緯 

旧日本軍の慰安婦に対する日本の国家責任の有無に関し、日本、韓国、アメリカ、国連、等で1980年代頃から議論となった.

斡旋業者が広告など広く募集をし、内地の日本人女性をも慰安婦として採用していた事などから国家責任はない、との主張がある一方、一般女性を慰安婦として、官憲や軍隊により強制連行が行われたのだから国家責任があるとの主張もある.

ちなみに、売春が違法とされていなかった当時の各国の軍人の性処理への対応は次の通りである

・個人に任せる(恋愛、買春、援軍先の慰安所の使用)ー英,米,他
・慰安所(衛生管理、性犯罪防止の為の施設)を用意するー日,独,伊,韓
・強姦は犯罪として処罰するー各国(黙認するケースあり)

日本で従軍慰安婦を社会問題化する為に、刊行物が出始める.

1976年,慰安婦の総数20万人とする「天皇の軍隊と朝鮮人慰安婦」が出版.
1977年,自称元日本陸軍軍人の吉田清治が「朝鮮人慰安婦と日本人」を出版し、慰安婦徴用、済州島での「狩り出し」を記述.

1983年,吉田清治は謝罪碑建立のため訪韓、
1983年,亜日報編主張が「日帝支配下の,国現代史」で挺身隊として動員された女性は20万人、その内、~7万人は朝鮮人だったと記載.

1984年,吉田清治は「私の戦争犯罪ー朝鮮人強制連行」を出版
1985年,日新聞が吉田清治を紹介し以後、16回取り上げ報道.
1989年,吉田は「私の戦争犯罪」を韓国で出版.ニューヨークタイムスはこれを事実として報道.朝鮮日報はこの一冊で日帝の慰安婦強制連行が立証されたと報道.

1991年,朝日新聞は吉田清治インタビューを掲載、「第二次大戦の直前から女子挺身隊などの名で前線に動員され、慰安所で日本軍人相手に売春をさせられた」と報道.

1992年,朝日新聞は「太平洋戦争に入ると,主として朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した.その数は8万人とも20万人とも言われる」と報道.

1992年,宮沢首位訪韓を前に、社説で、「歴史から目をそむけまい」と掲載
1991年,名乗り出た元慰安婦が東京地裁に提訴.
1992年、釜山従軍慰安婦、女子勤労挺身隊公式謝罪等請求訴訟.
1993年,フィリピン人元慰安婦が、1994年,オランダ人元慰安婦が東京地裁に提訴.

宮沢首相は訪韓し、首脳会談や国会演説で軍の関与を認め、お詫びしたい、と謝罪し真相究明を約束.

1992年、加藤紘一官房長官は従軍慰安婦問題に対し「お詫びと反省」の談話を発表.同時に第一次調査の結果を公表.その内容は「政府の関与」は認めたものの、「強制連行を立証する資料は見つからなかった」とした

1993年、第二次調査結果を公表

その内容は「慰安婦の募集は甘言を弄し、あるいは畏怖される等の形で本人の意向に反して集めるケースが多く、官憲等が直接これに加担した」、

同時に河野官房長官は「募集、移送、管理等に甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた」「心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる」との談話を発表 .

1994年,村山内閣は元慰安婦に対する「全国民的な償いの気持ち」を表す事業として「アジア女性基金」を4億8千万円で設立.

1996年、橋本首相は元慰安婦に心からのお詫びの手紙を送付.同時に、法的に解決済みとしたうえで、道義的観点からアジア女性基金の事業を進めていると文章で掲載.

1997年、石原信雄元官房副長官は産経新聞の取材で「日本側は出来れば文書とか証言者等の裏付けが欲しかったが、見つからなかった、韓国側は元慰安婦の名誉の為に強制性を認めるよう要請された」と発言.

1997年,朝日新聞は吉田証言の真意は確認できないと発表
2014年,慰安婦報道に関する検証を行い吉田関連の16本の記事を取り消した.

朝日新聞の30年間に及ぶ誤報道が日本、韓国、世界に大きな影響を与えたとして大問題化.しかし、朝日新聞の報道姿勢は変わることはなかった.

日本政府は河野談話以来、村山、橋本、小泉の各内閣が謝罪と反省を表明し又、アジア女性基金の償い事業を進めて来た

しかし2013年発足した朴槿恵政権は日本から誠意ある措置を導き出すと言う方針で、日本政府に対し慰安婦問題を議論したいと要求.

しかし局長級会合では進展が見られず、2015年の首脳会談で早期に妥結する事が確認された.その結果、2015年12月、日韓外相会談で慰安婦問題が妥結に至った.

8.慰安婦問題の合意内容

2015年12月、日韓外相会談で合意した内容が共同記者発表された.

両外相は「日韓間の慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決される事を確認する」と表明.韓国政府が「元慰安婦支援の為に設立する財団に日本政府は10億円を拠出し,両国が協力していく事を確認した.

外相会談では日韓両政府が今後、国際連合など国際社会の場で慰安婦問題をめぐって双方が非難し合うのを控えることも申し合わせるとともに、共同記者会見で両外相がその旨を表明した.

岸外相は共同記者会見で「当時の軍の関与のもとに多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、日本政府は責任を痛感している.とし、
「安倍首相は日本国の首相として、改めて慰安婦としてあまたの苦痛を得違憲され、心身にわたり癒し難い傷を負わせたすべての方々にこころからお詫びと反省の気持ちを表明する」と述べた.

尹外相は「両国が受け入れうる合意にたっする事が出来た.これまでの至難だった交渉にピリオドを打ち、この場で交渉の妥結宣言が出来る事を大変うれしく思う」と語った.尹外相は在韓日本大使館前に設置されている慰安婦を象徴する少女像について適切に解決されるよう努力すると表明.

日韓両国はこの合意の際に公式な文書ではなく、両外相の共同記者会見を開いて合意内容を発表すると言う形式がとられた.

安倍首相と朴大統領の首脳会談が行われ、合意に至った事を確認し評価した.
安倍首相は総理大臣として改めて心からのお詫びと反省に気持ちを表明し、慰安婦問題を含めた日韓間の財産・請求権の問題は1965年の日韓請求権・経済協力協定で最終的かつ完全に解決済みとの我が国の立場に変わりはないが、
今回の合意により慰安婦問題が「最終的かつ不可逆的」に解決される事を歓迎した.

朴大統領は最終合意がなされたことを評価するとともに新しい韓日関係を築く為に互いに努力して行きたいと述べた.

9.慰安婦問題合意内容の履行状況

日本政府は元慰安婦を支援する為の韓国の「和解・癒し財団」に2016年8月、10億円を拠出した.この資金を基に在命中の元慰安婦46人の内36人に現金支給を行った.遺族に対しては36人の遺族が引き取りを表明した.

一方、2017年誕生した文在寅大統領は徴用工の大法廷判決の時と同じように、2015年の合意を守ろうとせず,慰安婦像の移動にも努力せず、挙句に「和解・癒し財団」を解散したのである.

この文在寅大統領の姿勢に、慰安婦問題の合意は法的効力がないとして、合意内容を放置し、最終的かつ不可逆的解決はしていないとの本音を感じる.

10.私の感想

日韓基本条約の対日請求権の問題は徴用工に関しては韓国政府は対日請求権は消滅しているとの認識がなされてきたが、司法の方で対日請求権はあるとの判決を出したのである.

慰安婦問題は村山首相時代の「アジア女性基金の合意」も,安倍首相時代の「和解・癒し財団の合意」も守れなかったのである.

1948年,韓国の誕生以来、軍事政権が続き、1992年以降,文民政権が続いたが、政治体制は変わっても,民族主義・民族史観が極めて強い国家である事は変わっていないのである.

そこに愛国無罪の精神、恨の精神、謝罪をさせる精神を垣間見るのである.朝鮮民族からすれば,謝罪とは非を認め、賠償責任を負う、と言う意味である.この賠償責任は終わることはなく生き続けるのである.

したがって,朝鮮民族は謝罪をさせたら勝、謝罪をしたら負けと考え、自らは決して謝罪はしないのである.日本の挨拶がわりに「すいません」と言う、和とか、配慮の文化とは全く違うのである.

上記の様な精神は朝鮮半島の古代からの争いの歴史から生まれたものだと思う.その結果,事実を無視したデベート力で民族を守ると言う習性が育まれたのだと思う.

交通事故で原因はともかく、先ず大きな声で相手を非難したり、討論会で,熱っぽく、激しく相手を攻撃したり、自らの非を否定できなくなって、他の事で相手の非を持ち出して、非を相殺しようとする事に、民族の習性を感じるのである.

この韓国の強い民族主義は国民、政治家、裁判官、に定着し,歴史認識も,政策も,裁判も,民族史観にもとづいて行われるのである.

併合前年,伊藤博文を暗殺した犯人が英雄になったり、100年や75年前の韓国併合や徴用工・慰安婦の強制連行はけしからんと謝罪・賠償を求めるのも、過去の政治家を断罪するのも、更に言えば、日本の首相の大きな写真や日本の国旗を焼くデモが時々見受けられる事も、民族主義による民族史観によるところであり、決して法治国家とは言えないのである.中世のナショナリズム国家を彷彿するのである.

大法院は元徴用工の日本企業賠償要求裁判で、慰謝料は日韓基本条約に含まれないとした事だが,損害賠償は含まれるが、慰謝料なら含まれないと言う事なのだろうか、だとすると、慰謝料以外の対日請求権は消滅していると言う事なのだろうか、はっきりしていない.

はっきりしている事は、この判決で、何としても日本及び日本企業を敗訴にしたいと言う民族史観の判決だと言う事である.

