121 人事制度再設計
企業経営の基礎に人事制度がある.この人事制度は経営者の考え方,仕事の特性,社員数,業績,年齢構成,労使関係,歴史,等によって千差万別である.
一方、少子高齢化、技術革新、国際化、産業構造のフラット化などの経営環境、価値観の変化に加え、今後の経営戦略、M&Aや関連企業統廃合、専門家集団の形成、等によって,人事制度再設計のニーズが高まっている.
同時に、成果主義か能力主義か,人材はストックかフローか等の議論も再燃している.
ここで,再設計における一つの基本的考え方を紹介したい.
人事制度は言うまでもなく,企業にとっても社員にとっても納得出来る制度である事が基本である.特に,一本道のキャリアパスから管理職と専門職の道を作る制度,能力と業績を反映する制度、によって人材活力を活性化する事がポイントである.
’能力・人間力ある者に地位を、業績ある者に禄を’が古典的ではあるが、今後も通じる考え方だと思う.
そこで一つのシンプルな体系を紹介したい.
月次給与=基準給与(本給+資格給)+職責給+(諸手当)
・基準給与は残業,賞与などの基礎になる給与
・本給は年功順の賃金(幅を持つ事もある),退職金の基礎.
・資格給は勤続年数,能力主義にもとづく等級制度
・職責給は資格条件のもとで付与される役職・技能職制度
本給は年功序列の文化を残す部分である.給与全体の割合(例えば5割)を設定する.同時に退職金計算式の変更が発生する.次ぎに、新入社員から役職者までの資格体系と資格別資格給を設定する.職責給は役職・技能職の職責体系と職責毎の職責給を設定する事になる.
職責は肩書きになり、呼称も重要である.あまり再分化すると外部から分かりづらくなる.従って、課長職であっても、本給、資格給が違ってよい.次に職責には下記の定義が必要となる.
①残業手当の対象か否か
②経営者側の管理職かどうか
③原価計上するかしないか
勿論、職責毎の資格条件、管理内容、権限と責任が明文化されている必要がある.②については、組合があれば、組合側か経営者側か、組合のない会社もこの区別が必要である.
例えば、残業手当ては仕事をしただけでは付かない、労働法的には会社の指示があって成立する.では残業を指示したり、了解する人は誰かと言う事になる.従って、職責には経営者側の管理職であるどうかの区別が労働法の面でも必要になる.
残業制度については裁量労働制の検討もある.自主的活動の出来る資格付与者(但し残業手当て対象者)に対し、見なし残業手当(ex30時間相当)を支給し、作業を自分の裁量で行う(残業手当なし)制度である.
自分で裁量できない仕事が発生した場合はこの制度は適用されない.営業、調査・研究、ソフト開発、など裁量制にする場合が多い.原価計上については原価作業時間を計上する.この制度には無駄な残業や生産性の悪さによる残業の抑制も意図されている.
この体系で毎年,ルールにしたがって、年間の業績,能力に応じて,昇給,昇格が行われる.又,必要に応じて,本給,資格給,職責給の設定変更も行われる.勿論、昇給、昇格モデルによって、社員も将来の給与が、会社も将来の人件費予測が可能になる.
賞与は半期毎の業績で原資を決定(営業利益の%).総原資の決定は経営者の決断とし,個人への配分は成果主義にもとづくルールに任せる法が良い.
ルールはまず,資格グループ毎の基準給合計比率で原資を按分し,そのグループ内の順位でグループ原資を個人に配分する,等ルールを作ることが大事である.恣意的な配分をやると,個人に対しても,過去の支給実績についても,説明が出来なくなる.
次ぎに、賞与,資格,職責を決める評価の問題である.
何らかの評価方法を取るにしても、社員の顔が見えるか見えないかによって相対的評価の難しさがある.同一世代の人数も評価に影響を与える.又異質な仕事間の相対評価の問題もある.大企業ほど顔の見えない社員同士の相対評価が問題になる.
配分目的で無理に評価の数値化をすれば、悪影響を生む.数値・非数値の目標設定と取り組み状況、達成度で評価するにしても、目標設定の公平性が難しい.個人契約の米国流(絶対評価)にはない大きな問題である.現実は、評価システムをとりつつ、最後は管理職による調整機能が必要になる.
退職金制度のあり方も大きなテーマである.本給リンクをはずし、.ポイント制にする議論もある.ベースアップと退職金を分離し、それぞれ独立して自由に検討する狙いがある.賃金の後払いとの解釈のもと、賞与で払う考えもある.
さらに言えば、職種によっては、年棒制をとる企業も現われている.同一企業の中で、工場や営業で制度を複数持つ企業もある.
以上、人事制度の根幹に付いて述べたが、業績向上や専門家集団の形成を促進するシンプルな人事制度が、今求められていると思う.
尚、新制度への移行には、細心の注意が必要となる.特に移行に伴う不利益を出してはならない.新制度に個人を当てはめた時、給与額に不利益が出る事は予想されるが、何年間かの経過措置(補正支給)で対応する事になる.
総じて、人事制度は会社と社員の約束であり、新制度に移行するにしても、長期的視点で対応する事が寛容である.不具合や不透明制を放置する事は会社と社員との信頼感を弱めて行く.人事制度はまさに経営の基礎であり戦略なのである.
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