政治

2018.05.18

489  続米国大統領のDEAL(北朝鮮問題)

前回のトランプ流DEALの読み解き記事(NO488)で,触れていなかった北朝鮮問題のDEALについて述べてみたい.

現在、国際社会では、国連決議に基づいて、北朝鮮への経済制裁が行われているのだが、最近の韓国、米国、北朝鮮の動きを追ってみた.

1.韓国、北朝鮮の宥和ムードの盛り上げ

①韓国大統領の宥和・太陽政策の展開
  (平昌オリンピックへの招待、統一チームの編成、双方の文化交流,)
②南北首脳会談の実施(板門店宣言・敵対的行為の中止)
③世界卓球選手権試合で急遽、南北統一チームを編成
(韓国vs北朝鮮の対決を避ける為)

宥和の盛り上がりを演出したが、今まさに問題となっている、肝心の、朝鮮戦争(240万人の犠牲者)の総括問題、朝鮮戦争の終戦問題、北朝鮮の非核化(弾道ミサイル含む)問題、経済制裁問題、朝鮮半島および極東アジアの安全保障問題、は全く見えていないだけに、宥和ムードの盛り上げに、違和感を感じ、空騒ぎをしているようにも見えたのである.

過去にも、左派系、親北の韓国大統領が宥和、太陽政策で同じような事を繰り返してきたが失敗に終わっている.それでも、繰り返すのは米国との同盟関係を切って,中立,もしくは、中国、北朝鮮の同盟国になりたいと願っているからなのだろうか.

この宥和ムードの中、かねて合意されていた米朝首脳会談は紆余曲折があった様だが,6月12日,シンガポールで開催される事に決まった.これに伴い、首脳会談に向けて、事前交渉や牽制合戦があわただしくなってきたのである.

2.米朝首脳会向けた事前交渉

①北朝鮮と中国の2回にわたる首脳会談
②米国ポンペイ国務長官(元CIA長官)の訪北による合意折衝

3.有利な交渉を目指した口撃合戦

トランプ大統領は宥和ムードを称賛しながらも、非核化が実現するまで、経済制裁は続けると、くり返し公言しつつ、首脳会談は成功するだろうと期待感も述べている.交渉では、お互いが期待感を持って臨む事が重要だとするトランプ流の考え方だと思う.

これに対し、北朝鮮は米国が一方的に非核化要求をするなら,首脳会談は出来ないと、米国要求を牽制した.又、予定されていた南北閣僚級会議も、米韓合同演習が実施されたことを理由に、当日、キャンセルして、揺さぶりをかけたのである.北朝鮮は宥和ムードを壊したのは米国、韓国の責任だと批判したのである.いつもの、自分は正、相手は悪と決めつけて、交渉を有利に進める戦法である.

何れにせよ,事前に双方の合意が出来なければ、首脳会談は出来ないのだが、開催された時、双方の主張が隔たったまま、玉虫色の合意で終わる可能性があるが,どちらかの主張にそって、合意する可能性はないと思う.

4.双方の基本的考え方の整理

ここで、改めて、双方の基本的な考え方を整理しておきたい.

・米国の主張(経済制裁解除を非核化のカード)
非核化が先、これが実施されなければ、経済制裁解除も経済支援もしない.米軍の韓国駐留は今や北朝鮮に対峙する役割だけではない事として,撤退はしない.

・北朝鮮の主張(非核化を経済支援のカード)
中国の考え方でもあるが、非核化は後.経済制裁解除、経済支援、韓国駐留米軍撤退、朝韓関係改善が先.

5.交渉カードの強さ比較

私見によれば、北朝鮮は軍事費が国家財政を圧迫している事から,ずるずると時間がたつ事は出来ないはずである.従って、早く、経済制裁解除が必要で、経済制裁の期間が長引くほど、非核化に追い込まれる可能性が高まるのである.

米国としては、北朝鮮が根を挙げるまで、粛々と経済制裁を続けるだけでよいのである.勿論、その間、暴発の監視強化が必要だが.

一方、北朝鮮は核開発を急いできた理由は非核化と経済支援、経済発展をトレードオフにしたいからだと思う.そこで、出来るだけ長期に核をカードとして使い,経済発展を進めたいと考えていると思う.

しかし、米国からすれば、経済支援をしても、核が残る危険性がある.この戦略に乗れば、過去の非核化合意の失敗を繰り返す事にもなる.

以上の事から、『経済制裁解除を非核化のカード』にしている方が交渉力としては強いと思う.国連決議を盾に『非核化が先』の交渉をすべきだと思う.

6.米朝首脳会談の結果予想と影響

トランプ大統領からすれば、今年の上,下院選挙の為にも、米国としての成果が求められる.そこで、米国にとっての成果と日本・極東アジアにとっての成果にギャップが出る事が懸念される.

トランプ大統領には、あくまでも、極東アジアの代表、或は、国連の代表としての立場で交渉に臨んで欲しいと思うのである.勿論、この姿勢は選挙にプラスに働くと思うのである.

北朝鮮にとっては、早期に、インフラ整備や中国やベトナムのような国家統制下の資本主義経済を築きたい、その為に、何としても、非核化をカードに経済制裁解除と経済支援を確約させたい.簡単には金のなる木の核を手放さないとの考えである.

そこで、開催された場合の結果について予想してみた.

予想1
・朝鮮戦争の終戦に同意する
・北朝鮮は2年間で非核化を実現する
・その後、経済制裁解除、経済支援、韓国駐留米軍の縮小を行う

予想2
・朝鮮戦争の終戦に同意する
・非核化を目標に具体的方法を決めるスキームを作る
・方法が決まるまで、経済制裁は続ける.

予想3
・朝鮮戦争の終戦に同意する
・非核化については決裂(経済制裁続行)

何れにせよ、米朝首脳会談の結果によっては、中露朝・米日韓の戦後体制が,どう変化するのか、それによる日本の安全保障問題、日本人の拉致問題、日朝基本条約と国交樹立問題(日韓基本条約相当)、がどうなって行くのか、極めて重要な時期を迎えているのである.

勿論,当事国の韓国は板門店宣言、宥和・太陽政策、安全保障を今後、どうするのか、と言う問題を抱える事になる. 何れにせよ、戦後の負の遺産が、どう改善に向けて前進するのか、米朝首脳会談が注目されるのである.

追伸(6月13日)


6月12日,予定通り米朝首脳会がシンガポールで開催された会談後の共同声明のポイントは次の通りである>(日経新聞より)

・米朝は新たな関係を構築
・米は北朝鮮の体制保障、北朝鮮は完全非核化への取り組みを約束
・永続的で安定した朝鮮半島の平和体制構築へ努力
・早期に米朝高官で継続交渉

トランプ大統領は今回の会談は、歴史的な意義のあったと誇示.しかし,声明内容は越同舟の玉虫色宣言であり、肝心な事(非核化の中身、経済制裁の扱い、終戦宣言、等)はすべて先送り(継続交渉)となったのである.

15年以来の6か国会議の声明(核放棄声明)や国連の決議(核、ミサイルの無力化)がどこかに行ってしまい,大きく後退した共同声明になったのである.落胆の感もあるが,変な合意がされなかった安堵感もある.

北朝鮮は

①米国と対等に会談が出来た事、
②宥和的な会談となり、経済制裁緩和の機運が盛り上がった事、
➂段階的な非核化と並行して,経済支援が受けられるとの感触を得た事、
④体制保障(敵対的関係を解除)出来た事、

等々によって,建国以来、強兵政策の下で、世界を騙しながら、核・ミサイルを開発して来た事が間違いではなかったと言う事になる.しかし,この核・ミサイル開発が金の木になるとすれば、多くの国で、核・ミサイルの開発や売買が広がる事に繋がりかねないのである.
中国,ロシアは今回の玉虫色の会談に対し、米国の北朝鮮への接近に危うさを感じつつ、韓国駐留軍の縮小化が出来れば、米国の影響力の縮小化、中國、ロシアの影響力の拡大が進むと評価していると思う.従って今後も、北朝鮮を使って米国と対峙していくと思う.

の様に、トランプ大統領のDEALはすべて今後の交渉次第になったのである.ひょっとすると、トランプ大統領は、非核化よりも、北朝鮮を中國、ロシアから切り離し,親米国、
同盟国にする事が究極的なDEALと考えているのかもしれない.もしそうであれば、交渉の後退ではなく、今回の会談はそのスタートになったと言えるのである.

いづれにせよ、『非核化後,経済制裁解除、経済支援』と『経済制裁解除・経済支援に応じた段階的非核化』の品筋の協議が行われる.この結着なしに、朝鮮戦争の終戦宣言も、経済制裁解除も、経済支援も議論できないのである.韓国の宥和政策,太陽政策も、勝手に動けないのである.

日本としては、中國の覇権主義問題、東アジアの安定化問題、日本の安全保障問題、拉致問題、国交正常化問題、経済支援問題、と等々抱えており、米国と連携して、トランプ大統領の名代として、これらの問題に采配を振るって欲しいものである.


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2018.03.22

488 米国大統領のDEALを読み解いてみた

近年,相対的に米国の強さが低下している中で、政治の経験のないトランプ大統領は、「米国第一主義」を宣言,これに米国国民は支持し、昨年、大統領に選出され、約一年が経過した.

この一年、これまでの民主党政権の政治や外交を、ことごとく非難し,乱暴とも思える政策を発信してきた.政治経験のない実業家ならではの単刀直入な言動で世界が振り回されている感もする.

このトランプ大統領の,ともすると事実誤認、論理矛盾、或は、軽薄ともとれる言動の裏に何があるのか、貿易赤字問題への発言を通して、実業家トランプ大統領の交渉の仕方とその内容(DEAL)を読み解いてみたい.

トランプ大統領は就任早々、国内の雇用問題に対し,莫大な貿易赤字をやり玉にあげ,輸入関税の引き上げを宣言した.早速、この宣言に対し、各国、経済学者、経営者は関税引き上げは関税報復の連鎖を生み、自由貿易や国際的なサプライチェーンを崩壊させ,結局、米国の雇用問題は解決しない、との非難の声を挙げたのである.欧州などは、報復関税をかけると対抗する意思を表明したのである.


一方、トランプ大統領は上記のような反論に答える事より、まず、国ごとの貿易不均衡を是正する為に個別交渉をしたい、と考えていると思う.しかも、トランプ大統領は実業家らしく 「交渉とは取引をする事だ」と考えており、貿易黒字国への要求内容をひそかに用意していると思うのである.

これを実行する為に、トランプ大統領自ら問題を提起し,各国を戦々恐々にさせた上で,個別交渉のテーブルにつかせようとしているのである.双方の役人が、事前に課題や交渉内容をすり合わせるやり方とは全く違うのである.又、このトランプ大統領の考え方からすれば交渉力を十分発揮できない多国間貿易交渉を嫌うのも当然なのである.