そもそも大法院は

・日韓基本条約は植民地支配の賠償に関する合意ではない、
・非人道的な不法行為に対する個人の対日賠償請求権は存在する、
・時効は信義誠実の原則に反して認められない、
・強制労働は大韓民国憲法の核心的価値と正面から衝突する、

と主張していた.これに即して大法院は最終判決を出したのである.

対日請求権は1965年の日韓基本条約で解決済みであり、韓国政府も同じ認識を持っていたのだが、大法院はこれを無視してしまったのである.

又、大法院は大韓民国も大韓民国憲法も、韓国併合時代に存在していないにもかかわらず併合時代の事に遡及してしまったのである.このような遡及は国家間にはあり得ないのである.

しかも,大法院は民族史観ではなく,憲法で判決を出したと言いたかったのか、併合時代に存在していなかった大韓民国憲法の核心的価値を持ち出して、判決を出してしまったのである.

日韓基本条約の成立状況、内容、その後の韓国政府認識を全く無視した文在寅大統領とその司法の民族史観偏向ぶりが透けて見えるのだが、全く国際社会では通用しない判決を出してしまったのである.

この様に法律や条約或は約束ではなく、民族史観に基づいた、しかも、過去に遡及した判決は,韓国国内はもとより、国家間にも、争いが絶えなくなるのである.文在寅大統領、大法院は韓国に司法リスク、政治リスクがある事を国内外に示した事になったのである.

ところで、慰安婦少女像は現在、韓国国内で20体から50体に、海外では9体が15体に増加している.その像の碑文に驚く事が書かれている.

「・・・強制的に性的奴隷状態にされ、20万人以上が、韓国はじめ多くの国々から移送された.日本政府がこれらの罪の歴史的責任を受け入れる事を勧告する・・・」

20万人という数字は出版物に出て来た挺身隊の数である.この数を強制的に性的奴隷状態にされた数としている所に異常さを感じる.又、日韓が慰安婦問題について、2015年末、最終的かつ完全に解決したのだが、いつまで勧告するのだろうか、この慰安婦像及び碑文は撤去する気はないようである.

韓国としては、この碑の目的は「日本の非道」を世界に広めたいのだと思う.しかし,この事実と違うこの像と碑文を残すと言う事は朝鮮民族の偏向ぶりを後世に伝える「朝鮮民族偏向記念碑」になると思う.

次世代の韓国人は、この像と碑文を撤去しない限り、最も大切にしている民族のプライドや国家の信用が失墜して行くと思うのである
.

以上、日韓関係の悪化を考察してきたが、大きな疑問がある.

日韓併合、日本の太平洋戦争敗戦、朝鮮半島分割統治、南北国家誕生、のあとで起こった朝鮮戦争(国内外含めて数百万人の被害者と国土の破壊)についての韓国歴代政権、及び文在寅大統領の民族史観が全く聞こえて来ない事である.

北朝鮮や中国、ソ連、韓国を応援したアメリカや国連軍及び日本への民族史観はどうなっているのだろうか.その当時、大韓民国憲法の核心的価値に抵触する事はなかったのだろうか、軍人の為の韓国の従軍慰安所に問題がなかったのだろうか.朝鮮戦争による損害賠償責任はどうしたのだろうか.

悲劇の朝鮮戦争を棚に上げて、17年もかけて双方で協議し、日韓併合時代の清算と国交正常化を実現した日韓基本条約を何故,韓国は蒸し返すのか、しかも、この事で,日韓関係が悪化する事を承知の上で何故、民族史観をむき出しにするか、疑問と違和感を強く抱くのである.

反日感情を煽って政権維持を図る為に、併合時代の事を材料にしているのだろうか、日本の謝罪と賠償を言い続けないと民族史観に反するとして弾圧を受けるからだろうか.

最後に,近代政治ではナショナリズムを抑制することで危険な状態になる事を避けているのだが、韓国は依然としてナショナリズムを前面に押し出して政治を行っている感じがする.逆に、政治がナショナリズムを煽っている感じもする.

韓国は民族対立を大きくしない為にも、各国との友好を深める為にも、勿論、韓国の発展の為にも、民族史観による政治から脱して欲しいと思うのである.

民族史観とは相手国と正反対の史観になりやすく、対立するからである.特に、強い愛国心が事実を歪曲し、間違った民族史観になりやすく、ますます対立が大きくなるのである.

民族史観の言い分を、双方の国民が知る事は大事だが、その対立を政治に持ち込む事は対立を深め、極めて危険である.戦争もこの対立で起こるのである.民族史観による偏向政治ではなく、国内外の法や約束による政治が近代政治の知恵、人類の知恵、だと思うのである.日本の政治は1945年以降、これに努めて来たのである.
 


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2018.12.30

505 世界を激震させる大きな課題

もうすぐ2019年を迎えるが、世の中は年代で、ものが言えない程、刻々と変化している.医療技術で言えば、IPS細胞を使った再生医療、癌の免疫療法、あるいは、血液による癌検診、等、日進月歩である.そんな中で、目を離せない、世界をゆるがす、深刻な、大きな課題を二つ取り上げてみたい.

1.落とし所が見えない米中激突

2018年はトランプ米大統領の『アメリカンファースト旋風』が吹き荒れた.この旋風の起点は、アメリカの貿易赤字と財政赤字である.貿易赤字が米国内の雇用を奪っているとして、対米貿易黒字国に対しては赤字是正策を求め、米国の財政問題に関しては同盟国の安全保障費用の負担増を求めているのである.

特に米国への輸出が突出している中国に対しては、貿易バランスへの是正や他の多くの要求を迫って制裁関税をかけたのである.又、米国の安全保障にかかわる理由で中国製通信機器の輸入規制や中国の独裁統治を助けるSNS等の輸出制限をかけているのである.

ところで、トランプ米大統領の『アメリカファースト』による『対外政策』について、当ブログで、次の事を発信していた

①貿易赤字と経済、雇用との関係を精査する必要がある事
②二国間交渉であっても、世界のサプライチェーンが大きな影響が出る事
③二国間交渉ではなく、自由貿易の経済圏を作る事が重要である事
④独裁国家(中国)による【経済・技術・軍事】の世界制覇を阻止する事

①②③に関しては、すでに、NAFT(北アメリカ貿易協定)は破棄され、カナダ、メキシコは二国間交渉を終わっているのである.これによって、①は精査されることなく、②は予想通り、世界のサプライチェーンが混乱し、③はNAFTと言う自由経済圏が一つ消えたのである.

日本とは2019年に貿易問題、安全保障費用問題を交渉する予定になっているのだが、TPPとヨウーロッパとのEPAをベースにして米国と交渉する事になりそうである.尚、安全保障費用問題に関しては、常に米国と調整しているテーマであり,新たな問題ではない.

むしろ、日本の安全保障守備範囲の拡大を要請されるかもしれないのである.そうなれば、日本は米国との個別的集団自衛活動の延長で対応する事になるのか、それとも、他国との集団的自衛活動をせざるを得なくなるのか、勿論、その場合は、憲法改正が必要になると思うが.いづれにせよ、憲法問題は今後、避けて通れないのである.お金の問題より、この問題の方が重要になるのである.

一番大きな課題は④である.

ペンス米副大統領の演説によれば、米国は貿易問題だけではなく、

知財権の問題、国家資本主義経済の問題、人権や報道の自由の問題、信仰の自由の問題、ウイグル・内モンゴル・チベットの自治区弾圧の問題、後進国へのトラップ融資の問題(権益拡大の問題)、米国国内における中国人の工作活動の問題、トランプ大統領支持企業に対する中国の輸入関税引きあげの問題、米国学会への圧力の問題、インド・太平洋の海域の問題、等々,

について約100項目ほどの要求を出していると言う.

この演説が意図している事は,米国と友好な関係を築く為に中国の改革・解放を望むとしつつ、独裁国家中国による、経済・技術・軍事の世界制覇を許さないと言う事だと思う.米国はじめ先進国も同じだと思う.独裁国家が世界を制覇する事など,あってはならないからである.

米国としては日中戦争で蒋介石の国民党を応援したにもかかわらず、毛沢東の共産党による独裁国家になってしまった事、そののち、劉正平の改革開放政策を応援し、民主的な自由経済国家への転換を押し進める為に、WTO加盟や企業進出などで、応援したのだが,結果的には、独裁国家のまま、世界第二位の経済大国にまで大きくなった事、を踏まえて、今回の米中激突は、中国の民主化と自由経済国家に向けた、三度目の取り組みになるとの意識があると思う.

一方、独裁国家中国の力を抑制する政策は各国の対中輸出や対中企業進出にマイナスとなり、先行き不安定と言う事もあって,世界の株価下落や世界経済の減速が始まっているのである.

そこで、各国は、これから、共産党独裁国家(中国)の覇権拡大の阻止を優先するのか、背に腹は代えられないとして,中国に対する経済活動を優先するのか、究極の選択が求められると思うのである.特に日本の政府、企業は大きな岐路に立つ事になると思う.

米国としては、中国が独裁国家から民主・自由経済国家に向かうまで激突を続けるのか、ソ連の崩壊のようになるまで、続けるのか、それとも、ある条件が合意できるまで続けるのか、今の所、全く見えていないのである.米国は中国の回答を来春までとしているが、先ずは中国の出方待ちと言ったところである.

2.サイバーを使った秘密工作・攻撃の拡大

情報社会が進展する裏で、サイバー(cyber:コンピュータネットワーク空間)を使って相手国の仕組みを麻痺させたり、誤動作させたり、あるいは、誤情報を流したり、秘密情報を取得したり、する事が、現実的な問題になってきている.

現に,サイバー部隊が各国で編成され、サイバーを使った攻撃システムやサイバーセキュリティシステムの開発が行われていると言うのである.その実力はアメリカ、中國、ロシア、イスラエル,北朝鮮がトップ5だと言うのである.

このサイバーを使った攻撃は大量破壊兵器や武器の攻撃とは、全く違うのである.

・被害が発生しても、意図的なサイバー攻撃であったかどうか、分かりづらい
・攻撃のしくみはソフトで作られ、ウイルスと同じように、あらゆる機器に侵入出来る
・サイバー攻撃は社会の仕組みを混乱させるために行われる.
・通常の機能を攻撃に使う事が出来る
・従来の大量破壊兵器ほど開発や保有に費用がかからない
・目に見えないだけに、抑止力、交渉力にならない可能性が高い

上記1で触れた米国が中国製通信機器を輸入制限した理由も、中国のサイバー攻撃を防ぐ為である.同時に、5G世代の通信システムへの中国製機器の普及を阻止する狙いもある.

サイバー攻撃の特徴である通常の機器、機能を使った例と、サイバー技術を使った従来の武力の大変化の例をげておきたい.

宇宙ゴミ(3万個)への衝突防止や宇宙ゴミの焼却機能は現在でも行われている技術だが、その技術を使って、相手国の衛星を破壊する事も考えられるのである.そんな事が実行されたら社会は大混乱に陥るのである.GPS衛星が使えなくなった事を想像しただけでも、ぞっとするのである.勿論、サイバー攻撃を想定した衛星の安全保障は大きな課題になっているのである.

次に、サイバー技術や自動運転技術を使って、ミサイルの精度の飛躍的向上はすでに実現しているが、今度は、戦闘機の無人化、小型化、大量の編隊化が可能になり、軍隊の規模も縮小される.映画やゲームで見られるようなサイバー戦争のシーンが現実の姿になるのである.

そんなわけで、『サイバーによる攻撃力』によって、従来の重厚長大の大量破壊兵器は不要になるかも知れないのである.

ところで、日本のサイバー部隊は自衛隊内で組織されているようだが、サイバーを使った秘密工作や攻撃、或は、サイバー防衛は日本国憲法の武力・交戦権の放棄と、どの様な関係になるのか、又、政府機関がサイバー攻撃を行う時、どんな行政手続きになるのか、更に、民間団体・企業、個人が他国にサイバー攻撃をかけた時、どの法律で、誰が取り締まるのか、等々、念の為、はっきりさせておく必要があると思う.

以上、二つの大きな課題を述べたが、トランプ米大統領の『アメリカファースト』の視点で世の中を見た時、とんでもない大きな課題を発見し、それを明るみに出して、政治課題にした感じがするのである.

まさにパンドラの箱を開けたのである.パンドラの箱には多くの災いのカードが詰まっているが、最後の一枚は希望というカードだと言う.『.パンドラの箱を開ける』と言う意味は、災いを明るみに出せば、乗り越えられると言う意味だと言う.だとしたら『災い転じて福となす』と同じである.もしかすると、災いを全て明るみに出すだけで、災いは起こしずらくなる、と言う意味もあるのかも知れない.

今,世界は、パンドラの箱にあった米中激突の問題とサイバー攻撃の問題を目の当たりにしたのである.米中激突の問題は中国の民主化、自由経済化の方向に、サイバー攻撃の問題は簡単ではないが、国際機関の設置やサイバーセキュリティの抜本的対応に向かって欲しいと思うのである.

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2018.12.09

502 角栄政治の回想と当時の外交問題への対応

今、日本は米国との間で貿易摩擦問題や安全保障問題があり、米中対立の中で、中国への対応問題もある.又、ロシアとは、北方領土問題がクローズアップされている.更に、韓国問題、北朝鮮問題もあり、難題が山済みになっているのである

そこで、多くの書物になっている田中角栄を改めて回想し,今、課題になっている中国、米国、ロシアに、どう対応して来たか、調べて見たのである

1.田中角栄が政治家になった理由と政治活動の概略

政治田中角栄は新潟で毎年起る、豪雪、豪雨、洪水にる自然災害への苦しみ、出稼ぎや子供の集団就職、産業の少ない極貧生活、遅れている社会資本整備を目の当たりにして、『年寄りも、孫も、一緒に楽しく暮らせる社会』を作りたいと、若くしいて政治の道に入ったのである.

角栄氏の支援団体’越山会’の’越山’は上杉謙信の’越山’(越後山脈を越えて行われた関東出兵を指す言葉)から来ていると言う説や、角栄氏の豪雪の壁、越後山脈を乗り越える、との志、から来ていと言う説がある.

(新潟の事は当ブログNO106 新潟を語る(07・07・18)で紹介.)
(下図はクリックで拡大)

Photo_2
田中角栄氏の主な経歴は次の通りである.

1934年(16歳) 尋常小学校高等科卒業後上京、仕事と夜間学校(土木関係)
1937年(19歳) 共栄建設事務所設立
1938年(20歳) 応召(北満州)
1941年(23歳) 肺炎で北満州から送還、除隊後、田中建築事務所開設
1942年(24歳) 田中土建工業株設立、年間施行実績全国50位以内を達成
1945年(27歳) 朝鮮で事業展開、終戦を迎え、帰国、新進党に300万円献金
1946年(28歳) 新進党より立候補するが落選(豪雪対策を公約)
1947年(29歳) 民主党から立候補し当選、石炭鉱業管理法案で離党

1948年(30歳) 民主自由党結成に参画、第二次吉田内閣発足、政務次官就任
1950年(32歳) 建築士法案提出、一級建築士資格取得
1953年(35歳) 中央工学校の校長に就任(1972年退任)
1954年(36歳) 自由党副幹事長に就任
1957年(39歳) 第二次岸内閣の郵政相に就任
1961年(43歳) 自民党政務調査会長に就任
1962年(44歳) 第二次池田内閣で大蔵大臣に就任
1964年(46歳) 東京オリンピック、
1964年(46歳) 佐藤内閣発足、大蔵大臣継続
1965年(47歳) 大蔵大臣辞任、幹事長に就任
1966年(48歳) 幹事長辞任、自民党都市政策調査会長に就任
1968年(50歳) 都市政策大綱が総務会で承認、自民党幹事長に復帰
1970年(52歳) 大阪万博
1971年(53歳) 幹事長辞任、通産相に就任、日米繊維交渉を決着
1972年(54歳) 日本列島改造論を発表、第64代内閣総理大臣に就任
1972年(54歳) ハワイでニクソン大統領と会談、北京で日中国交正常化に合意
1973年(55歳) 日ソ共同声明発表
1974年(56歳) 金権問題の追及、三木内閣発足
1976年(58歳) ロキード事件表面化、外為法違反の疑いで逮捕、トップ当選
1976年(58歳) 福田内閣発足
1978年(60歳) 大平内閣発足、角影内閣と揶揄、鄧小平氏が目白邸訪問
1979年(61歳) 総選挙でトップ当選
1980年(62歳) 大平主相急死、鈴木内閣発足、総選挙でトップ当選
1982年(64歳) 上越新幹線開通、中曽根内閣発足、田中曽根内閣と揶揄
1983年(65歳) ロッキード事件で有罪判決、総選挙トップ当選
1985年(67歳) 脳梗塞に倒れる
1986年(68歳) 総選挙トップ当選、任期中登院できず
1987年(69歳) 竹下内閣発足
1989年(71歳) 政界引退、勤続43年、当選16回
1992年(74歳) 江沢民総書記が目白邸訪問、日中国交回復20周年で訪中
1993年(75歳) お国入り、脳梗塞後遺症の顏をゆがめて嗚咽、村民に感謝
1993年(75歳) 12月16日 死去

田中角栄氏は民主党から初当選したばかりであったが、民主自由党結成に参画して、吉田政権を支えた.この事が評価された.そして、官僚や学者の多い吉田学校に土建屋上がりの角栄氏がその末席に加わったのである.そこで、池田、佐藤の懐に飛び込み、知識や、仕事の仕方や、人脈を学んだのである.

以来、池田の推薦で岸内閣の郵政相(39歳)、その後、池田内閣の大蔵大臣(44歳),自民党幹事長(47歳),佐藤内閣の通産相、の要職に就任し、池田・佐藤各政権の屋台骨を支え続け、54歳で日本列島改造論を携えて総理大臣に上り詰めたのである.

角栄氏はこの政治の中心で、所得倍増計画や日本列島改造計画等を推進したのである.同時に、懸案になっていた、対米繊維交渉、日中国交正常化、日ソ首脳会談(北方領土問題)にも、必死に取り組んだのである.

内政の具体的な取り組みは、治水・利水・土地改良事業、交通網の整備事業(高速道路、新幹線、港湾、空港)、公共住宅の整備事業、等である.そして、これらを速やかに実施する為に、公団(道路公団、鉄建公団、.住宅公団)や北海道開発庁、沖縄開発庁を設置し、国主導で展開したのである.又、財源としてガソリン税、車両税なども新設したのである.更に、民放テレビの自由化や原発の地方展開なども推進したのである.

これらの活動によって、又、東京オリンピックや大阪万博の開催も相まって、日本は高度成長路線を走り始め、戦後の貧しい生活環境も、公団住宅や家電ブームによって,一変して行ったのである.

その『決断と実行』ぶりは、『コンピュータ付きブルドウーザー』と揶揄され、国民からは、『今太閤』と呼ばれたのである.

2.角栄氏は当時の外交問題にどう対応していたのか.

現在、まさに問題になっている貿易摩擦問題、安全保障問題、日中国交正常化問題、北方領土問題について、当時、田中角栄氏はどう考え、対応していたか、振り返ってみたい

①貿易摩擦問題

佐藤総理が田中角栄を通産大臣に起用したのは、3年越しの、こじれに、こじれていた日米繊維交渉に決着をつける為である.この交渉は日本経済摩擦の最初の大きな火の手と言うべきものであった.