次に、トランプ大統領は思惑通り、個別交渉が行われるとして、どんな交渉カード(要求)を出すのだろうか.
れを推測する前に米国の伝統的な経済政策を見ておきたい.

米国の経済に関する伝統的考え方は、自由貿易の下で、付加価値の低い製品は輸入する、これによって輸出国の経済を成長させ、その国に、米国の高付加価値のハイテク商品や武器を輸出すると言う事であった.事実、この考え方で、米国の「産業構造の形成」と「強いドル政策」を進めてきたのである.

このスキームで,貿易赤字を解消するには、輸出の増加、外国企業の米国内への企業誘致、海外からの米国への投資が必要である.何よりも、国内の産業振興が重要である.この様に、米国の経済構造から見ると、貿易赤字対策として,輸入関税の引き上げは出てこないのである.

関税引き上げが出てくるのは、特定分野の産業保護策としてである.しかし、特定分野が農産物になる事はあっても、工業製品に適用することはあまりないのである.ましてや、グローバルなサプライチェーン製品に適用できないのである.

そこで、トランプ大統領の狙いは、単純に関税引き上げの事ではなく,特定品目の輸入制限、相手国の輸入関税の引き下げ,非関税障壁の排除、先端技術製品の輸出増、米国への投資や企業進出の増、相手国の安全保障費の負担増、或は米国の負担減、等ではないだろうか.

これを予想してか、個別交渉を始める前から,米国への投資、米国への企業誘致、軍事機器や旅客飛行機の購入、等々を表明している国や企業が現れている.米国との個別交渉を避けたいからだと思う.

トランプ大統領からすれば、「ハッタリ」で,すでに成果を上げている事になる.今後はトランプ流のFTA交渉(自由貿易交渉)が各国で始まると思う.トランプ大統領の批判ばかりしている場合ではないのである.

北朝鮮問題においても、トランプ大統領はあらゆる選択肢を匂わせて、DEALをやっているのだが、それだけに,北朝鮮も韓国も日本も、或は、米国国内も、トランプ大統領の発言に戦々恐々となるのである. 大統領だけが出来るDEALである.

さて、米国の貿易赤字の大半を占める中国への DEALはどんな内容になるのだろうか.

上記とは全く違う内容だと思うが、これを推測する前に、中国のこれまでの経済発展と今後の動向を簡単に触れておきたい.

まず、安さを求めて世界から、製造企業の工場進出やOEMやFMSの受託製造工場が中国に集中した.先進国には工場を持たない製造業も多く出現したのである. 米国も、貿易収支より経常収支を重視して、積極的に中国に投資と企業進出、或は製造委託を行ったのである.

そして、低コスト、大量生産で、中国の輸出が拡大,米国においても、大衆商品、家電からIT製品、鉄鋼、アルミなどの素材製品にまで、中国からの輸入品が多くなって行ったのである.この経済発展によって,中国は世界最大の市場規模になったのである.

そんな中国のGDPはすでに世界第二位となり、世界経済を支える程に大きくなったのだが、将来,米国を抜いて,世界第一位になる可能性もあると言われているのである.

しかし、米国にとっては、中国に軍事機器を輸出できない事も含めて,中国への輸出は増えず、貿易赤字は増える一方になって行ったのである.武器を輸出できない中国からの輸入を増やして来た事が米国の失敗だったとも言えるのである.結果、米国は中国の産業と経済を育て,中国のドル確保に貢献したのである.

一方、中国との貿易赤字が増えても、米国としては、IT製品に代表されるように、中国で安く大量に製造し、世界市場の制覇に貢献してきたメリットもある.

いずれにせよ、中国はすでに、世界経済と緊密につながっているのだが、今後、中国は国家戦略として、国産の最先端技術製品の開発やそのアーキテクチャーの世界標準化に取り組み、経済的にも、技術的にも、政治的にも、軍事的にも、中国の覇権を世界に広める事を目指すと思う.

こんな経緯と動向がある中国に、トランプ大統領は中国の鉄鋼,アルミ製品に大きな関税をかけると発表した.中国は即刻、貿易戦争も辞さずとの対抗姿勢をあらわにした.中国がもつ巨額の米国債を人質に米中経済戦争が起こるかもしれない.トランプ大統領の中国に対する個別交渉はどんな内容になるのだろうか.

上記の経緯、今後の中国の動向から見て、次のような事が戦われるのではないかと推測するのである.

米国内の素材製造業界の保護を目的に単に輸入関税を引き上げると言っているのではないと思う. 中国の国家戦略としての最先端技術・製品開発に対し、これまで警告を発していた知的財産権の侵害や技術移転の強要の問題,金融・資本の自由化の問題、世界最大市場をテコにした中国への異論封じの問題(輸入制限、進出企業への妨害、不買運動等)、思想,言論,報道の統制の問題、をなくせと言っているように思うのである.

この解決が図れなければ、制裁として、関税引き上げ、中国製品の輸入制限、中国への投資制限、或は、中国進出企業の撤退、を考えているのかもしれない.さらに言えば、北朝鮮問題にからめた制裁もあるかもしれない.これがトランプ大統領のDEALだと思う.


ここにもトランプ流のDEALを感じるのだが, 何れDEALの内容が明らかになると思うが、これと並行して、トランプ大統領にとって、重要な事があると感じている.

それは民主的な、第二、第三の経済大国を作る事である.一党独裁のチャイナリスクのある中国が世界を牛耳ることを許さない為にも、世界の経済発展のためにも、この事は重要だと思うのである.特に人口、数億人を超える国が発展途上であるだけに、この国々に期待したいのである.

その為の政策こそが、「米国第一主義」にかなう政策だと思うのである.トランプ大統領には「狭い保護主義」ではなく、「広い保護主義」を標榜し、大国の経営者として「Great Business Strategies」を策定して欲しいのである. 「狭い保護主義」は中国,ロシアの国家主義、覇権主義を助ける事になるだけではなく、「米国第一主義」言い換えると、「米国の国益」にもマイナスになるのである.この事は日本も勿論、自由主義経済圏の国々も同じだと思うのである.

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2018.02.25

485 働き方改革関連法案に関する私見

現在、働き方改革関連法案が国会で揉めている.そもそも、労働関連法案と言うものは法律で規定しようとする程、訳が分からなくなるのである.従って、法律が規定する事と民間に任せる事をしっか区別する事が重要となるのである.その視点で私見を述べたい.
現在、国会で議論されている働き方関連法案及び課題は下図
の通りである.

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特に20年程前に決まった裁量労働制は必ずしも正しく運用されているようにも思われないし、その上で、更に適応業務を広げようと言うのだから,国会で大議論になるのは当然かも知れない.

そもそも裁量労働制は残業代目当ての残業や仕事が遅い人の残業代を払わないようにしたい、そこで、みなし残業時間を設定して、これで残業代を支給したい、勿論,みなし時間以内であっても、もみなし残業代は支給する、言い方を変えると、みなし時間内で仕事を終えて欲しい、終える様に生産性を向上したい、との経営側の思惑で出来た法律である.

実施に当たっては、裁量労働者の業務内容の吟味(企画、専門家の仕事で裁量が出来る人),みなし残業時間を超える労働への対価の支払い,労働時間記録や管理の義務づけが必要なのである.

しかし,現実には、新人や若手が裁量労働者になったり、裁量が出来ない仕事にも適用されたり、適用可能業務を超えて裁量労働者が増えたり,裁量労働制とは無関係に「みなし残業制」を社内規定で作ったり、タイムカード廃止で超過残業代が支給されなかったり、仕事量の抑制がなく、サービス残業が増えたり、が聞こえて来るのである.

結果として、裁量労働制導入によって、経営的には売り上げが伸びて、残業代が増えず(経費や原価が増えず),利益が増えているのだろうか、従来の残業意識から、さっさと仕事を片付けて、速く帰る文化に変わったのだろうか、残業してでも成果を出したいとのモチベーションはどうなったのだろうか、裁量労働制の評価は定かではない感じがするのである.

一方、管理職は一定の裁量と権限を持っているとして、裁量労働制を待つまでもなく、裁量労働者である.勿論、タイムカードも、残業代もなく、その変わりか、管理職手当が支給される事が一般的である.

しかし、管理職は組合に入っていなくとも、法的には労働基準法の対象者である.従って、裁量労働制がない時代から、裁量労働が行われている事になる.従って,理職は法的には曖昧な存在になっているのである.「名ばかりの管理職」で苛酷なサービス残業が増えた問題も、これを象徴しているのである.

そんなわけで、いろんな働き方や考え方がある中で、一律に法律で規定すると,多様な働き方の実現や多国籍社員への対応,外資系企業の日本進出,に、そぐわなくなると思うのである.

法律の立場としては、最低限、守らなければならない事に絞り、民間には、情報化、自動化、国際化、に対応し、生産性や労働付加価値を高められる働き方改革をゆだねる姿勢が必要だと思うのである. (下図参照)

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日本においては、「人財をストックと考える日本的経営」と「人材をフローと考える欧米的経営」があり、それぞれの考え方にそって,社風とか,人事制度とか,働き方がある.

一方で、
情報化時代(ICT),自動化時代(AI),国際化時代(多国籍社員の増加,外資系企業の増加)に対し,古典的な労働時間制からの脱却、労働の量から質への転換が必要になっているのである.これらに呼応して,年功序列から能力主義、成果主義へ移る企業も多くなっているのである.勿論,時間で働く社員がいなくなるわけではないが.

そのような時代の社員の仕事は勤務場所や勤務時間の制約から解放され,仕事の合理化や自己研鑽によって、さらに労働の付加価値は高くなると思うのである.又,仕事と育児,介護との両立や女性の活躍の場も広がると思うのである.

この情報化、自動化、国際化に応じた人事制度改革、働き方改革は企業の戦略として、又、マネージメントの在り方として,上図にある様な検討が必要だと思うのである.その内容は企業によって多様化すると思うが、企業間で激しく競われる時代になると思うのである.

ずれにせよ,経営者にとっても、社員にとっても、重要なテーマであり,国頼みではなく、民間の取り組みが待たれるのである.

以上の如く,法律では,労働時間の上限や賃金の下限を決める事、働き方の多様化に応じた税制、社会保険制度を見直す事、とし,この法律の下で、民間では,積極的な人事制度改革、働き方改革に取り組むべきだと思うのである.

国会の働き方改革についての昨今の議論は「労使交渉の場」のような議論が多いように感じる.本来なら、それは国会の仕事ではなく,企業や社員が議論すべきだと思うのである.

近年、国がやる事と民間がやる事の仕分けがされておらず、なんでも、国が悪いとか、国がやるべきだ、とかの風潮が強まっているように感じる.今回の働き方改革も、同じ様に感じるのである.


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2017.10.02

480 今回の総選挙の重要な意味

総選挙は10月10日公示、22日投票と決まった.解散を契機に、保守系の希望の党が発足し,加えて、民進党が実質解体し,保守系とリベラル系に分裂する可能性があり、今回の総選挙は保守系とリベラル系の勢力図が明確に決まる選挙になる.