高度成長を加速させてきた日本が、いくつかのが産業分野でアメリカに追い付き、追い越そうとしている現実の反映でもあった.佐藤総理としては、この問題が佐藤が政治生命をかけて来た沖縄返還交渉に影響が出る事を心配し、その決着を田中角栄の剛腕に託したのである.

佐藤の期待通り、田中角栄大臣は持ちまえの才覚とエネルギー、迫力でアメリカと四つに組み、わずか3か月で妥協させてしまったのである

田中角栄の腹としては、沖縄を返してもらうなら繊維問題で譲っても良いと考えていたと言う.繊維産業は明治以来の日本の得意産業であるが、いづれ、韓国や台湾、フィリピン、インドネシアなどの低賃金国の追い上げで、経済摩擦が起こると見ていた.

田中角栄大臣は交渉に当たって、早期に決着する事が大事と考え、佐藤総理に外務、大蔵、通産の三つの職務を執行する事と、2千3百億円の譲歩に伴う救済資金の了解を得て、交渉に臨んだのである.

そもそも角栄大臣は貿易自由化、経済自由化の何たるかを身をもって知っていた.輸出が多くなれば、輸入も増やさないと、必ず貿易不均衡で揉める事になると考えていたのである.

もし、お互いが関税や輸入制限で国内産業を保護しようとすると、経済は縮小均衡に向かってしまい、.国内も高い物を買う事になる.これは貿易自由化、経済自由化に逆行する事になると考えていたのである.

従って、日本に対し、繊維の輸出に応じて農産物や畜産物の輸入を増やせ、増やさなければ、繊維の輸入制限をする、との主張があれば、輸入を増やさざるを得ないと考えていたのである.

勿論、受けるにあたっては本当に農業や畜産業がつぶれるのか,輸入品に打ち勝つ産業の改革は出来るのか、一次産業と二次産業を連動させて付加価値を高めれられないのか、或は、輸入品を船上で加工して、輸出できないか、といった事をいろいろ思考し,その救済予算も考えていたのである.

角栄氏は原油タンカーが空になったら、日本の水を積んで原油国に帰せばよい、そうすれば、世界に向けた水産業が出来る、と言った柔軟な発想の持ち主である.

一方、交渉で角栄氏は我々日本は自由貿易の原理をアメリカから学んだ.確かに、日本は対米貿易は黒字でも、産油国には赤字だ.繊維だけ取り上げて輸出を問題視するのは自由貿易の原理原則に反すると迫っていたのである.

しかしアメリカはやすやすとこれを認めるどころか、日本に対して,一方的な輸入制限をする構えを見せていたのである.これに対し、角栄は交渉の潮時と見て、持論通り、農産品や畜産品の関税を引き下げる事で早期に決着したのである.

これは私見だが、トランプ大統領は現在、対米貿易黒字国に貿易均衡を求めているが、この交渉は角栄氏の言うように日本の輸出を減らすのではなく、国内産業の救済策を準備して、輸入を増やす事が必要だと思う.

一方、トランプ大統領もそうだが、どの国も、貿易赤字が悪い事かどうか、しっかり精査する必要がある.物量だけで、短絡的に均衡を求める事は避けなければならないのである.又,貿易問題は独裁国家中国と他の民主国家と分けて議論する必要があると思うのである.

②安全保障問題

角栄氏は防衛に関する職にはついていないが、一貫して防衛問題は最大の政治テーマとして重視していた.角栄氏は基本的には防衛力増強論者である.同時に日米一体化論者でもある.単純な再軍備論者ではない.

角栄氏は『日本の憲法改正・再軍備による日米共同防衛体制作りはアメリカが日本に提起するしかない』との考え方をしていた.要するにアメリカが日本に押し付けた憲法が日本国民に深く根付き、軽々に動かせないと考えていたのである.

又、憲法を盾に、自分のなすべきこともせず、しかも、安全保障費負担も低い状態で、自動車を洪水のようにアメリカに輸出していれば、アメリカが不満を言うのは当たり前だとも思っていたのである.

さらに,角栄氏は、その内、アメリカは日本憲法の制約がある事を承知の上で、日本自身が日本のエネルギールートの海上の面倒を見てくれと言ってくるかもしれないと感じていたのである.

そんな認識の上で、角栄氏は日本としては、憲法の許すぎりぎりの範囲で安全保障の活動をしなければならないし、応分の費用負担は必要だと考えていたのである.

北京で周恩来総理と日中国交正常化を話し合った時『日本は軍隊を作らないのか』と聞かれた.角栄総理は『作るつもりは全くない』と答えると、『本当か』と再度、確認してきたが『ない』ときっぱり言った後、『しかし、あんた方が北朝鮮あたりを後押して、日本の独立が侵される恐れが出た時、分からない』と付け加えたと言うのである.


角栄氏は軍事力については積極的に技術開発をすべきだと考えていた..防衛力の強化、効率化のみならず、民生品への波及効果もあるからである.

又、各国の平和な環境づくりにも、積極的に取り組むべきだとも主張している.暮らしを切り詰めても、途上国の支援をすべきだとの主張である.例えば、インフラのみならず、世界各地に大量の仮設住宅を提供する事などは経済的にも意義があると言っていたのである.

困っている国に積極的に協力する事は田中角栄の政治信念なのである

③日中国交正常化問題

日中をやると決断したのは政権の座に就く5ケ月前だという.猪突猛進の様な角栄氏だが、日中をやるチャンスを秘かに狙っていたのである.

この決断はニクソン大統領が2月、電撃的に中国訪問で米中共存を軸にした新しい秩序に向かう兆しを感じた時だと言う.

毛沢東、周恩来は死線を何十回も超えて来た創業者だから、彼らが目の黒いうちに、しかも自分が一番強い時に、一気にやればできると考え、総理になった直後に、北京に乗り込み、日中国交正常化交渉を成功させたのである.

その後、日中平和条約の締結がもたつき、6年ほど時間を要したのだが、電光石火の正常化交渉は見事だったのである

中国は当時、10年に及ぶ文化大革命の混乱のなかで、劉正平主導による経済の近代化、安定的な国造りに苦労していた.そんな背景のなかで、周恩来を本当の政治家だと見て、周恩来氏との交渉に臨んだのである.

ニクソン大統領の右腕のキッシンジャーも周恩来を『世界で最も傑出した三人の政治指導者の一人』と評しているのである.

周恩来との会談は本根で語り合ったと言う.蒋介石の評価、台湾問題、社会主義の問題、自由経済の導入問題、等々が率直に語り合ったと言う.最大のテーマは賠償問題であるが.周恩来と田中角栄の本根の語り合いが通じ合い、最終的には中国は日本への賠償請求を放棄したのである.

最初、日本の条約局長から双方の実務者レベルの会談で『日中間の賠償問題は日本と連合国が講和を結んだときにすべて解決済みである』と述べたと言う.即刻、中国は国外退去を命じたと言う.

翌日、田中角栄総理はは周恩来に『お供に帰れと言う事は、私も帰れと言う事か』と糺したと言う.周恩来は『そういうことは全くない』と言下に否定し、続けて、戦争中の中国人が殺された内容を延々と話し始めたと言うのである.

周恩来の言い分を全て聞いたうえで、田中総理は『だから私がこうして北京に来たのだ』と切り返したのである.周恩来は以後、深追いをしなかったと言う.

次に田中総理は隣同士の親子代々が何十年も争って口も利かない状態の時、その息子と娘が『結婚したい、反対なら家出する』と言い出した時、『すべて水に流して・・・』と言いかけた.とき、周恩来は田中総理の気持ちを察し、話を止めたと言う.

田中総理は話題を変えて、『中国の工業化、インフラ建設、民生の安定化、自由と民主主義を享受できる体制作り』等々に協力したいと提案したと言う.

共同声明に一筋の道筋が見えて来た時、周恩来は田中総理を毛沢東主席の所に連れて行った.毛沢東主席は『もう喧嘩はおわりましたか、けんかもしなければ取引は成立しませんからね』と言ったと言う

かくして田中総理は困難な交渉をまとめ、パンダのお土産を持って帰国したのである.田中総理は『中国は世界最古・最大の文化を持ち、ソ連の様な20世紀の振興国家とは全然違うものを持っている』と感想を述べている.

周恩来も田中角栄と本根で話し合えたのは、事前に角栄の政治への志と政治活動を知って、相通じるものを感じたからだと思う.

④北方領土問題 

田中総理は総理就任の一年後、モスクワ・クレムリン宮殿でソ連のドン、ブレジネス書記長と会談し、『北方四島返還は戦後未解決の問題だ』と食い下がり、『ダーダー』と言わせたのである.そして、『日ソ共同声明』は日本外交史上、特筆すべき成果を上げたのである.

敗戦の日本に日ソ不可侵条約を破棄し参戦、満州の何十万人と言う兵士をシベリアに抑留し、極寒の中で強制労働を強いたり、サンフランシスコ講和条約に参加していないソ連が千島列島や北方4島に進軍して領土を奪ったり、日本人のソ連に対する許せない感情は薄まることはない状態が続いていたのである.

そんな感情を背に、田中総理は『日本人の故郷を返せ』と率直に迫ったのである.更に、『文書にしないと聞かないのなら、紙とペンを持って来い』と言ったと言う.更に共同声明の文言に『北方四島の固有名詞を明示しなければ、共同声明は出さない』と迫ったのである.

結局、『日ソ間には戦後なお未解決の問題が残されている』となり、北方四島の文字も入れられなかったが、問題があると認めさせたのである.

そしてブレジネス書記長に対し、『北方領土の返還があって初めて日ソ間に友好な関係が始まる』と強調したのである.

この時、田中総理は内心、ソ連が奪った領土を簡単に返すわけがない、シベリア開発(天然資源開発と輸入)の見返りに故郷を取り戻すしかない、と考えていた.

大局的にはソ連がアメリカや中国を相手に喧嘩を売ることはないとした上で,日本としては独立自尊の精神を失わず、善隣友好、互恵平等、平和共存の原則で相手と末永く、おだやかに、交際する、との基本的考え方を持っていたのである.

以上、①②③④は現在でも直面している問題だが、46年前に田中首相は現在にも通じる考え方で対応していたのである.

誤算と言えば、アメリカはじめ先進国も同じだが、中国の問題である.当時、劉正平氏が主導していた改革開放政策が中国の民主化、自由経済化を進めるものと考え、支援をしてきたのだが、実際は、共産党独裁国家のまま、巨大な経済大国になった事である.

3.田中角栄の政治への志や覚悟を感じられる名言

角栄氏の名言は多く発表されているが、その中で、政治家角栄らしい名言を挙げてみた.

・陳情には必ず返事を出す、希望通りでなくとも、これはマナーだ

・必要なのは学歴ではなく、学問だ、.学歴は過去、学問は現在に生きる

・良い政治というものは国民の片隅にある、吹き過ぎて行く風で良い

・人の悪口は言うな、一人で便所で言え、自分への悪口は気にすな

・カネを渡す時、頭を下げて渡せ、くれてやると思ったら、それは死にガネだ

・雪は小説のようなロマンではない、俺にとっては生活との闘いだ

・人から受けた恩を忘れるな、相手が困った時、慎み深く返してやる

・自分の言葉で全力で話せ、聞く耳を持ってくれる

・自分の物差しではなく、相手の物差しで考えないと失敗する

・敵と味方の間に多くの人がいる.その人達に理解して貰うことが大事だ


・葬儀の供花は二回届ける.二回目には新しい花に代えてくださいとメッセージを付けて届ける.供花がしおれる頃、しみじみと悲しくなるからだ(冠婚より葬祭を大事にしろと言った時の言葉)

・すまん、その事は、私は知らなかった、知らなければならない、少し待って欲しい、必ず返事をする(宮城まりこ氏がねむの木養護学園の事を陳情に行った時の言葉、後日、陳情を実現)

・ばあさん,息子はきっと帰ってくるよ、達者でな(家出した息子を連れて帰ってきて欲しいと言ってきたばあちゃんの前で、警察庁長官に電話したあと言った言葉、玄関で履物をそろえて送り出したと言う、秘書がやり過ぎだと言った時、だめもとで俺のところに来たと思うが、ばあちゃんの必死の気持ちに答えたかったのだと言う)

・何もしなければ叱る声も出ない、私の人気が悪くなったら、田中が仕事をしていると思っていただきたい(街頭演説で言った言葉)

・政治家の本来の姿は自ら立法し、政治・政策の方向性を示す事だ(自ら60本の議員立法を出し実現)

・10人の子供に羊かんを配る時、優しい人は均等に切って配る.俺は一番小さい子に一番大きい羊かんを渡す.大きい子には、我慢しろと言えるからだ(役人、人権論者と政治家の違いを言った時の言葉)

・トンネルを作るなら、何万人の利用者が必要だと考えるのが官僚だ、利用者が150人でも欠かせないものは作る、それが政治だ(山古志村60戸の集落で、昭和10年頃、村民が4年をかけて手掘りした小さなトンネルを見て、政治の不行き届きを侘び、命を救うために、車も通れる、10億のトンネルの作成を決断した時の言葉)

・相手を立てなくなるまでやっつければ敵方の遺恨は残る、土俵際に追い詰めても、土俵の外に押し出す必要はない

・人間は誰しも、できそこないだ、しかしそのできそこないを愛せなければ政治家は務まらない、そこに政治家の原点がある

・東京で道路に倒れたら救急車がすぐ来る、北海道の山奥で倒れたらクマに襲われる、しかし住民税は同じだ、この地域格差をなくそうと思いませんか(街頭演説で)

・ご馳走はいらない、イワシ、シャケ、おにぎり、稲荷寿司、具だくさんの味噌汁、で十分だ(目白御殿詣に来た多くの政治家、新潟の父親の葬儀に来た多くの政治家、を迎える準備をしていた人に言った言葉、角栄氏自身の好物でもあったのだが、虚飾なしの方が皆に喜ばれたと言う)

・総理大臣がなんぼ偉かろうが、そんなことは関係ない,人の恩を忘れるな(汗だくの角栄の顔がテレビに大写しになった時、ハンカチでブラウン管を拭きながら言った極貧の生活を支えた老母の言葉)

4.角栄氏の魅力

全体を通して、角栄氏の魅力は『嘘っぽくなく、率直で、分かりやい』ところにあると思う.それは独特の話術からではなく、『困った人を助けねばならない』『相手の物差しで話さなければならない』と常に思っている所から来ていると思うのである.

『分かりやすいが嘘っぽい』政治家が多く見受けられるが、それは、あまり勉強していなかったり、思想という眼鏡で話していたり、都合の悪い事を話さなかったり、都合の良い事しか話さなかったり、事実を都合よく歪曲したり、相手を攻撃する事が目的であったり、自分をかっこよく見せたかったり、しているからである.

その人達は『分かりやすく言うほど、嘘っぽさが増す』のである.また、自分の言動が間違っていても訂正しない人でもある.

そんな政治家が多い中で、田中角栄氏の実直さ、素朴さに満ちた言葉に、全く嘘っぽさが感じられないどころか、納得するのである.角栄氏の演説に聞き入る人が多いのは当然だと思う.

知識人の中に田中角栄氏を『政治権力拡大に向けた金権政治家』あるいは、稀代の『天才』と言う人がいるが、表面的な評価だと思う.

私の感じでは、田中角栄氏は『おい飯食ったか』と、あいさつ代わりに言う『おやじ』、困っている人に、居ても立っても居られなくなる、せっかちな『おやじ』である.そんな角栄氏が政治家と言う『親方』になったのである. 勿論、過去に例のない『稀代の親方』である.庶民政治家と言う人もいるが、そんなヤワではない.情に厚く、頑強な親方である.

又、田中角栄氏の性格に『気前良さ』がある.世話になっている人、お世話になる人、苦労している人、お金が必要な人に対し、分け隔てなく気前が良いのである.この気前良さは『農民集落の互助精神』から来ていると思う.決して、『計算ずくの気前良さ』ではないと思うのである.

最後に、角栄氏が好んだと言われる、同郷の良寛禅師の辞世の句を紹介しておきたい.

『裏を見せ、表も見せて、散る落ち葉』

晩年,自分の人生に悔いなしと言っていた心境を、この句に重ねていたのだと思う.又、角栄氏は多くの色紙を残しているが、その中の一枚

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  『末ついに 海となるべき山水も しばし 木の葉の 下くぐるなり』 

角栄氏自身の心境か、あるいは、若者への激励か、いづれにしても、分かりやすく、説得力のある句だと思う.

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2018.11.10

501 米中貿易戦争の本質と米国中間選挙

当ブログNO498 「米中貿易戦争の行く末」 を発信しているが、改めて米中貿易戦争について、中間選挙の結果も踏まえて整理してみた.

まず、この問題に至る経緯を振り返ってみたい.

米国はドル高を容認しながら、大衆商品は輸入、高付加価値商品は輸出、との考えで産業政策を進めて来た.大衆商品を輸入して経済を発展させ、その国に米国の高付加価値商品を輸出すると言うシナリオである.

一方、中国は2001年のWTO(世界貿易機構)加盟以来、中国の貿易額は8倍に拡大した.これは、世界から部品を輸入して中国で安い労働力で組み立てて輸出する、或は中国に外国企業を誘致(合弁会社)して輸出すると言うスキームで実現したのである.かくて、MADE IN CHAINA が世界に広がって行ったのである.

中国に世界に製造業が集結したり、留学生や研究者が米国等で学ぶ事が多
くなったのだが、同時に、先進国の知的財産も中国に流れて行ったのである.又、中國は知財保護の意識が低い事もあって、模倣や技術の盗用が横行し,問題になっているのである.

そして、中国は世界第二位の経済大国になった.現在の経済規模(GDP)は第一位の米国で19兆3600億ドル(一人当たり59500ドル)、2位の中国は11兆9400憶ドル(一人当たり16600ドル)、3位の日本は4兆8840憶ドル(一人当たり42700ドル)である.中国は10%の成長(近年は7%前後)で世界の経済を牽引しているのである.

米国の貿易を見ると、2017年は0.8兆ドルの貿易赤字にっている.とりわけ対中貿易では、武器輸出が無い事,中国への委託生産が多い事で、0.34兆ドルの貿易赤字になっているのである.

又、アメリカは連邦公債残高8兆ドル(州債務残高は含まず)である.その返済はすでに国防費を圧迫しつつあると言う.(現在の予想では2023年に利払い費が国防費を超えると言う)その債務の海外最大保有国が7%を持っている中国だと言う.中国は,輸出の見返りで、米国債を引き受けていたのかも知れない.

安全保障関係で言えば、アメリカの国防費がアメリカの財政(2016年の国家予算は3兆8930憶ドル)を圧迫している事から、安全保障費の公平な負担を西側各国に要請せざるを得ない状態になっているのである.

ちなみに2016年のアメリカの国防費は6110億ドル、中国は2150憶ドル、ロシアは692憶ドル、日本は461億ドルである.

この貿易赤字、軍事費用の問題に対し、トランプ大統領は公平化によってアメリカの国益を取り戻すと決意し、「アメリカンファースト」を宣言.大統領選に勝利したのである.