その結果、憲法問題や安保問題と言った基本的政策の方向が大きく変化する事になる.今回の解散総選挙に大儀がないと言われていたが、ここにきて、今後の日本の政治勢力図や基本政策の方向が決まると言う大きな意味が出てきたのである.

ところで当ブログ 『478 又か、民進党党首の「挙党体制宣言」』で述べた通り、前原新代表の挙党体制宣言に異論を述べた.やるべきことは挙党体制宣言ではなく、民進党の基本政策をしっかり作り、反対者を外して、新しい民進党を作る事だと指摘したのである.

ところが、はからずも、今回の解散で民進党のシャッフルが希望の党の出現で始まったのである.

第一弾:民進党が希望の党に合流する事を議員総会で決定.
第二弾;小池代表は合流ではなく政策,選挙区事情で選別すると宣言.
第三弾:民進党は三つに分裂模様(希望の党、無所属、リベラル新党).

それにしても、前原代表は想定外の事が起こったと言うのか、想定内だったと言うのか、本心はわからないが、もし、想定内だったと言う事なら、自分では出来ない民進党のシャッフルを希望の党でやってもらう為に、全員合流という話を民進党議員総会で了承させた事になる.だとすると、民進党議員を騙した事になる.民進党代表のまま、無所属で立候補するようだが,人間としての非難を浴びる可能性もある.

何れにせよ、前原党首みづからが行うべき民進党のシャッフルを、希望の党がシャッフルするような形になったのだが,私の指摘からすれば,結果オーライの動きが起こったのである.

立候補届け出は10月6日(金)がタイムリミットであり、,極めて短時間の中で、希望の党、発足しそうなリベラル新党、を含む各政党の立候補者、立候補者数、他党との選挙区調整、公約が出揃うと思う.各政党の選挙戦略も見えてくると思う.

これでいよいよ選挙戦が始まるが、希望の党に立候補者の大多数が民進党からの宗旨替え者だったとすると、.政策より数合わせに走った印象を与えたり、宗旨替え者の中に、本当かと疑問を持たれる候補者がいたりすれば、不信感が募って、希望の党への期待感がしぼみ、当選率が落ちる可能性がある.

又、保守系政党同士が選挙区で競合した時、基本政策が似通っている事から,希望の党立候補者が人物評価で落とされる事も想定される.何れにせよ、希望の党とリベラル新党の議席数が、政界の地図を塗り替える事になる.

そして、自民党が過半数を超えるかどうか、だけではなく,衆院の議席が保守系、リベラル系で,どの程度の議席数になるのか,大いに興味が湧くのである.憲法、安全保障等の基本的政策がどの程度、議会で共有されるのかが、わかるからである.

さらに言えば、もし、保守系政党の議席数が増えれば、建設的な政策論議が政党間で可能になるし、今後、基本政策を共有した保守系の二大政党が出来れば、政権交代が可能な政治体制が出来る事になるのである.(基本政策とは、憲法、天皇制、安全保障、市場経済、社会保障、等、日本の根幹にかかわる考え方を指している.)

これも持論になるが「基本政策を異にする二大政党化」(例えば保守系とリベラル系の二大政党化)は実現しないと思う.これを目指せば、いつも基本的な所でぶつかって、建設的な掘り下げた議論が出来なくなったり、たとえ,リベラル系が政権をとったとしても、大混乱が起こる事が想定され、結局、与党一党体制が続く事になるのである.

この事から、安定的な、建設的な、しかも、緊張感のある国会を作る為に、『基本政策を共有した政権交代可能な二大政党化』を望むのである.又、選挙に於いては、二大政党が競合した時、政策より人物が優先され、議員の質の向上も期待できることになるのである.

そこで私見では希望の党が基本政策を共有した政権交代可能な二大政党の一翼を担う政党に育つ事を期待したいのである..

しかし,いきなり政権を担う政党になることは無理だと思う.従って、数合わせではなく、しっかり政策を検討し、積み上げていく努力が必要だし、同時に政権、内閣を構成できる人材を持つ事も必要である.勿論、全国の支持基盤を作る事も必要である.この様に,政権担当能力を持つ事は簡単ではなく、時間が必要だと思うのである.

そんなわけで、希望の党は今回の選挙は謙虚であるべきだし、過半数を取ることより、比較第一党の議席数に迫る事がまず大事だと思うのである.従って、政権選択選挙だからと言って、政権を取りに行く、等と言うより、100議席を取りたい,と言った方が国民の信頼感は得られると思うのである.

特に民進党からの宗旨替え者が圧倒的多数であったり、宗旨替えの信憑性が疑われれば、結果は厳しくなると思うのである.そこで、今回の選挙は宗旨替えの理由、希望の党での決意をしっかり国民に説明するところから始まると思うのである.

又、小池都知事の去就については、今回、立候補せず、首都東京の多くの課題を解決する事が極めて重要であり、希望の党が政権を担う党になる為にも、この実績が必要だと思うのである.小池都知事においては,堂々と東京の実績を踏まえて、女性初の総理の道を歩めば良いと思うのである.小池知事自身もそう考えていると思うのだが.

一方自民党である.都議選のときも指摘したが、希望の党に対して、馬鹿にしたような、上から目線の批判が多い.新しい保守政党を作ろうと言うのだから、大局的な視点に立てば喜ばしく、激励すべきところである.

せめて、切磋琢磨して,日本の為に建設的な政策議論をしよう、くらいの事は言えないのだろうか.現在の自民党の態度では都知事選,都議会選の二の舞になりかねないのである.

そんな思いとは裏腹に、小池都知事に対し、国政に出なくても、出ても、結局、無責任だとか,(都知事を続け)出馬しないのは政権を取りに行く気がないからだとか、首班指名を誰にするのかわからないとか、連立政権を狙っているからだとか、(都知事を投げだして)出馬した方がわかりやすいとか、言う自民党議員もいる.

聞く方からすると、国の為、東京の為、の意識のない,都知事選、都議会選の惨敗の恨み、小池知事への嫉妬、都政の奪還狙い、あるいは、小池つぶし、からくる発言に聞こえるのである.マスコミも出馬の可能性があると騒ぐのは、番組をおもしろく引っ張りたいだけに見えるのである.

そもそも議院内閣制のもとでの.衆院選挙は必ずしも総理を選ぶ選挙ではなく、政党、議員を選ぶ選挙である.現に、議院内閣制の下で、衆院選挙を経ずに、総理は多く変わるのである.小池代表が出馬しないのはおかしい、と言う人はあなたがおかしいのである.あくまでも小池都知事の去就は都知事自身が決める事であり、それを評価するのは国民だと思うのである.

どうも自民党は強敵らしいものが出現したり、弱点を指摘された時の反応(リスクマネージメント)が下手だと思う.不遜ながら、デベート力を鍛えるべきだと思うのである.勿論、素晴らしい論客の方もいると思うが,総じて、稚拙で、短絡的で、大局観の欠落、を感じるのは私だけだろうか.

さて、小池都知事の去就については上述の通り、他党が我田引水で言うべき話ではないと思う.小池都知事は維新の党と同じように、都知事と希望の党の代表を担いながら、希望の党の代表代行を任命し,内部組織を作って行くことが自然だと思う.

以上、今回の選挙は大局的に見れば、今後の日本の政界勢力図(保守系、リベラル系の勢力)を決める選挙になり、同時に、重要政策の方向性や保守系二大政党の可能性も占う、重要な選挙になると思うのである.各党の選挙運動、選挙結果に注目していきたいと思う.

(補足:保守派とかリベラル派の意味について、私の理解を当ブログ『186 自民党崩壊と政治路線の行方』で記述している.ご参考までに)

追伸(10月7日土曜日)

希望の党のシャッフルによって、リベラル派(民進党左派)の新党・立憲民主党が発足した.結局、民進党は保守系、リベラル系、無所属に分裂したのである.もともとのごった煮政党が形の上ではシャッフルされたのである.そして、民進党は参議院だけの党になったのである.

前原氏は民進党の代表にとどまっているが,無所属で立候補すると言う.そして、持論の、野党共闘で打倒安倍政権を目指すと公言しているのである.そして、立憲民主党も応援したいと言う.前原氏は民進党の代表の立場だから言うのは自由だが、前原氏の言う野党共闘や立憲民主党の応援について希望の党が了解している様子はない.

又、国民から見ると野党連合政権で何をするのか全く不明である.安倍政権打倒と叫んでいるだけでは国民はこれに賛同するはずもない.

もし、自・公が過半数割れを起こせば、当然のことながら、自民党は希望の党、日本維新の会との連立を働きかけると思う.

前原氏は当選後、希望の党に入党し、民進党出身者と結託して、希望の党を乗っ取り、自民との連立に反対し、政策が違う立憲民主党との連立を組むことを考えると思が、そうなれば希望の党は分裂し、野党連合で過半数を確保することが困難になる.

何れにせよ、前原氏の野党連合で安倍政権打倒する、との主張は、言うのは勝手だが、どう考えても現実性が無いのである.民進党で出来なかったことを、希望の党を利用して実現しようとしても、希望の党の性格や民進党のシャッフルでその夢は消えているのである.

もし、前原民進党代表が民進党の分裂は表向きであって、裏では、希望の党や立憲民主党の民進党出身議員同士の結束や政策の一致は出来ると思っているなら、当選する為に分裂し事になり、前原氏、当選者への国民の信頼はなくなると思うである.当然、策に溺れた前原氏の政治生命は終わる.

追伸(10月24日火曜日朝)

7回TKO勝ちした村田諒太の世界ミドル級タイトル戦、今後の政界勢力図を占う衆議院選挙即日開票、大型台風21号の来襲で、眠れない一夜が明けた.

さて,選挙結果だが、24日朝の日経新聞より抜粋して記載しておきたい.

①2017年衆院選結果Photo ②特徴

当選者のうち、前職は377人、全体の81.1%、(前回より4%減)
・当選者のうち、元職は32人、全体の7%
・新人は56人、全体の12%(前回より3%増)
新人当選者の40%(23人)は立憲民主党、希望は16%(9人)
・女性当選者は47人、全体の10%(2009年の54人に次ぐ多さ)
・希望は46人の女性立候補者を立てるも当選は2人
・小選挙区で135948票で落選した人、59488票で当選した人あり

➂私の感想

これで明らかのように、定数が10議席減った中で、与党(自民,公明)が3分の2以上の議席を確保した.野党同士のつぶし合いも幸いしたと思う.党別の公示前議席との比較で言と、自民党は-6議席、立憲民主党は+40議席、希望の党は-7議席、公明党は-5議席、共産党は-9議席、維新の会は-3議席、無所属は-17議席、であり、立憲民主党の一人勝であった.

希望の党は、新党立ち上げ早々に、いきなり政権を目指すと公言し,200人を超える大量の立候補者を立てたが、公示前議席にも届かない50議席に終わった.その原因は懸念された問題ではあるが、党体制と政策の弱さ、民進党からの宗旨替え立候補者への不信であったと思う.

小池つぶしの政治家や多くのマスコミは、小池党首の排除発言を問題視してきたが、国民から見ると,問題どころか、ごった煮の民進党を分離させ、すっきりさせたと評価していると思う.

民進党議員全体が希望の党に入るとの民進党の満場一致の決定に対し,小池代表は希望の党の政策に賛同できない人は入党を断る(排除する)と発言した事はあたり前であり,それによって,ごった煮の民進党各議員の保守、リベラルの色分けが出来たと国民は評価していると思うからである.

民進党にとっても、元来、内部で解決すべき問題を小池代表によって、ごった煮状態から脱出できたのだから感謝すべきだと思うのである.それとも、民進党を分断したと怒っているのだろうか.そう思うなら,なぜ、希望の党に入ったのだろうか.

このように希望の党が一気に躍進できなかったのは上述のように、あらゆる面で、準備不足があったと思う.これに、小池つぶしの批判も加わったと思う.結果、多くの落選者を出してしまったが、新党のスタートで50議席(比例票968万票)の確保は上等だと思う.

この議席をもとに、希望の党は国政政党として,体制、政治理念,政策の議論をしっかりやる事から始める必要があると思う.その過程で、離脱者が出ても良いと思うのである.

一方、立憲民主党は小池代表の排除で出来た党であり、言うなれば、小池代表は産みの親である.したがって、新党と言うよりは、民進党のリベラル色の強い人達が集まった党であり、宗旨替えもない、民進党のこれまでの主張を変える事もない、民進党分離政党だと言えると思う.したがって、政策が賛同されたと言うより、リベラル志向者、共産党支持者、反自民の受け皿になって躍進したと思うのである.

今後、無所属議員の動向、参院民進党の動向、連立政権の枠組み、等で政界の勢力図は変化すると思うが、今回の選挙で、保守系政党(自民、公明、希望、維新)で374議席(80%)、リベラル系政党(立憲、共産、民社)で69議席(15%)、無所属22議席(5%)となり、新たな政界勢力図が出現したのである.

の勢力図で外交問題(安全保障,貿易,国際化,等)、憲法改定問題、2025年問題(社会保障問題)、経済活性化問題、財政問題、自然災害問題、等、前途多難な問題に対し、建設的な議論によって、解決の糸口を作って行って欲しいものである.

勿論、これらの問題は理想論を戦わせる程、余裕のある問題ではなくなっている.現実的にどうするのかと言う喫緊の問題になっているのである.予想される問題に目をそらして来たツケが今日の待ったなし状態を招いていると思うのだが、このまま地獄に落ちない為にも、政治家も国民も覚悟がを持った決断が必要だと思うのである.

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2017.09.25

479 北朝鮮問題の考察

北朝鮮問題とは,世襲独裁軍事国家の北朝鮮が核・ミサイルを所有する問題である.

北朝鮮は核・ミサイルの所有によって、現体制の維持、米国をはじめとする近隣諸国との交渉力の強化、日本・韓国からの米軍の撤退、武力による朝鮮統一、を目指している様である.

国連は北朝鮮の核・ミサイルの度重なる実験に対し,十数年間に渡って核・ミサイルの放棄を主張し、非難と制裁を課してきたのだが,これに従う事もなく、着々とその所有に向かっているのである.

そして、所有が現実的になった現在、日米韓及び国連は、改めて世襲独裁軍事国家が核・ミサイルを持つ事の脅威やテロ集団や第三国へ流出する事の脅威から、更なる圧力強化で核・ミサイルを放棄に追い込むことで結束しているのである..

これに北朝鮮は犬の遠吠えと揶揄して、核・ミサイルを放棄する気配は全くないのである.それどころか制裁強化に対抗すべく、更なる核・ミサイルの実験で軍事力を鼓舞し,軍事行動も辞さないとの脅迫もちらつかせているのである.

中国、ソ連は圧力より対話を主張しているが,どのような対話をしようとしているのか明らかにしていない.北朝鮮と米国の過熱ぶりをただ眺めている感じすらするのである.

そんなわけで、圧力の強化に北朝鮮が軍事的反撃に出るのか、核・ミサイルを放棄しない事で米国が軍事的制裁に走るのか、この最悪の事態はゼロではないのである.

そこで、この際、朝鮮半島がななぜ分裂し、北に世襲独裁軍事国家の北朝鮮が建国されたのか、その経緯を知ることが大事だと考え、ざっと整理してみる事にした.

朝鮮半島分裂は日本の敗戦直前にソ連が日本に宣戦布告し,日本が統治する満州、朝鮮半島、及び、日本の北海道や北方領土に侵攻した事が発端である.

これに反対した米国は、ロシアとの間で朝鮮半島の北半分はソ連、南半分は米国の支配下に置くことで合意し、ロシアの朝鮮半島支配を阻止したのである.

その後、国連は朝鮮半島の統一国家作りを要求したが、1948年、北は金日成(抗日、独立運動家、親ソ連)がソ連の支援の下で、朝鮮民主主義共和国を、南は李承晩(反日、反共、独立運動家,親米)が米国の支援の下で,大韓民国を建国したのである.これを契機に、ソ連,米国は朝鮮半島から撤退したのである.

このまま分裂状態で安定すればよかったのだが、金正日は①米ソが撤退した事、②中国毛沢東が中華人民共和国を宣言した事(1949年),➂南の軍事力が未整備である事、を好機ととらえ,1950年、朝鮮統一に向けて、南へ武力侵攻したのである.

これが3年に及ぶ朝鮮戦争の始まりである.そして300万人に及ぶ犠牲者を生んだ悲惨な朝鮮戦争に突入して行ったのである.

朝鮮戦争は北側には共産圏拡大をもくろむ、ソ連、中国が付き、南へは米国、国連軍が付き共産圏と自由圏の戦いの様相に発展して行ったのである.そして、膠着状態に入った時点で休戦協定が結ばれたのである.その後、米ソ冷戦時代を背景に,南・北も分裂状態のまま今日に至っているのである.

李承晩政権は休戦協定後、軍事力の強化、反共の防波堤として、米国と連動した安全保障体制の強化を進めたのである.

一方、金日成(キムイルソン)は建国以来の世襲独裁軍事国家、先軍政治、粛清政治の道を変えることなく、その強化に取り組み、これを二代目の金正日(キムジョンイル)、三代目の金正恩(キムジョンウン)が継承しているのである.

特に、二代目の金正日は米国と対峙する為の核・ミサイルの開発を国連や六か国(北朝鮮,中國、ロシア、韓国,米国、日本)会議や国連の制裁を無視して、強引に開発を進めたのである.多分、その裏で、技術面はソ連が、経済面では中国が支援してきたと思われる.そして、三代目の金正恩が核・ミサイルの所有直前まで到達させたのである.

当初、北朝鮮の世襲独裁体制はソ連の崩壊、東欧諸国の民主化で内部から崩壊すると言う憶測もあったが、粛清統治によって、その動きは抑えられているのである.

このように、北朝鮮の生みの親がロシア、育ての親がロシア,中国と言えるのかもしれない.これが、朝鮮半島の大まかな経緯である.

振り返ってみれば、上記のように朝鮮半島の分裂問題、日本の北方領土の問題、シベリア抑留問題、もそうだが、ロシアの一方的な南下政策が発端になっているのである.さらに遡れば、日本の日清戦争、日露戦争、日本の朝鮮併合や満州進出等々においても、ロシアの南下政策が一因になっていると思うのである.ちなみに、シベリア鉄道、ウラジヲストック(不凍港)は、この南下政策の象徴である.

尚、ロシアは東アジアだけではなく、ヨーロッパでも大きな影響を与えて来た.たとえば、ドイツの分裂、共産圏(東欧)の形成、米ソを中心とした東西冷戦、その後のドイツの統一、ソ連邦崩壊、冷戦時代の終焉、東欧諸国の共産圏離脱、ロシアのクリミヤ半島侵攻、等々、ロシアがすべて、かかわっているのである.良くも悪くもロシアは世界に影響を与えて来たのである.

以上、朝鮮半島分裂の経緯を述べてきたが北朝鮮建国の原点になったスターリン、金日成についても、その活動内容をWikipediaから拾ってみた.

スターリンの政治

スターリンはソビエト連邦共産党中央委員会書記長に権限を集中させることで地位を確立し、トロツキー派の世界革命論(永久革命)を否定して,一国社会主義による国内体制の維持を優先する路線を示した.この理論対立はトロツキー派の粛清の大義名分としても用いられたのである.以降,1941年から1953年に死没するまで,要職を兼任し、国家指導者としての立場を維持した人物である.

1939年,ナチスドイツの台頭などによって国際情勢が不安定化する中,反共主義・反スラブ主義を掲げていたヒトラーのナチスドイツと不可侵条約を締結.し,ポーランドに侵攻..第二次世界大戦の発端になる.ポーランド分割,バルト三国併合,東カレリア併合、アジア方面ではドイツと同じ枢軸国の日本とも日ソ中立条約を結んだ.

1941年,第二次世界大戦においても中立を維持していたソ連はイギリス本土上陸の失敗で手詰まりとなったドイツによる侵略を受け,独ソ戦が始まった.同時にイギリスを中心とする連合国陣営にも参加,従来通りの強権支配を維持して軍と政府の統制を維持し続けた.

やがて戦争が長期化する中で態勢を建て直し,最後には反攻に転じてドイツの首都ベルリンを陥落させ,東欧を支配下に置いた.アジア方面では対日参戦でモンゴルの独裁者とともに満州と内蒙古,日本の北方領土や朝鮮半島北部まで攻め落とした.

日本の領土を少しでも多く略奪することを画策していたスターリンはその後も停戦を無視し、日本の同盟国の満州国への攻撃のみならず,南樺太と千島への攻撃を継続させたことにより、その後の北方領土問題を引き起こす原因を作ることになった.

スターリン自身は問題を感じておらず,別荘の居間に新しい世界地図を貼り、新国境線をパイプでなぞりながら「クリル諸島、サハリン全土、旅順、大連、全てわれわれの所有物だ。何とすばらしい!」と悦に浸っていた.また、スターリンは南樺太や千島に加えて、北海道北部から北東側全域をソ連が占領しようとする案をトルーマンに申し入れていたが、これはトルーマンは拒否したのである.

さらに日本軍の捕虜や民間人をシベリアに抑留し強制労働に就かせたほか、日本企業の生産設備などをソ連国内に違法に運び去った.その上に英米軍を中心とした連合国最高司指令官に対し北海道全体と東北一帯の分割占領を提案したものの、これも即座に英米から拒否されたのである.

しかし、連合国陣営内でソ連が果たした役割は非常に大きく,国連の安全保障常任理事国となり、米国と並ぶ超大国として戦後秩序に影響を与えたのである.