早速、トランプ大統領は、貿易赤字が米国の雇用を奪っているとして,対米貿易黒字国に対し、輸入関税の引き上げ、米国内への企業進出や投資、米国製の輸入拡大、を迫っているのである.

すでにNAFT(北米貿易協定)を破棄し、カナダ、メキシコとの個別交渉で新たな貿易ルールを実現しているのである.又、アメリカ軍駐留の国々に対し、安全保障費用の負担増を迫っているのである.

更に、トランプ大統領は、この「アメリカンファースト」を旗印に、国境壁問題、不法移民問題、イスラム系の入国問題、イランや北朝鮮の核開発問題と経済制裁、オバマケアー廃止を含む社会保障問題、大幅減税の実施、インフラ投資の拡大、等々にも着手したのである.

一方で、対米貿易黒字国への輸入関税引き上げに関しては政治介入による露骨な保護貿易政策であり、自由貿易化の方向に逆行する、又、特定国の製品に関税をかけても、米国としては輸入相手国が変わるだけになったり、製品の価格が上昇したり、世界のサプライチェーンを混乱させたりする事から、国内外から、反対する声もある.

NAFT(北米貿易協定)を廃止し、カナダ、メキシコと二国間貿易協定を結んだ事で言えば、二国間協定であるにもかかわらず、カナダやメキシコ経由でアメリカに輸出される製品や部品がドミノ倒しのように他国に影響を及ぼすのである.二国間協定が世界経済の動脈瘤になるかもしれないのである.

又、安全保障費用の公平化に対し、縮小公平になれば、アメリカの覇権が弱体化し、反米勢力の覇権を強めるのではないかとの意見もある.いずれにせよ、この要請によって、西側各国の防衛力の見直しが起こる事は避けられないのである.

この状況の中で、特に最大の貿易赤字国である中国に対しトランプ大統領は、貿易赤字問題のみならず、近年の下記の様な、中国の権益・覇権拡大に対し、これを阻止すべく、強硬な交渉を始めているのである.

・先端技術立国への取り組みと世界への覇権拡大(中国製造2025年宣言)
・一帯一路政策、南沙諸島・東シナ海への進出による中国権益の拡大
・アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立等、債権による覇権拡大
・市場開放と輸入拡大による経済的覇権拡大(上海輸入博覧会宣言)

問題の多い独裁国家が世界の権益や覇権を握る事は許されない、許してはいけないと、トランプ大統領は独裁国家中国の根本的な問題に火をつけたのである.

その問題とは、国家資本主義の問題、金融自由化の問題、技術流出の問題,知財権の問題、人権の問題、言論統制の問題、等、独裁国家をゆるがす様な問題である.

ペンス米副大統領も,知的財産の盗用から軍事的野心、宗教弾圧まで中国と対決しなければならないと表明しているのである.この事は、政府、国防省、.国防総省も共通認識だと言う.

米外交評議会も戦後の米中関係は、対立、接近に続き、中国の経済発展を支援し,国際秩序に取り組もうとした第三の時代は終わったと位置づけている.

民主党も中国は米国の知的財産権を盗み続ける真の敵国だと、対中政策ではトランプ大統領を支持すると言い切っているのだと言う.

この様に米中衝突は貿易摩擦から技術覇権や安全保障にも戦線が広がっているのである.

この事態になったのは、アメリカはじめ先進国に二つの誤算があったからだと思う.

一つ目は、日中戦争でアメリカは蒋介石(国民党)を支援していたのだが、国民党国家にならず、毛沢東の共産党独裁国家になった事である.

二つ目の誤算は、アメリカはじめ先進国が、中国が経済発展すれば共産党独裁国家が崩壊し、民主国家になると考え、経済発展を支援した事である.現実は経済発展すれど、共産党独裁国家が崩れるどころか、世界第二位の経済大国になり、世界に覇権を拡大する独裁国家になったのである.

それだけに、今度の米中衝突は、独裁国家の覇権を許さないと言う厳しい目でアメリカは臨んでいるのである.そして、
アメリカは現在、制裁的高関税あるいは安全保障から見た輸出規制を人質に、中国の対応を待っているのである.

そんな中、トランプ大統領の追及を交わす狙いか、習近平国家主席は11月5日の上海で開催された「輸入博」で,市場開放によって、中国は今後、15年間で40兆ドル(年間2.7兆ドル)になる輸入拡大を宣言したのである.

この「輸入博」に170ケ国、3600社が出展したそうだが、米国からも、日本、韓国に次ぐ180社が出展した.そして、40万人の来場者を予想していると言う.

< 中国は、これまでの輸出拡大に加えて、今度は、巨大な市場を餌に、市場開放による輸入拡大を宣言したのである.これで、世界とwin-winの関係を強め、対アメリカとの貿易バランスをとり、アメリカとのバトルを収束させたいと思ったのかもしれない.

しかし、市場開放(物販、サービス、金融の自由化)によって輸入を増やすと言っても、信憑性が薄いのである.独裁国家体制と市場開放とは矛盾した関係にあるからである.

市場開放とは共産党の恣意的な管理・コントロール経済から、市場や資本で動く経済になる事を意味しているからである.中国は当然、独裁政治体制を堅持すれば、必然的に、市場開放は極めて限定的にならざるを得ないのである.

市場開放が独裁政治体制を崩していく事を、知ってか知らずか、習近平国家主席は、アメリカの保護主義を批判する自由貿易国に同調して、市場開放で輸入を増やすと言ってしまった感じがするのである.

アメリカは、この発言を盾に、本当に市場開放、とりわけ金融自由化を強く迫り、独裁政治体制の弱体化を図ると思うのである.

更に言えば、世界の企業に対し、一見、「政経分離国家」「自由主義経済国家」の様な印象を与えているが、歴然とした独裁国家であり、「政経一体国家」「管理経済国家」のチャイナリスクは変わらないのである.

また、技術移転や安全保障の問題で輸出規制が行われる可能性もあり、市場があるからという理由だけで、中国への輸出や中国への投資や企業進出が増えるわけではないのである.

いずれにしても、独裁国家の力を弱めたいアメリカとしては、習近平国家主席の市場開放による輸入拡大宣言で、戦いを収束させるとは思えないのである.安易に収束すれば、独裁政治による世界への覇権獲得に利する事になりかねないからである.

今年の輸入博覧会への各国の対応は控えめであったと言う.市場開放の信憑性や米中の衝突が影響していると思う.

一方、アメリカはじめ先進国の中国への圧力で、中国の経済が減速すれば、世界の企業の業績や株価が落ちると言う.中国経済は世界の経済と深く繋がっている現実もある.

同じ様に、アメリカのイランへの経済制裁(イラン製原油の輸入禁止)によって全体の原油価格が上がると、世界の経済への影響もさることながら、最大原油輸入国の中国の経済への影響で、企業の業績や株価が落ちる事が予想されるのだが、これも、同じ構図である.

従って、アメリカとしては、圧力を優先するか、世界の企業業績や株価を優先するか、のさじ加減が悩ましくなるのである.

ところで、北朝鮮も、イランも、中国も、制裁中だが、制裁をかけながら交渉をする「トランプ流デール」は今後も増えそうである.しかし、このやり方は戦争と同じように、「やるは簡単、やめるは難し」である.それはそれでトランプ流を心配しているのである.

以上、アメリカンファーストの取り組み状況を整理したが、いくつか私見を述べてみたい.

①先進国に対するアメリカンファーストの問題について.

アメリカンファーストのターゲットは独裁国家中国に絞るべきだと思う.先進国はアメリカと多面的で密接な関係にあり、なんでもアメリカン ファーストで片付けれれないし、特に先進国に制裁的高関税をかける事は世界のサプライチェーンを敵に回す事になるのである.強引にやれば、アメリカとの間に亀裂が生じ、中国やロシアが喜ぶだけになるのである.

従って、アメリカと先進諸国との貿易問題は一定のルールの下で、政治介入は極力避け、企業活動に任せるべきだと思う.もし貿易赤字で雇用に悪影響があれば、自国製品を強くするか、輸入製品を利用して事業拡大を考えれば良いのである.

自由経済の原則で経済成長ができる様に、又、中国の経済的覇権拡大を防ぐ為にも、自由貿易経済圏の形成が必要であり、日本としては、アメリカのTPPへの加入を引き続き提案すべきだと思うのである.

②すでに、日本との個別交渉(TAG)が予定されている事について.

日本の貿易黒字の中心である車について、トランプ大統領は事実誤認があるようだが、それ程、アメリカ車が日本車に負ける事が許されないのだと思う.

しかし、現在は、そんな感情的な議論をしている場合ではなく、すでに次世代の車の安全運転、自動運転,AV車、などの激しい覇権争いが始まっているのである.勿論、「中国製造2025年」の中核になる技術開発の競争もある.この戦い如何で、次世代の車の世界勢力図が変わるのである.

そこで、トランプ大統領の車へのプライドの強さに乗じて、TAGでは、次世代の車の覇権競争に勝つ為の戦略的協力関係を提案すべきだと思うのである.

③日本の安全保障の費用負担問題について

日本との安全保障費用の公平化に関しては、アメリカの軍事費用が必ずしも日本の為だけではない事から、公平化を数字だけで測ることは困難である.しかしながら、この費用問題は日本としてはアメリカと常に交渉し双方納得した形で了解しているのである.

それよりも、中国、北朝鮮、ロシア及び極東アジアの安定の為に、アメリカと日本にとって、集団的自衛体制の有り方、日本国憲法9条の在り方、が深刻な問題だと思うのである.