ヤルタ会談とポツダム会議では大戦後の欧州情勢についての協議を行って鉄のカーテンを築き,共産主義と資本主義の対立においては、米国と西欧諸国が北大西洋条約機構を結成した事に対し、東欧諸国とワルシャワ条約機構を設立したのである.

アジア情勢を巡っては、中国共産党を支援して中華人民共和国を成立させ,第一次インドネシア戦争ではベトナム民主共和国を、朝鮮戦争では朝鮮民主主義人民共和国を支援し東側陣営を拡大して行ったのである.

1953年の死没まで国家指導者としての立場は続き,ソ連内の戦後復興でも主導的な役割を果たした.また科学技術や工業力の重点化政策も引き続き維持され核武装や宇宙開発などに予算や費用が投じた.最後に関わった国家指導は大規模な農業・環境政策たる自然改造計画であった.1953年に寝室で倒れ,病没したのである.

このスターリンはレーニンと自身の個人崇拝を作り上げた.自らの思想をマルクスレーニン主義として定式化し、レーニンをマルクスの正統な後継者と位置付けた事で,スターリンは大いなる敬愛と崇拝の対象となったのである.

数多くの街,村,都市はスターリンの名前を含むように改名し、多くの賞がスターリンの名前を冠するようになったのである.しかし,ソビエト連邦の崩壊とともに廃止されることになるのである.

また、スターリンの彫像が大量に作成され,ありとあらゆる場所に設置されたが、当然これらもスターリンを称賛するプロパガンダの一環として建設された.文学や音楽、さらに詩集にもスターリンを神の如く賛美するものに満ち溢れていたのである.

それらの作品の中には、第二次世界大戦を1人で終結させたといった荒唐無稽な内容のものが多く,また,1944年発表のソビエト連邦国歌にスターリンの名前が現れるほどの凄まじい個人崇拝がまかり通ったのである.

1948年には『スターリン小伝』という本が出版され、「最も偉大な統領」といった美辞麗句が大量に散りばめられた本であるが、この中にスターリン自ら書き加えた箇所がある,とフルシチョフは暴露している.

その文章にはスターリンは,党と人民の統領としての課題を立派に果たし,全ソヴィエト人民の支持を完全に獲得していたとある.一方、自分の活動の中に,自慢,高慢、うぬぼれなどの影が少しでも見える文章は徹底して排除したと言うのである.

死後から程なくしてスターリン後の権力闘争が行われたが,その過程でフルシチョフらによるスターリン派に対する批判が展開され始めた.1965年,ソ連共産党20回大会でフルシチョフは有名なスターリン批判を行い、一転してスターリンは偉大な国家指導者という評価から、恐るべき独裁者という評価へ変化したのである.この潮流は,反スターリン主義として各国の左派に影響を及ぼしたのである.

そして、1985年、ゴルバチョフによるペレストロイカ(1980年代後半からソビエト連邦で進められた政治体制の改革運動)の宣言である.グ゙ラスノチス(情報公開)とともに60年間に及ぶ硬直した一党独裁政治から民主的な政治体制に脱皮しようと言う宣言である.

これが東西ドイツソの統一、ソ連邦・東欧の崩壊につながるのだが,それゆえ体制崩壊を恐れる北朝鮮は潮流に逆らって、スターリン主義、世襲独裁軍事国家に固執し、粛清政治を強化ているのかも知れない.一党独裁の中国も同じ状況にあると思うのである.

金日成の政治

一方、金日成は朝鮮の革命家・独立運動家で北朝鮮の軍人政治家である.満州において抗日パルチザン活動に部隊指揮官として参加し,日本の関東軍の攻撃を受け、ロシアに避難し,ロシア軍に参加.第二次世界大戦後、金日成はスターリンの面接を受けて北朝鮮に帰国、そして親ロシアの国として金日成を主席とする朝鮮民主主義人民共和国が建国されたのである.

北朝鮮は1950年に、ソ連から武器を中国から兵の支援を受けて韓国に攻め入ったのが朝鮮戦争である.韓国を武力で併合しようと考えたのである.

当初は北朝鮮有利に展開するが,韓国側にアメリカ、国連軍が付くと形勢逆転.北朝鮮は中国国境まで追いつめられると中国から100万の軍が駆けつけ膠着状態になる.その結果、1953年7月に休戦協定が結ばれたのである.

さて,この休戦協定だが,北朝鮮では,これを「戦争に勝利した!」と言う事になっているようでである.これ以降,金日成の権力が強化されて行くのである.

その方法は”静粛政治”である.1956年から1958年にかけては静粛の嵐が吹き荒れたと言う.さらに,この静粛は民衆レベルにまで広がりを見せて行った.住民同士で互いに密告させたのである.

また,北朝鮮の各地に金日成の銅像や肖像画が掲げられ、彼の名を呼ぶときも必ず「敬愛する首領である金日成さま」と呼ばなけらばならないようにしたのである.このようにして金日成の個人崇拝は確立して行ったのである.

更に金日成は1962年に4大軍事路線を打ち出した.内容は「全人民の武装化」「全国土の要塞化」「全軍幹部化」「全軍現代化」の4つである.国家の存続、武力による韓国併合を狙ったものだと思う.

この革命家金日成の共産主義による世襲独裁軍事国家,先軍政治、粛清政治,朝鮮の統一はスターリンの政治と極めて似ているのである.金日成とスターリンの関係を考えればうなずけるのである.

これを二代目,三代目が継承しているのだから,今日の世でも、封建時代の様な国が存在しているのである.時代錯誤も甚だしい隣人がいるのである.

きっと、北朝鮮指導者は、国の維持は核・ミサイルではなく、民主的政治体制や国際交流にあると感じつつ、世の流れに逆行している危うさに、常におびえていると思うのである.北朝鮮国営放送の勇ましい軍口調や人形ロボットの様な軍行進に接する度に、そう思うのである.

以上、北朝鮮問題の経緯を述べてきたが、その対策について下記二つを考えてみた.

①北朝鮮と米国の膠着状態化

米国、韓国・日本及び国連の圧力強化と北朝鮮の核・ミサイルの所有が併存した膠着状態が続くと思われる.この情勢下で、北朝鮮は米国に要求を突きつけると思うが、米国は核・ミサイルの放棄を前提としなければ会話には応じない姿勢を取り続けると思う.

この膠着状態が続けば、圧力で北朝鮮は苦しくなると思うし、核・ミサイルを持ったもののって効果がない事を自覚するようになると思う.又、武力行使をするきっかけも遠ざかると思うのである.このような膠着状態にすることが必要だと思うのである.

②北朝鮮の体制転換

北朝鮮は世襲独裁軍事粛清国家である.映画の中に存在する事はあっても、現実に存在している事や,そんな封建時代の様な時代錯誤した国が最先端の核・ミサイルを持つ事に驚きを感じるのである.

このような独裁国家が必ず崩壊する事は歴史が証明しているのだが、それを恐れて.金正恩は金日成を錦の御旗にして、この体制に、しがみついている感じもするのである.

そこで、ロシアが東アジアへの南下政策の責任、朝鮮半島へ侵攻した責任、朝鮮半島を分裂させた責任、スターリンが金日成や分裂国家建国を支援した責任、朝鮮戦争の責任、等々から、率先して北朝鮮の体制転換を説得すべきだと思うのである.

勿論、スターリンを恐るべき独裁者と断罪したように、スターリンを尊敬し、影響をうけた金日成に対しても、非難すべきだと思うのである.

ロシアに高みの見物を許してはならないと思うし、歴史的責任を取って欲しいと思う.同時に国連も体制転換を主張すべきだと思うのである.内政干渉は出来ないと言って放置できないのである.

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2017.09.06

478 又か、民進党党首の「挙党体制宣言」

民進党党首に前原氏が返り咲いた.前原氏は民主党が政策集団に脱皮する為に、小泉首相ばりに「民進党をぶっ壊す」、「政策に賛同しない議員は公認しない」と言うのかと思ったら、民進党歴代党首と同じように、政策度外視の挙党体制を作ると宣言したのである.

本来なら、前原氏は憲法問題、安保問題、社会保障問題、財政問題、経済問題、労働問題、等への政策をかかげ、これに賛同する議員だけで民進党を再スターすべきだったと思うし.同時に野党再編にも繋げて行くべきだったのである.

残念ながら、今回も又、挙党体制の名の下で、政策なしの右・左混在の党内人事が行われるようだが、これでは、なんの展望も見えず,今後も民進党の凋落は止まらないと思いうし,野党再編も遠のいたと思うのである.

の政策の定まらないままの挙党体制を組んだ民進党は、これまでもそうだったが、相も変わらず、議員の所属先、国から支給される歳費の振込先、,国会の発言枠の確保、の為に存在する党と言う事になる.又、国会でも、選挙でも、批判はするが対案がない党を続ける事になる.

自民党にも、いろんな考え方の人がいると民進党議員は自己弁護するが、民進党程、考え方が右から左に広がっていないし,せいぜい、保守、新保守の差、程度である.その差は自民党の政策決定プロセスに従って,最終的には自民党としての政策が決まるのである.党としての政策が決まらない民進党と大違いであ.

いずれにせよ、政権交代可能な二大政党の形成が、又,遠のいた感じである.更に言えば、日本の政党政治の形骸化を続ける事になるのである.

ところで、政権交代可能な二大政党を考えた時、「基本政策を異にする二大政党化」(例えば保守とリベラル・左派)」は,不可能だと思う.これを目指したとしても、巨大与党政権が続く事になるのである.

そこで、二大政党を作るなら、「基本政策を共有した政権交代可能な二大政党化」だと思う.(例えば保守と新保守、あるいは、保守と中道保守)この方向で政党再編が進むことを願うのである.

尚、共有すべき基本政策とは憲法、天皇制、安全保障、市場経済、社会保障、等、日本の根幹にかかわる政策である.

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2017.07.04

475 都民ファースト都議選圧勝の要因

2017年7月2日の東京都都議会選挙は、かつて,大阪府議会、市議会、の選挙で、自民党、民主党が激減し、地域新党・大阪維新の会が躍進し、第一党の勢力を占めたのだが、今度は東京で同じことが起こったのである.

今回の都議会選挙による勢力図が下記の通りだが、自民党議員の激減、地域新党・都民ファーストの会が躍進し、第一党の勢力を占めたのである.
(図をクリックすると拡大) Photo

この結果に対して国政における自民党の失点自民党に代わる受け皿が無かったから都民ファーストが大勝したとの論評が多い全く都民ファーストに失礼.だと思う.都民ファーストの政治姿勢や政策これまでの自民党都議会議員の失政があったから都民ファーストが大勝したとの視点で,その要因を述べたい. 

①都民ファーストは既成政党ではできない政策を訴えて勝利

1年前の都知事選では、組織票の無い中で、小池氏は「東京大改革」を掲げ、多くの都民の支持を得て,ぶっちぎりの勝利を得たのである.