又、中国の東南アジアへの海洋進出を懸念して、日本、アメリカ、オーストラリア、インドを中核とする「インド太平洋構想」(法の支配、市場経済、自由な航海などの価値観を共有し地域の安全性確保、同地域ヘのインフラ整備投資)が検討されているが、ここでも、日本国憲法第9条が問題になると思われるのである.

④アメリカの圧力による悩ましき問題について

中国問題に関して、日本はアメリカの圧力に賛同する反面、アメリカの中国への圧力(高関税や輸出規制、或は中国からの企業撤退)で中国の経済成長が下がれば、日本の対中外交や日本全体の景気も悪化する可能性がある.

さて、「圧力を優先するのか、企業や株価を優先するのか」、アメリカはじめ他国と同じように、日本も悩む事になる.「損得より理念」を優先したいところだが、日本はどうすべきなのだろうか.その動向を注力していきたい.

アメリカの上院、下院の中間選挙(11月7日)の結果について.


上院では共和党51議席、民主党45議席、下院では共和党199議席、民主党222議席となり、大統領制によくあるネジレ状態になった.

下院で過半数を失った共和党の敗因はいろんな説があると思うが、トランプ大統領の政策より性格・品格が原因で、女性やマイノリティの立候補者が多い民主党に、若者層、女性層の票が流れた感じである(87名の女性が当選)

トランプ大統領は新議員の任期が始まる来年1月以降、予算や法案の可決には野党・民主党の協力が必要になり、アメリカンファーストの公約実現が危ぶまれる事が予想されるが、トランプ大統領は2年後の大統領選を視野に政策転換を行わず、対決姿勢をさらに強めるのではないか、思われる.

トランプ大統領の強硬な取り組みに対し、民主党及び支持者は「国内外を分断している」と非難しているが、「分断した」のではなく、「もともと、くすぶっていた問題に火をつけた」感じがする事から政策転換はないと思うのである.

民主党としては、民主党政権時代の無策ぶりを指摘しているトランプ大統領に対案を出す事は無策を認める事になり、「分断している」と言わざるを得ないのかもしれない.しかし、トランプ大統領の政策の良し悪しがあるとしても、火をつけた問題は現実の問題であり、民主党も、正面から取り組むべきだと思うのである.

選挙結果による日本への影響だが、トランプ大統領は選挙前より強硬になると思われる.トランプ大統領は次期大統領選が気になって、結論を急ぐかもしれないが、じっくり交渉すべきだと思う.「窮すれば通ず」と言う事もある.

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2018.09.30

498 米中貿易戦争の行く末

米国の物の貿易収支はは2017年で87兆円の赤字である.トランプ大統領は,この赤字が米国の雇用を奪っているとして,米国内への海外企業誘致、輸入関税の引き上げを大統領選で表明していた.

この表明は従来の米国の政策とは真逆である.従来、米国はドル高を容認しながら、大衆商品は輸入、高付加価値商品は輸出、との考えで産業政策を進めて来たのである.

又、貿易収支より経常収支を重視し、企業の海外進出も積極的に展開して来たのである.この傾向の中で、IT製品などの高付加価値製品を海外で生産し,逆輸入を許容しながら、世界市場を制覇して来たのである.

しかし、この米国の歴史を知ってか、知らずか、トランプ大統領は大口輸出国に対し、輸入関税引き上げ、米国への企業誘致のみならず,貿易量の上限数値設定(WTO違反)や全保障費用も絡めた広範な二国間交渉(FTA)を仕掛けているのである.

その中で、38兆円と言う、けた違いに貿易赤字が多い中国と激しいバトルが世界中を震撼させている.

米国はすでに、品目を指定して、関税を引き上げているが、中国の対応次第では、全輸入品目に適用するとして、妥協する姿勢を全く見せていないのである.

当然、中国にサプライチェーン体制を作っている米国の多国籍企業の反発に対しても、中国からの撤退をすべきとしてか、無視しているのである.

勿論、そんな事にでもなれば、中國のみならず、米国民も増税を負担する事になるが、中国以外から輸入ができるとして、影響は限定的だと言う人もいる.

このバトルの中で、トランプ大統領の保護主義に対し、各先進国はそれを批判し、自由貿易主義を唱えている.驚く事に、これに中国が同調しているのである.

この同調は最もナショナリズム丸出しの保護主義的な共産党独裁国家が自らそれを否定している事になる.トランプ大統領への先進国の批判に思わず同調して、勇み足を踏んでしまった感じである.

この中国の勇み足に乗じて、米国は当然、かねてからの下記の問題を解決する為に、輸入関税の引き上げを人質に、中国自身が次の事を解消すべきだと迫ると思う.

①著作権や最新技術漏洩の問題
②人権や言論の自由化の問題
③チャイナリスクの問題(愛国無罪、不買運動、中國国内法、等)
④資本制限の問題(資本自由化の実現)

この中で、『資本自由化』は共産党独裁国家の崩壊につながる『キラー政策』だと思う.

『資本の自由化』とは金融・保険業含めた100%外資系企業の進出が可能になる事、現在の合弁会社(中国系資本50%以上)の資本金の制限が撤廃される事、を意味し、論理的には、企業が『中国共産党の支配』から、『資本の支配』に変わる事になる.

現在、中国には約1億人の共産党員がいると言う.その共産党員は政府機関、議会議員、役人は勿論、国営企業、合弁企業、民間企業、にも入っているのである.この共産党が政府を構成し、立法、行政、司法、及び、経済、を制御しているのである.

このように、中国は13.7億人を約1億人の共産党員で統治している一党独裁国家なのである.中国国民と政治との距離感が遠いと言われるのはうなずけるのである.

この共産党に入り、出世していく事が、中国人の出世街道と言われている.しかし,共産党員は選挙ではなく、思想や科挙のような厳しい学力の審査で選ばれる.その共産党員の中で,出世した者が政治・行政を司ると言う仕組みになっている.この様な構造で、13.7億人を統治しているのである.

国民の意思で政治が行われるのではなく、共産党員の意思でもなく、共産党員の幹部の意思で、政治が行われているのだが、この独裁政治形態は中国の有史以来、変わっていないのである.

輸入関税引き上げは、中國の経済力をそぐ為、上記のような問題を解決する人質にする為に行われていると思う.特に、『資本自由化』は米国の最大の目的である中国の政治・経済・技術・安全保障における中国覇権主義を阻止する突破口になる戦略だと思うのである.

中国が先進諸国の主張に思わず同調した事で,自らの首を絞める事になったのである.もしかすると、中国が自由貿易に同調するように仕向ける為に、トランプ大統領が無茶な保護主義丸出しの輸入関税の引き上げを行っているとしたら、トランプ大統領は大変な策士である.この観点も含めて、今後の米中貿易戦争に注力していきたい.


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2018.08.01

494 毎日新聞社が行った世論調査結果の感想

一般に、世論調査は聞き方によって、或は,答える人の経験・知識、判断の視点,或は感情によっても、答えが変わってくる.

それ程、世論調査結果の評価は難しいのだが、意図的な誘導質問が無く、一定の母集団があれば,支持する、しないと言った大枠の評価ができるとされている.人気投票的評価に似ているのである.

そこで、新聞社が行う世論調査は世論の大枠の評価を聞く為に行われていると思うのだが、もし、アンケート結果を印象操作や世論の誘導に使う為に意図的に調査したものであれば、当然、その結果を鵜呑みには出来ないのである.

特に日本のマスコミは新聞社の子会社がテレビ局であり、印象操作や世論の誘導がしやすい構造になっているだけに、この事が気になるのである.

ところで、新聞社の世論調査結果は何時も、自分の評価と差があって、自分の評価がずれているのか、新聞社の世論調査結果がずれているのか、しっくりこない感じを持っているのである.

そこで、7月30日、毎日新聞,TBSテレビが発表した通常国会終了に際して行った世論調査の内容を調べて見る事にした.特に気にした事は、アンケート結果だけではなく,質問の内容である.難しい政治の問題にどんな質問をしているのだろうか,意図的に答えを誘導するような内容があるのだろうか、である.

まず、毎日新聞・TBSテレビが報じた記事の概要は次の通りである.
赤字は強調している記事

1.参院定数6議席増の改正公職選挙法に評価しないが 67%、評価するが18%、支持政党なしの人では71%、自民党支持者でも60%が評価しないと回答

2.
統合型リゾート(IR)実施法に評価しないが 65%、評価するが20%

3.安倍内閣の支持率が37%、不支持が44%(前回より4%増)

4.西日本豪雨への政府対応で十分ではないが68%、十分だが20%、自民党支持層でも54%が十分でないと回答

5.政党の支持率は自民30%、立憲10%、共産4%、公明2%、維新2%、民主1%、無党派層42%

6.森友、加計問題で政府説明に納得していないが 75%、納得が14%、世論の疑念が解消されていない.安倍首相に責任があるが 61%、責任がないが26%

7.今後の死刑制度の維持が59%、廃止が10%、分からないが22%

8.次期自民党総裁にふさわしい人、安倍22%、石破、小泉が19%、いないが21%、自民党支持層では安倍50%、小泉15%、石破14%

9.安倍首相の日朝首脳会談への意欲に対し、対話路線を評価するが65%、評価しないが22%

10.憲法改正発議に対し、急ぐ必要なしが57%、急ぐべきが26%にとどまった

この様に、毎日新聞の世論調査の結果は不自然なほど『反安倍一色』である.日頃の毎日新聞の反安倍報道が世論調査に影響を与えた結果なのか、世論の評価と毎日新聞の反安倍報道がたまたま一致した結果なのか,分からない.

只、毎日新聞は我々の言っている通りの結果になった、あるいは、我々の日頃の報道が世論を誘導した結果だ、と喜んでいる様子が記事から感じるのである.