今回の都議会選挙でも、この取り組みの延長線で「古い議会から新しい議会へ」と組織票がないならではのキャッチコピーを掲げ、旧態依然のこれまでの都議会を変えたいと訴えたのである.

特に、オリンピック問題や豊洲市場問題、に関する自民党都議会の失政に対して、このキャッチコピーは見事に都民の心をつかんだと思う.自民党都議会幹部(幹事長、政調会長、議長)が軒並み落選したことでも,明らかである.

更に自民党の凋落に輪をかけてしまったのが、オリンピック問題、豊洲問題に対する小池都知事への攻撃である.「決められない小池都知事」とキャンペーンを張り,小池都知事を攻撃したのである.これらの問題は、これまでの自民党を第一党とする都議会の責任が大きいのだが、その反省もなく、尻ぬぐいに必死の小池都知事に責任を転嫁しようとする的外れの自民党に更なる逆風が吹き荒れたと思うのである.

一方、都民ファーストの新人立候補者は自民党批判は一切せず、身近な所の問題を掲げながら、新しい議会を担う意気込みで、選挙に臨んでいたと思う.これも又、都民ファーストの方針、政策と連動した見事な選挙活動であったと思うのである.たとえ小池人気があったとしても、組織票の無い50人の立候補者のうち、49人の当選者を出した事でも、この事は明らかである.

大阪府議会選挙,市議会選挙でも,地域政党の維新の会が第一党を得たが(選挙制度から単独過半数を得る事は不可)、ここでも、これまでの大阪の既成政党の失政を鋭くとらえて,解決策として、自民党では考えられない、大阪都構想を主張したのである.

大阪の地域政党・維新の会も東京地域政党・都民ファーストも、まさに、既成政党の、これまでの失政を踏まえて、既成政党では考えられない政策を訴えて大勝したのである.この地域政党の躍進は全国の地方議会にも起こり得る現象だと思うのである.

②他党を圧倒した都民ファーストの選挙戦術

都民ファーストは1年前の都知事選でもそうだったが、都議選でも、既成政党を圧倒する選挙活動を展開した.小池都知事のキャリアの中で培割れた選挙のうまさがいかんなく発揮された感じである.過去の小池氏の成功経験が大いに役立っていると思う.

・日本新党のゼロからの立ち上げ経験
・新進党小沢氏のどぶ板選挙(住民との会話と握手)
・自民党小泉氏のワンフレーズポリテックス、劇場型選挙(守旧派攻撃)、落下傘攻撃

・東京大改革、都民ファースト、古い議会から新しい議会へ、と言うキャッチコピー
・都民の要求を軸にした選挙公約作り
・選挙区の特徴、競合相手、定数に応じた,立候補者の選定
・公明党との選挙協力,他党党員の取り込み

を実行したのである.

これに比して国政政党は都議選の場を利用して国政選挙の前哨戦のような国政バトルを繰り返していた.国政野党は自民党スキャンダルを材料に、憲法改正を阻止する為の反安倍運動を展開した.

都民ファーストだけは都議会選挙に徹した戦いをしていた様に思う.上記①の政策と、②の巧みな選挙戦術が都民ファーストを圧勝に導いたのである.

③自民党大敗にもかかわらず都議会の受け皿になれない国政野党の凋落

今回の都議選は政策や都議を選ぶと言うより、国政自民党の失態に反自民の野党やマスコミ、有識者が、ここぞとばかりに自民党審判の場にしたのである.その結果、都民ファーストの大勝利、自民党の大敗になったのだが,この結果に喜んだのは、公明党、民進党、共産党である.

都議会の勢力が伸びていないにも関わらず、国政で自民党に攻勢をかけられると喜んでいるのである.国政の受け皿になれない事に加えて,都議会でも受け皿にもなれない事に気が付いていない感じである.それでも喜んでいる野党は万年野党病にかかっているのかも知れない.

こんな国政政党をしり目に、都民ファーストは漁夫の利を得たと言う人がいるが、失礼千万だと思う.上述のように、都民ファーストは都知事選の「東京大改革」、都議選の「古い議会から新しい議会へ」と一貫した方針のもと、都民の要求する課題に対する公約をで掲げて来たのである.その結果が、自民党はもとより、国政野党をも退けたのだと思う.漁夫の利ではなく,戦って,既成政党を退け,凋落に追い込んだと思うのである.

さて大敗した自民党への提案を記しておきたい..

今後の自民党だが、国政対策と地方選挙対策がある.国政対策としては、当面の勢力を使いながら、しっかり、外交問題や憲法改正問題、等の重要な政治課題に取り組む事だと思う.但し、自民党自身のリスクマネージメント、ダメージコントロールを徹底する必要がある.

「世間の常識や感覚の欠如」、「負けず嫌いからくる反応」には要注意である.「口は災いのもと」を標語に掲げ,口喧嘩やデベートの訓練をしたらどうだろうか.政治家の必須の能力だからである.

次の国政選挙対策だが、保守第二党の誕生が起こるかどうかである.二大政党を望む観点からすれば、作るべきだと思うが、その気配が無ければ、政権の事など気にせず、しっかり政治をする事である.

次に考えるべき問題は地方組織の在り方である.前回の都知事選挙もそうだったが、都知事候補を決めるだけでも混乱しているのである.選挙がある事ははっきりしているのだから、数年前から準備して当然だが、これさえ出来ていないのである.

現在,各地域の自民党議連は国会議員を筆頭に地域の議員で構成されているが、外から見ると,自民党や国会議員を支える組織票固めの下部組織にしか見えないのである.

大阪の自民党府議会もそうだったが、これでは、100%、地域の事を考える地域政党の政策には勝てないのである.住民からすると,国政の事しか頭にない本部や国会議員が地域の選挙応援にきても、旧態依然の違和感を感じるだけである.それ程、政治が身近になっているのである.

地方議員選挙における国会議員の興味は自党の支持率である.候補者の当落や政策の評価ではなく、自党の得票数である.国会議員に取っては,地方選挙は次の国政選挙の前哨戦でしかないのである.又,地元議員にとっても、政党本部や国会議員の応援を得て,本部との連携を言いたがるのである.此れでは地域政党に勝てないのである.

そこで、自民党として,本当に地方議員を拡充し,地域の支持率を拡大しようとするなら、地元自民党議員だけの地域政党を立ち上げ地域政治に取り組ませるべきだと思うのである.

全国企業の支店が地域で商売するより、地域会社に商売させる方が提案力も上がり、地元も受け入れやすいからである.地方の商売に大企業の支店長が社長や専務を連れて来て,会社挙げて取り組むと言うより,地域会社の社長が的確な提案をもって訴える方が、地元の好感が得られるのである.

この様に従来のまま問題意識もなく、相変わらず、国会議員を選挙カーに乗せる事が選挙戦術だと思っている様では、今回のように、地域政党に足元をすくわれるのである.

国政政党の選挙カーにベテランの党本部や都議会の幹部、引退したドンと言われてきた人物、が乗っている姿を見ると、小池氏の「古い議会から新しい議会へ」と言う主張の中の「古い議会側のおっさん」に見えたのである.小池氏のワンフレーズポッリテックスの威力である.

この「古い議会から新しい議会へ」と言うワンフレーズポリテックスは東京都議会のこれまでの実態を的確にとらえた、新興勢力の見事なキャッチコピーだったと思う.孫氏の兵法「戦わずして勝つ」を見事に実践したと思うのである.

いくら安倍総裁が「古い、新しいが問題ではなく、決断力、実行力が大事だ」と正論を言っても、一年前の都知事選でも問題になったが,これまでの都議会が決断力、実行力が疑われているのだから,自民党としては「天に唾」になり、小池氏の応援になっても、小池氏のキャッチコピーの反論にはならないのである..

以上、自民、安倍政権への逆風が無くても,地域政党である都民ファーストの会が圧勝したと思う.この事はすでに大阪の府・市で、第1党が自民党から維新の会に変わっているように、東京でも同じ現象が起こったと見えるからである.

共通している事は、地方政治における既成政党の賞味期限切れである.このように自覚している既成政党はないようだが,いづれ国政においても、起こる現象だと思う.既成政党は地方政治と国政に、どう対応していくか,大きく見直す時期に来ていると思うのである.

 

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2017.06.28

474 公文書管理規定と文科省の課題

加計学園の戦略特区制度を利用した獣医学部新設に関して、文科省から「官邸の圧力」「加計ありき」の審査が行われたことを惹起する文書が公開されて,与野党の攻防が激しくなっている.そこで、改めて、公文書の勉強をしてみた.

1.公文書管理規定の法制度のあらまし

目的

この法律は,国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が,健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として,主権者である国民が主体的に利用し得るものであることに鑑み,国民主権の理念にのっとり,公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに,国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする.(ワンセンテンスが異常に長い役所の典型的な文章)

法制化

この目的により,平成21年7月「公文書等の管理に関する法律」が制定された.この制定により,政府全体が統一されたルールに基づいて,公文書等の作成・管理を行うことになった.

公文書の種類(行政文書、法人文書、特定歴史公文書等)

①行政文書とは

行政機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書であって,当該行政機関職員が組織的に用いるものとして,当該行政機関が保有しているもの.

②法人文書 とは

独立行政法人等の役員又は職員が職務上作成し,又は取得した文書であって、当該独立行政法人等の役員又は職員が組織的に用いるものとして、当該独立行政法人等が保有しているもの

③特定歴史公文書等とは
歴史資料として重要な公文書その他の文書のうち,国立公文書館等に移管されたもの

行政文書に関する規定(抜粋)

第四条 (文書の作成対象)

行政機関の職員は第一条の目的の達成に資するため当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、次に掲げる事項その他の事項について、文書を作成しなければならない.

・法令の制定又は改廃及びその経緯

・閣議、関係行政機関の長で構成される会議又は省議の決定,了解、経緯
・複数の行政機関,若しくは地方公共団体に対して示す基準の設定,経緯
・個人又は法人の権利義務の得喪及びその経緯
・職員の人事に関する事項

第五条(整理)

・行政機関の職員が行政文書を作成し,又は取得したときは、当該行政機関の長は,政令で定めるところにより、当該行政文書について分類し、名称を付するとともに,保存期間及び保存期間の満了する日を設定しなければならない.

・行政機関の長は、能率的な事務又は事業の処理及び行政文書の適切な保存に資するよう、単独で管理することが適当であると認める行政文書を除き,適時に,相互に密接な関連を有する行政文書(保存期間を同じくすることが適当であるものに限る)を一の集合物(以下「行政文書ファイル」という。)にまとめなければならない.

・前項の場合において,行政機関の長は,政令で定めるところにより,当該行政文書ファイルについて分類し,名称を付するとともに,保存期間及び保存期間の満了する日を設定しなければならない

・行政機関の長は、第一項及び前項の規定により設定した保存期間及び保存期間の満了する日を、政令で定めるところにより、延長することができる.