そこで、どんな質問をした結果なのだろうか.新聞に載っている主な質問と私の感想を述べたい.(電話によるRDS法で調査、1049人が回答、回答率は固定電話で62%、携帯電話で79%)

①安倍内閣を支持しますか
・支持する(37%)
・支持しない(44%)

②支持する人はその理由はなんですか
・自民党の首相だから(13%)
・阿倍さんを評価しているから(21%)
・他に良い人や政党がないから(49%)

③支持しない人はその理由は何ですか
・自民党の首相だから(5%)
・安倍さんを評価していないから(48%)
・政策に期待が出来ないから(35%)
・他の人や政党の方が良いから(9%)

④西日本を中心とする豪雨で、死者が200人を超える深刻な被害が出ています.被災地での救助や復旧など、政府の対応は十分だと思いますか.
・十分だ(20%)
・十分ではない(68%)

⑤森友学園、加計学園の問題が大きな焦点になった通常国会が閉会しました.安倍首相や政府のこれまでの説明に納得していますか
・納得している(14%)
・納得していない(75%)

⑥上記問題で安倍首相に責任があると思いますか
・責任がある(61%)
・責任がない(26%)

⑦米朝首脳会談に続き,安倍首相は日朝会談の実現に意欲を示しています.日本政府が北朝鮮との対話路線を取る事を評価しますか
・評価する(65%)
・評価しない(22%)

⑧オウム真理教の死刑囚の13人が死刑執行されました.海外では死刑制度を廃止した国が多くなっています.日本の死刑制度を、どうした方が良い考えますか.
・続けた方が良い(59%)
・廃止した方が良い(10%)
・分からない(22%)

⑨カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法を与党が野党の反対を押し切って成立させました.この法律を評価しますか.
・評価する(20%)
・評価しない(65%)

⑩参議院の定数を6議席増やす改正公職選挙法が成立しました.1票の格差の是正や合区の対象県の候補者を比例代表で救済することが狙いです.この法改正を評価しますか.
・評価する(18%)
・評価しない(67%)

⑪今年の秋に自民党の総裁選が実施されます.次の総裁に誰がふさわしいと思いますか.

安倍さん(22%)、・石破さん(19%)、岸田さん(2%)、小泉さん(19%)、河野さん(2%)、野田聖子さん(3%)、他にいない(21%)自民党支持層では安倍50%、小泉15%、石破14%

⑫憲法を改正するには国会が改憲案を発議して、国民投票にかける必要があります.国会が改憲案の発議を急ぐべきだと思いますか
・急ぐべきだ(26%)
・急ぐ必要がない(57%)

この毎日新聞の世論調査結果について感想を述べたい.

1.質問項目(評価項目)の設定に疑問

第196回通常国会(1月22日~7月22日)では、私の理解で言えば、平成29年度補正予算、平成30年度予算や重要な法案を含めて,58本の法案の成立、又、活発な外交活動、経済・株価・雇用・賃金の上昇、及び、度重なる自然災害への予算を含めた対応、等々が行われたのだが、この中から、どのような基準で質問項目(評価項目)を絞っているのだろうか.

「評価しない」という答えを得る事が目的で、新聞社が日頃、反対している法案、もしくは、世論の反対が多そうな法案を質問に挙げているのだろうか.だとすると、安倍批判が目的の世論調査と言う事になる.新聞記事の見出しなどを見ると、そう感じるのである.

質問(評価項目)の選定はこの種のアンケートでは極めて難しい問題だが、是非、評価項目の設定基準を知りたいものである.これは各新聞社の世論調査にも言える事だが.

2.答えの選択肢に疑問

通常、無理な答えを求めない事から、回答の選択肢は「賛成、反対、わからない」の三択になる.賛成、反対の2択にするのは、『わからない』を反対票にしたい意図を感じるのである.多分、『分からない』を選択肢に加えると、反対が少なくなると考えての事だと疑いたくなる.質問回答の選択肢は3択が必要だと思う.(④⑤⑥⑦⑨⑩⑫)

3.評価の理由の選択肢に疑問

理由を3択から選ぶ形を取っているが、はたして、理由を3つに絞る事が出来るのだろうか.何か理由を誘導している感じを受ける.理由を尋ねる場合は率直に意見を聞くべきだと思う.母集団が多いわけではないのだから.

4.誘導質問が潜んでいる

・⑦の対話路線の意味が不明、制裁解除に向けた世論の誘導か
・⑨の野党の反対を押し切って・・・」は評価せずへの誘導か
・⑫の憲法改正内容を示さないこの質問は改憲議論を遠ざける世論誘導か.
・毎日新聞の世論調査そのものが「反安倍」への世論誘導か.

以上,率直な感想を述べたが、思想と言う眼鏡をかけたニュースあるいは世論調査には、くれぐれもご用心と改めて思ったのである.いやそんな事は当たり前で、いまさら言う事ではないのかもしれないが.


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2018.07.23

493 疑念の多い『ふるさと納税』の近況と今後

2018年7月23日、日本経済新聞で『ふるさと納税 曲がり角』と題して、地方への応援寄付の趣旨が守られているのか、と問題提起がされた.

記事の要約は次の通りである.

総務大臣通達で返礼の見直しや使い道の明確化などの動きが広がったが、豪華な返礼を続けた自治体が額を延ばしている.

本当に寄付額が地域活性化につながっているのか、本当に、寄付者は地方の活性化の為に寄付をしているのか、と言う問題提起である

受入額のトップ20の自治体の状況は下図の通りである.

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ふるさと納税制度は、『ふるさとを応援する為の寄付行為』と,『寄付金を税額控除(所得控除ではない)する制度』で構成されているのだが、.この制度を利用して、自治体は返礼品を用意して寄付を募っているのである.

このふるさと納税制度の実態は次のように要約される.


・寄付金が税控除された上に返礼品がもらえるとして寄付金が増加している
・自治体間の返礼品競争が過熱している
・居住自治体の税控除の半分程度が返礼品に使われている

2017年の数字で言えば全国で3653億円のふるさと納税額があり、その40%程度(1400億円)が返礼品に使われている事になる.従って、ふるさと納税者が1400億円を丸儲けした、言い方を変えると、寄付者が返礼品金額分1400億円が減税された事を意味するのである.

実際の寄付金募集活動は次のようになっているのである.

①自治体が寄付金募集サイトで200品目程の返礼品と、それぞれに必要な寄付金額を表示しているのだが、まるでショッピングサイトである.そして、返礼率競争を自治体間で競っているのである.

②企業サイトでは、例えば自社製のお節料理が返礼品として認定された自治体ごとに、紹介している.利用者はこの中から好みの商品を選び、該当の自治体を決めるのである.

③返礼品サイトで多くの企業のお節料理を検索し、その中から商品を選び、該当の自治体が決まるのである.勿論、返礼品には価格ではなく、寄付金が表示されているのである.寄付する自治体を決めるより、お節料理を決める事が先になっているのである.

今や、高額納税者は2000円で高額な商品が手に入るのだから、通常の商品代金で商品を買う事が少なくなり、企業は全国の自治体から返礼品認定商品に指定される事を拡販活動にしているのである.

このふるさと納税制度につては、すでに疑念を発信していた.

  393 ふるさと納税制度の法的、政策的、疑念(2015年4月5日)

問題点を改めて要約すると次の通りである.

・寄付金は税額控除され上に寄付金に応じた返礼品がタダでもらえる事
・従って、タダの返礼品は寄付をしない納税者と不公平になる事
・又、高額な納税者程、高額な返礼品がもらえ不公平になる事
・そもそも、返礼品付き寄付金を税控除することは税法違反である事
・自治体間で移動した税金を返礼品に使う事は税法違反である事
・役所が返礼品を約束して寄付を募るのは贈収賄である事

・返礼品は民業を圧迫する事
 

この『ふるさと納税制度』を正しくするには、返礼品を自粛ではなく、禁止するか、返礼品相当額を税控除から外すか、或は、返礼品付き寄付金は税控除を不可とする事である.その上で、ふるさと納税の本来の姿に戻すべきだと思う.

元来、納税者の判断で納税先の選択が出来る様にする為に居住自治体の税を控除して、寄付と言う形で税を移動する制度を作ったのだが、これを利用して、移動された税金を使って、返礼品による寄付の募集が始まり、上記のような問題を惹起するに至ったのである.

これは当初から予想出来た事だが、まさに、’大義の悪用’あるいは’大義を利用した違法行為’だと思うのである.歴史的にも、規制緩和があらぬ方向に行く例はあるが、自治体が主体で、こんな事をしている例は初めてである.

追伸(2018年9月14日)
 

現在の状況に対し、総務省は,ふるさと納税の趣旨を徹底する為に、返礼品率を30%以下に、返礼品は地元.特産品に、と言う要請を出した.

これに対し、本日の朝日放送モーニングショーで、返礼品の競争で返戻品率が高くなっても、地方の財源が増えるのだから、問題はない、との論調を展開していた.
 

残念ながら上記(本文)のような、問題意識はなく、ふるさと納税制度に無知な人か、ふるさと納税で多額の利益を得ている人か、あるいは、何かにつけて政治家や役人に反論したい人の論調のように聞こえたのである. 

そもそも、番組出演者は例えば10万円を寄付した時、98000円が税控除された上に2000円の負担だけで,4万円相当(返礼率40%)の商品(返礼品)がもらえる事、実質4万円の減税になり、課税が不公平になる事、民間ビジネスを妨害している事、等に疑問を抱かないのだろうか.

たしか、以前にも、この番組で、問題意識のない論調を振り撒いていたが、思考の浅さに驚くばかりである.番組の意見を是非、聞きたいものである.

 

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