・行政機関の長は,行政文書ファイル及び単独で管理している行政文書(以下「行政文書ファイル等」という。)について、保存期間(延長された場合にあっては、延長後の保存期間。以下同じ。)の満了前のできる限り早い時期に、保存期間が満了したときの措置として,廃棄の措置をとるべきことを定めなければならない.

第六条(保存)

・行政機関の長は、行政文書ファイル等について,当該行政文書ファイル等の保存期間の満了する日までの間,その内容、時の経過,利用の状況等に応じ、適切な保存及び利用を確保するために必要な場所において,適切な記録媒体により,識別を容易にするための措置を講じた上で保存しなければならない

・前項の場合において、行政機関の長は、当該行政文書ファイル等の集中管理の推進に努めなければならない>第七条(行政文書管理簿 )

・行政機関の長は,行政文書ファイル等の管理を適切に行うため,政令で定めるところにより,行政文書ファイル等の分類,名称,保存期間,保存期間の満了する日,保存期間が満了したときの措置及び保存場所その他の必要な事項を管理簿に記載しなければならない.但し、不開示情報に該当するものは除く

・行政機関の長は,行政文書ファイル管理簿について,政令で定めるところにより、当該行政機関の事務所に備えて一般の閲覧に供するとともに、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により公表しなければならない.

第八条 (移管又は廃棄)

・行政機関の長は、保存期間が満了した行政文書ファイル等について、第五条第五項の規定による定めに基づき、国立公文書館等に移管し,又は廃棄しなければならない>

・行政機関の長は,前項の規定により、保存期間が満了した行政文書ファイル等を廃棄しようとするときは、あらかじめ、内閣総理大臣に協議し,その同意を得なければならない.この場合において,内閣総理大臣の同意が得られないときは、当該行政機関の長は,当該行政文書ファイル,等について、新たに保存期間及び保存期,の満了する日を設定しなければならない. 

・内閣総理大臣は,行政文書ファイル等について特に保存の必要があると認める場合には、当該行政文書ファイル等を保有する行政機関の長に対し、当該行政文書ファイル等について,廃棄の措置をとらないように求めることができる.

第九条(管理状況の報告)

行政機関の長は、行政文書ファイル管理簿の記載状況その他の行政文書の管理の状況について,毎年度,内閣総理大臣に報告しなければならない

・内閣総理大臣は毎年度,前項の報告を取りまとめその概要を公表しなければならない.

・内閣総理大臣は,第一項に定めるもののほか,行政文書の適正な管理を確保するために必要があると認める場合には、行政機関の長に対し,行政文書の管理について,その状況に関する報告若しくは資料の提出を求め,又は当該職員に実地調査をさせることができる.

第十条(行政文書管理規則)

・行政機関の長は、行政文書の管理が第四条から前条までの規定に基づき適正に行われることを確保するため、行政文書の管理に関する定め(以下「行政文書管理規則」という)を設けなければならない.

・行政文書管理規則には行政文書に関する次に掲げる事項を記載しなければならない.

作成に関する事項
整理に関する事項
保存に関する事項
行政文書ファイル管理簿に関する事項 
移管又は廃棄に関する事項
管理状況の報告に関する事項

その他政令で定める事項

・行政機関の長は行政文書管理規則を設けようとするときは,あらかじめ,内閣総理大臣に協議し,その同意を得なければならない.これを変更しようとするときも、同様とする.

・行政機関の長は行政文書管理規則を設けたときは遅滞なく、これを公表しなければならない.これを変更したときも、同様とする.

行政文書に関する刑法

・虚偽公文書作成罪(156条)

公務員が,その職務に関し,行使の目的で,故意に虚偽の文書・図画を作成し,または,文書・図画を変造する罪

公用文書毀棄罪(258条)

公的機関が使用のために保管している文書や電磁的記録を破壊もしくは使用不能にする罪

・公務員に対する守秘義務違反、秘密情報漏洩罪

秘密事項であるかどうか(実質秘の判断),漏洩の目的が,どうであったのか,の個別判断が必要になる.

一方、公益通報者保護法という法律があって公益通報であれば、リークした人が不利益処遇を受けないと言う保護法がある.

文科省が公開した文書に見る問題点

「加計学園」の獣医学部新設を巡り,文科省が公開した、萩生田光一官房副長官が文科学省に圧力をかけたとする文書や数十通の文書をもとに、公文書に関する疑問,私見,を述べてみたい.

まず,公表された萩生田官房副長官に関する文書に,次のような反応があった

①マスコミ、野党、前事務次官は「官邸の圧力があった」、「加計ありきの審査が行われた」との論調を展開.

②官邸は①を否定しつつ、戦略特区政策に基づいて,官邸主導の行政プロセスを適切に行ったと反論.

③萩生田官房副長官は文書の内容は伝聞情報が混ざっており、事実ではない、是非,「作成者に確認して欲しい」と反論.

④松野文科相は野党に渡った文書の存在を確認したが,文書の信憑性については疑問があると発表.

⑤文書の調査をした義本博司総括審議官は行政文書ではない,個人のメモが共有フォルダーに入っていた.大変遺憾であり,萩生田氏に謝罪の言葉を口にした.

以上の反応を踏まえて、私見を述べたい.

①公表された文書は行政文書か?

公開された文書が管理規定にある様に、組織的に用いらた文書とは思えない.作成者はどう思っているのだろうか.前事務次官は公表された文書は共有していたと言っていたが、文書を見ただけなのか、内容に各人が同意していたのか,違和感を感じていたのか、あるいは、組織の統一見解としていたのか、全く不明である.

共有という言葉で、あたかも組織全体の認識があったかの如く言いたいのかもしれないが,.そんなものが行政文書になるのだろうか.

そもそも、公文書なら行政文書ファイルに登録されていなければならないし、登録されていないなら行政文書にならないのである.野党やマスコミは行政文書だと言うが,この行政ファイルに存在していた事を確認しているのだろうか.

例え行政文書だとしても、書式が整っていなかったり、信憑性の問題が指摘されたり、伝聞や感想的な内容が書かれていたり、公文書の体をなしていないと思う.こんな文書が行政文書になるなら、行政文書の管理の目的も運用規定も、無視されている事になる.

どうやら、文科省の特権意識が侵されたと言う不満を書いただけの文書、メモ、のたぐいだと感じるのである.そんな内容が行政文書になっているとしたら、公文書管理の目的や信頼性が崩れてしまうのである.

以上の事から、公表された文書は行政文書と言うより私的文書にあたると思うのである.

②文科省の公文書管理が出鱈目だと思う.

そもそも、公表された文書の存在を調べるのに、個人のパソコンや、いろんなファイルを調べたと言うが、そのこと自体が行政文書を管理していない証拠になる.

更におかしな事に、公開された文書に対し,行政文書だとか、いや私文書だとか、個人的メモだとか、の議論が起こること自体も、行政文書管理が出来ていない証拠である.

又,公表された文書が行政文書だとすると、信憑性の確認もなしに、行政文書になる事となり、これも又,行政文書管理の目的に反した大問題になる.

このような状態では、文科省は「公文書管理規定の目的」を果たしていないどころか、混乱を起こしていると言わざるを得ないのである.

マスコミ、有識者、野党はそれでも公表された文書は公文書と言うのだろうか.政府批判のシナリオから行政文書にしたいのかも知れないが、そんな動機ではなく、管理規定の目的、運用から見て判断すべきだと思う.それでも、行政文書と言うなら、文科省の信用はおろか,行政文書が簡単に悪用される危険性があると言う事になる.

以上の事から、文科省の行政文書管理が出鱈目だと思うのである.

③公開された文書が行政文書だとすると、刑法に抵触する可能性がある.

公文書として公開された文書を書いた人、あるいは、その文書を見て、行政文書だと主張している人は虚偽公文書作成罪(刑法156条)がある事を承知しているのだろうか.

又、文科省の職員がマスコミに流した文書が公文書であれば、公文書管理規定に照らして違法性がないのか、刑法上、国家公務員法違反(秘密情報の漏洩、公務員の守秘義務違反)に照らして問題がないのか、の議論が必要である.

この基本的な議論なしに,公文書管理規定の目的も、運営も、成り立たないのである.更に言えば、公開された文書が私文書であっても、虚偽が公開されたなら、名誉棄損罪になるのである.

最後に、

「官邸の圧力」、「加計学園ありき」があったのか、なかったのか,行政プロセスが歪められたのか、歪められていないのか、等々の議論がヒートしているが,その前に、行政文書管理が規定に従って運用されているのか、どうか、の検証が必要である.

出鱈目な行政文書管理が行われていたとすると、いくらバトルを繰り返しても、砂上のバトルになるだけである.元来、そうならない為に、公文書管理規定があるはずである.

そんなわけで、文科省は情報ネット時代を踏まえて、行政文書と私文書の区別を明確にし,セキュリティ対策も含めた行政文書管理の徹底を早急にすべきだと思う.

同時に総務省は公文書管理規定の厳密な運用を各省庁に指示すべきだと思うのである.

 

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2017.06.14

473 組織的犯罪処罰法案審議の感想

近々国会で成立するであろう組織的犯罪処罰法改正案(共謀罪)は一口で言うと、組織的重大犯罪の未然防止を目的に準備段階で処罰する法案である.日本の攻撃を準備している国への自衛権の発動問題と類似したテーマである.

この法案の成立で,遅ればせながら、国際犯罪防止条約(TOC条約)に加盟する事になり、国際的犯罪組織の情報が共有される事になる.

この法案に対し,野党は,不当捜査,不当逮捕,不当判決によって,「人権,プライバシー,表現の自由の侵害」や「一億総監視社会への道」だとして,戦前の「治安維持法」(思想弾圧)をイメージして,絶対反対の主張をしているのである.

そもそも、あらゆる法規制は権利侵害になるリスクを含んでいるが,それを排除する為に慎重な権利行使、手続き、最終的には裁判制度が存在しているのである.それでも、当法律の特徴からすると,捜査権の拡大による権利侵害が起こり得ると思う、だからと言って大義を否定する理由にはならないと思うのである.

ところで、自由,平等,人権と言う基本的権利も相互が衝突したり、これに危機防止と言う公共という概念が入ってくると,それぞれの権利が絶対的権利ではなく、優先度による強弱が付けられる事から,基本的権利は絶対的権利と言うより、相対的権利だと思うのである.

どうやら野党の主張は基本的権利を絶対的権利として,これを守る為に、政治的犯罪処罰法は反対だとの主張のようである.だとすと、組織的犯罪により、基本的権利のみならず,生命,財産が侵害された時,どう説明するのだろうか、完全に論理矛盾である.

与党は基本的権利や生命・財産を守る為に組織的犯罪防止法が必要だと言っているのだが、野党がどうしても反対するなら、対案を出さなければ建設的な議論異ならないのである.

以上が、短絡的に思い浮かぶ感想だが、ここで,そもそも論を整理してみたい.先ず、刑法には次の二つの概念があり、法制化の仕方が違うのである.

①既遂犯処罰の法律

これは犯罪が行われた時,処罰する法律だが,その法制化においては、「立法事実」によって罪状が定義されるのである.

(立法事実とは立法目的が合理的か,目的達成の手段が合理的かを問うものであり,実際の社会に存在する事実に適合しているかを判断する事を言う.)

発生した犯罪の犯人探しにおいては,ネット情報や防犯カメラなどの調査を行う事もあるし(裁判所の許可要の調査もある)、誤認逮捕もあるわけで、権利侵害は起こり得るのである.あらゆる法規制に内在するリスクである.

②準備処罰の法律

重大犯罪を未然に防止する為に,その準備行為を罰する法律である.この種の法律の特徴は犯罪前の処罰だから,上記の立法事実による法制化になじまないところがある.何が起こるかわからないからである.もし、立法事実による法制化をしようとすると、定義できる罪状が限定され,ザル法になる可能性がある.

更に特徴を言えば、重大犯罪の準備行為の発見には極めて広い範囲で,多面的な,しかも,恒常的な調査が必要になる.従って、いろんな捜査方法を屈指して,調査,捜査をすることになる.当然、権利侵害のリスクも大きくなる.よ従って,一層の慎重な捜査権力の行使が必要になるのである.

この二つの刑法の概念を念頭に、国会審議の感想を述べたい.

①既遂犯処罰とは違う法制化の審議がされていない.

上述のように、安保法制でも共謀罪法制でも、既遂犯処罰の法制化とは違う考え方の法制化が必要だと思う.

安保法制の議論で言えば,何が起こるかわからない事態への対応であり、立法事実による法制化はなじまないのである.いくら、自衛隊が出来る事を定義しようとしても、何が起こるかわからないから定義しようがないのである.定義したとしても、極めて断片的で、抽象的で、複雑で、しかも、規定していない事象も起こり得るのである.

この様にポジテブリストによる法制化は現場の判断や行動が混乱しかねないのである.従って、安保法制の検討は自衛隊が出来ない事(ネガテブリスト)を規定する方が合理的で明確になり,自衛行動の効果も上がるのである.

又、共謀罪法案の議論で言えば、同じ様に、何が起こるかわからない事態への対応であり,,組織的犯罪やその準備行為を定義する事はあまり意味がないのである.どんな行為もあり得るし、もくろんでいる犯罪の大きさや内容によっても、準備行為の内容も変わるのである.

繰り返すが、そもそも、安保法制も共謀罪法制も、転ばぬ先の杖としての法制度である.危機に対する保険のようなものである.法律が無かったから防げなかった、法律が無かったから無法状態になった,では済まされないのである.

したがって、本来なら,安保法制も共謀罪法制も、目的達成のためには、出来るだけ法律の網を広げておく必要がある.その為には,何が起こるかわからない事態を想定して出来る事(ポジテブリスト)を定義するより、出来ない事(ネガチブリスト)を定義した方が法律および現場の行動が明確になって、重大犯罪の未然防止力の強化になると思うのである.

しかし,昨今の安保法制、共謀罪法制の審議を聞いていると、既遂犯処罰の法制化と同じように,立法事実の有無とか,犯罪になる組織犯罪の定義とか,準備行為の定義とか、ばかりを議論していたのである.叉、感情的な世論を恐れもあったのか,法案が本質を外していたり、断片的になった感じを受けるのである.れで重大犯罪の未然防止の保険になるか心配するのである.

重要法案だけに、しかも、未然防止に権力の侵害もあり得る事から、もっと「YES BUT」(アクセルとブレーキ)の本質的な,建設的な議論をして欲しと思ったのである.

②野党は毎回、ワンパターンの行動をくり返しているだけである.

野党は日本の安全保障を強化しよう、組織犯罪を防止しよう、と言うと、必ず、憲法違反だとか、軍港主義への道だとか、基本的権利の侵害だとか、監視社会の到来だとか、治安維持方への回帰だとかを声高に言って反対するのである.

どうやら野党は法案の入り口で戦うだけで,悲惨な事態になる事には無関心の様である.その結果、悲惨な事態を防止する方法まで頭が回っていない感じを受けるのである.

結局,野党は,いつも,議論が終わっていない,強行採決されたと騒ぐのである.挙句に,あれだけ反対したのに選挙の時、廃案を公約に上げる事をしないばかりか,反対が間違っていたと反省する事もしないのである.

野党の一連の動きの目的は印象操作で大衆をミスリードし,政権打倒の運動を展開する事にあるようである.あるいは,そんな事ではなく、なんでも反対と言っていれば、なにがしかの得票が得られると考えているだけかも知れないのである.だとすると、野党の一連の動きは自身の保身術でしかないとも言えるのである.

いずれにせよ,与党も野党も,悲惨な事の未然防止と言う極めて重要な法案に対し、「YES OR NO」のバトルをくり返すのではなく,日本の為に「YES BUT」(アクセルとブレーキ)の建設的な議論をして欲しいと思ったのである.

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2017.05.30

471 元官僚トップの’公平な行政が歪められた’発言への指摘

国家戦略特区とは、今までの特区申請(規制緩和地域の申請)による新事業の展開を、更に積極的に進める為に、政府主導で,これを実施する制度である.

この戦略特区を利用して,加計学園(岡山理大)と今治市が申請した獣医学部の新設に対し、これを進めるようにとの官邸の圧力があったとする問題が、森友学園問題に引き続き,国会で取り上げられている.

この問題について官邸からの圧力を記録した文書があるとして前文科省事務次官の前川氏が「行政の公平性が歪められた」と公言したのである.この公言が.野党の疑惑追及に拍車をかける形になっているのである.

一方、文科省としては、その文書の存在を調査したが、見つかっていない.官邸としては、安倍総理の親友が学園を経営していようと、いっさい、加計学園の認可に圧力をかけていないし,文書に書いてあるような事を言っていない、総理は、親友であるからこそ、便宜供与など出来るわけがない、と主張しているのである.

そもそも、獣医学部の新設は1966年以降(60年近く),まったく許可されていない.しかし,

・ペット数の爆発的増加から牧畜も含めて獣医不足が発生している事、
・全国各地に鳥、豚、馬、牛の伝染病対策の強化が必要な事、
・全国的に公務員の獣医が不足している事、

・四国に獣医学部が無い事、
・毎年の既存獣医学部の入学競争率が20倍ほどに高い事、

等々で獣医師が逼迫し、増加が必要だとして,加計学園と今治市はこの獣医学部の新設を要請しているのである.

この申請はこれまで、何回も文科省に提出しているが、すべて却下されて来たと言うのである.通常の申請では文科省の許認可を受けられない状態だったのである.この文科省の岩盤規制を打ち破る為に、戦略特区政策に乗じて,改めて獣医学部の新設を申請したのである.

本来なら、戦略特区は、特区の事業が良かったら、規制を緩和して、全国に広げようと言うのだから、学部新設や学校新設は、なじまないのかもしれない.それでも獣医学部新設を特区で申請したのは、規制緩和して全国の獣医師を増やすべきだとの考えで、まず、特区で規制に風穴を開けたいと思ったようである..

もともと、60年近く獣医学部が新設されないほど規制が強くなければ、特区での申請はなかったと思うのである.

国家戦略を積極的に推進したい官邸としては、当然、獣医学部の新設を実現したいと言う立場である.叉、国会議員、地方議員が実現に向けて後押しする事は当たり前の話だと思う.

戦略特区に係わらず、地域に特定企業を優遇策を講じて誘致する事を政治家が後押しする事など,よくあると思うのである.勿論、見返りのある口利きは論外だが.

この案件に対し,前川前文科省事務次官が官邸の圧力で,「公平な行政が歪められた」と公言したのだが、例え圧力を示す文書が公的文書として存在していても、公平性が歪められたと言う内容が,はっきりしないのである.あまりにも抽象的で、さっぱり分からないのである.

幾つか推測してみた.

・公平な審議を予定していたが、それをやれなくなった?
・文科省としては不許可の意見を
出せなくなった?
・文科省で不許可を決めていたが、くつがえされた

・業界の既得権が侵された?
・文科省のメンツ、許認可権が侵された?

最初の公平な審議が出来なかったと言うのであれば、公平な審議をすればよいだけである.認可に不満があるなら反対すればよいのである.過去にも官邸主導や政治家主導があったと思うが、何故,今回、「公平性が歪められた」とことさら言ったのだろうか.

本心としては、こんな事もあったのではないかと推測できるのである.

・前次官が天下り斡旋で首になった腹いせで官邸に復習したかったから?
・民進党の推薦で国会議員に立候補したいから?

それにしても、戦略特区は、もともと行政の既存の公平性を崩すことである.戦略特区に官邸が主導性を発揮する事は当然である.

しかし、文科省官僚からすると,政治が教育行政に口を出すな(政治と教育行政の分離)、官邸主導とか政治主導は間違っている、との特権意識が根底にあって、教育を特区でやる事に、もともと反対している感じがするのである.

この教育に関する文科省官僚の特権意識が、ひいては、省益、既得権に繋がって、最も官僚主導の強い組織になっている感じがするのである.前事務次官の発言を聞いていると、公平性云々と言うより、この特権意識、官邸主導が侵されたことで、公平性が歪められたと言っているように感じたのである.

もし前川氏が公平性が歪められて、国民が不利益を被る、と言うのであれば、他人事ではなく、官僚のトップとして、自分の責任で、これに立ち向かうべきだったのである.今回の公言は正義の覇者を演じているようだが、単に,天に唾を吐いていただけである.

更に言えば、あれだけ大きな問題になった強い既得権益を背景にした、天下りを文科省が、最近までやっていたいた事に驚いたのだが、その責任者から、行政の公平性などと言う、きれいごとを聞いただけに,またまた、驚いたのである.

この天下りを続けてきた事は勿論だが、既得権益や省益を守り続けて来た行為が「公平な行政を歪めてきた元凶」ではないのか、その自覚が文科省官僚にあるのか.特権意識が強い割に、自分に甘く、当事者意識のない、無責任体質を感じたのである.

是非、前次官から「公平な行政」について所見を聞きたいものである.記者会見をやるなら、「天下りと公平な行政について」「省益、既得権益と公平な行政について」の記者会見を先にやるべきだったのである.

ところで、世の中は「官僚主導」から「政治主導」に動いている.技術革新や国際競争、世の価値観やニーズが大きく変化しているからである.

省庁の既得権益にしがみついているだけでは,世の中の変化の足かせになるのである.省庁が「変化への対応」に積極的に取り組まなければ,明日の日本はないのである.

ついでながら、文科省の教育問題も同じである.教育改革が遅々として進まないのも、教育行政の既得権にしがみついているからだと思う.官邸や政治家の圧力がもっと欲しいくらいである.

 

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